~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No48 “世界相場一斉急落”の一週間 その森の奥は・・?

2006年05月18日 | グローバル経済
5/17 ロイターより抜粋・・・<金融市場が急転換、売りが売り呼び、手じまい活発化> 世界的に商品・株式の大幅な下落やドルの買い戻しを引き起こした投機筋の手じまいが一巡しつつある。市場では調整前の流れが戻る、との見方が優勢だが、今後の明確なトレンドを判断する材料はそろっていない。 


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一週間前の5/11に米国株が急落しはじめてから、世界同時の株急落そして株価と逆に動くはずの商品市場(石油・金・銀など)までもが一斉下落と、色々な意味で興味深く、どのニュースより注目したのがここ一週間の金融マーケットの動きでした。

あくまでマクロ的な流れを追っていくのがこのブログの主旨ですので、短期的に今後相場がどう動くのか?などの予測ではなく、そのような動きに世界経済の大きな流れを見るヒントが隠されていないか・・という視点で考えてみたいと思います。


まずこの一週間の動き(世界資産同時下落)に至るまでの背景を見つめてみます。

一ヶ月少し前、No45(4/13)で“金利引上げ”が資産価格全般の下落を招く恐れありと書いた頃、折りしも米景気減速の指標が次々と出ている中で、G7・IMF会合による貿易不均衡問題(米国赤字)への強い懸念から“ドル下落リスク”が示されました。

米景気減速とエネルギー高による“悪いインフレ懸念”がグローバル世界にショックを与えるとNo46(4/23)で書いた直後から、案の定ジェットコースターのようなドル下落が始まりました。

インフレ懸念 ⇔ 金利引上げ ⇔ エネルギー高 ⇔ 米景気減速 ⇔ ドル下落 

これらの要素が連鎖しつつある状況で、株安のマグマはたまっていきました。むしろ、これまで6年ぶりの高値圏にあった米国株価が下落しなかったのは不思議と言うべきでしょう。

米国株下落はあっという間にグローバル世界へ波及していきます。

5/11~米国株続落 ⇒ 5/12~日本株・欧州株大幅続落 ⇒ 週明け5/15~各アジア市場続落 ⇒ 金・銀・石油など商品市場急落 ⇒ 5/18インド市場過去最大の下落(一日で▲7%)・・・

ロシアやブラジル含めたエマージング諸国の下落は先進国のそれより大きく、本日インドは歴史的な下げに見舞われています。これが進むとなると5/5ファイルNo47で書いた「BRICs危険」も具現化してしまいそうです。

まるで米国発の伝染病のように、世界中のマーケットから資金が逃げていったここ一週間。特に、株式と逆の動きをしてインフレに強いといわれる商品市場も全く無抵抗に連鎖下落していくのでは、資産の分散投資も意味がありません。

これら今回の金融市場混乱は、米国対世界の貿易不均衡問題やFRBバーナンキ新議長のまだ慣れない市場対話そしてG7のマーケットへの強すぎるメッセージが投資家の誤解を呼ぶなどがキッカケとされています。

しかし数年間の低金利がもたらした資金過剰による世界的な「グローバル投機ブーム」自体が、混乱のマグマを溜めた真犯人であるといえるでしょう。 実体経済のファンダメンタルズを超えた急ピッチ過ぎる右肩上がりは、早かれ遅かれ、何かのキッカケで調整が図られるはずです。

ウォール街やオフショア地域の機関投資家(投機筋)の逃げ足の速さは折り紙つき。しかも、そのほとんどが全世界の各分野に分散投資しているわけですから、資金を引き揚げる
ときも世界一斉に手仕舞いしてしまいます。

今回の、世界資産一斉下落騒動?が象徴する最もショッキングなことは、もはや、一般投資家のレベルでは地域やタイプ別にいくら分散投資しても、実質的なリスク分散の効果が限りなく少なくなってきたという、にわかに信じ難い事実です。(唯一、空売りで利益を追求するヘッジファンドが注目されそう)

増して、本来のファンダメンタルズを無視した“投機”のパワーに真面目な長期投資家や実業を営む企業が世界中で振り回されることが日常的になってきました。・・日本の不動産バブル時もまったく同じ現象でしたが、今はグローバル・バブルが日常の常識的な出来事になっています。一年中世界がバブルにマヒしてしまっている状態だと感じます。

それだけでなく投機の行き過ぎによる通貨価値急変や原油高騰などは、世界中の一般消費者の生活にも大きな影響を及ぼし、大部分の小市民にとってはとてもいい迷惑です。

皮肉にも日本では、貯蓄から投資へ・・と国際分散型の投資信託への資金流入が史上最高の勢いとのこと。一般庶民も郵便局や銀行で虎の子をハイリスク投資へ回しています(ただし郵便局の投信販売は、今回の相場急変でさすがに細ってきたという最新報道あり)。

マーケットが今後どう動くかは予測できませんが、少なからず資産価値下落が企業や個人投資家に何らかの影響を与え、大げさと言われるかもしれませんが、世界マーケットや世界景気の大きな転換点になる可能性すら無視できないと感じています。