~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No50 バブル・パーティを繰り返すホスト国・アメリカ

2006年06月16日 | グローバル経済
●6/14 ロイターより抜粋・・・5月の米消費者物価指数は、総合指数が前月比0.4%上昇、振れの大きい食品とエネルギーを除くコア指数は同0.3%上昇。予想を上回った。今回の結果を受けて、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ実施の公算が高まっている。

コア指数はこの半年で、年率2.9%のペースで上昇。過去3カ月では同3.8%のペースまで加速し、10年超ぶりの伸び。

労働省では、コア指数の単月上昇分の半分以上が住宅関連コストの上昇による、としている。エネルギー価格の上昇を背景に、総合指数の伸びは前年比ベースで前年9月以来最大となった。



●同日 ロイターより・・・ブッシュ米大統領は14日、米連邦準備理事会(FRB)はインフレの兆候を注視している、と述べた。
大統領は記者会見で「FRBはインフレの兆候を非常に注意深くみている。FRBはホワイトハウスとは独立して決定を行うだろう」と語った。


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原油や貴金属など商品市場のバブル的上昇に依るところが大きい「米国のインフレ懸念」が世界的に注目されている一方、住宅バブル崩壊に代表される「米国景気減速」も現実化しつつあるようです。

報道はなぜかダイレクトな表現をしませんが、この2つが同時進行すると最悪な“インフレ不況(スタグフレーション)”ということになりかねません。

インフレを退治するために、政策金利を上げ通貨量を減らすという伝統的な対処方法を取るわけですが、本来的には景気が過熱しすぎた場合(需要>供給)の一時的な調節弁程度に、できればとどめておきたいものです。

しかしFRB前体制(グリーンスパン議長)の時に、ITバブル崩壊の火消しなどの理由で、かつてない超低金利まで一気に落とした結果、ブッシュ大減税とともに米国全体の新たなバブル消費が発生し、その効果は約2年間でMAXまで到達しました。その副作用にて、日本やBRICsなど輸出国を中心に、世界が米国消費バブルの恩恵を受けました。

そして今度は過熱しすぎた消費バブルの収拾を図るため、FRBは躊躇なく一直線に政策金利を引き上げてきました。

金利を引き上げ続ける結果、当然ですが消費主導による景気は後退に向かいます。これまたバブルであった株価も押し下げることになります。しかし中央銀行にできる金融政策は限りがあり、インフレ退治か、景気や株価の維持か、どちらかを優先させる究極の二者択一をしなければならないところに来てしまったわけです。どっちつかずのままスタグフレーションのような対処不能な状態になってしまう前に、手を打とうということでしょう。

新体制FRBの答えはここに来て明快になってきています。すなわち、住宅バブルや世界的金融投資バブル、過剰消費などのお祭りパーティの方をここで一旦お終いにしましょうというメッセージです。

パーティを終わりにする手段として、とにかくバブルがちゃんとしぼむまで(=インフレ懸念が無くなるまで)容赦なく利上げするという事だろうと思います。

それは同時に、2年以上その恩恵を享受してきた世界経済や世界投資家に対しても、今回の大サービス・パーティは終了するのでよろしく了解してください、と宣言したことを意味します。

米国民が過剰消費をやめ輸入品を買わなくなれば、国際問題の経常赤字の数字もいったん縮小に向かうというオマケが付いてきます。


問題は、夏~秋にインフレの心配がまったく無くなるレベルまで引き締めて景気が減速した後どうするか、ということですが、不人気ブッシュ政権が迎える中間選挙(11月)が近づく頃、金利引下げと新たな減税プランをちらつかせて対国民への不利を一気に挽回しようという意図がなんとなく読み取れる気がします。


そう考えると、上のブッシュ記者会見でのロイター報道のコメントは、(少なくとも夏までの)景気減速につながる利上げは政権と関係なくFRBがやっていると印象づけ、実際には国民に短期的デメリットを与えておいて、選挙シーズンに入るころ国民へ救いの手を差し伸べる思惑なのでは?と穿った見方もできます。

米国に限らずまんじゅう戦術は選挙の常套手段ですが、果たして米政権の思い描いたシナリオ通り成果を上げるのでしょうか。

ひとつのカギは米国政財界の人事です。
独立性を持った中央連銀といっても、そのトップを指名したのは他ならぬ大統領ですから、政権とあうんの呼吸であってもおかしくありません。このほど新しく指名した財務長官はウォール街のドンであり、大統領=ウォール街=FRBのトライアングルを持ってすれば、国民経済ひいては世界経済の流れを決定づけることも不可能ではありません。

政策金利だけでなく、現在の米国に有利に働くようなドル通貨政策も、国民や世界に対する有効なカードとして機能させることができます。

その目的は選挙対策のみならず、EUの米国離れ・中東オイル諸国のドル離れ等の揺さぶりによる世界の対抗パワーに対して、あくまで今後も世界経済をコントロールしていこうとする米政権の姿が浮かび上がります。

昨今の世界同時株安の局面でも、世界マーケット中が米国要人の毎日の発言や金融政策に一喜一憂しながら米国連れ安・連れ高を繰り返している指標を見るにつけ、つくづくアメリカン・グローバルスタンダードに染まってしまった世界の現実を思い知らされています。


そしてこれらを踏まえて考えると、今年の秋頃から、また新たなスタイルの米国発バブル・パーティのプロジェクトが始動しそうな予感もします・・・まるでこれまで何度も繰り返してきたように。 果たしてそうなるのかどうか、注意深く観察していきたいと思います。