酒場で聞いた噂では、この洞窟を最初に突破した者が願いを叶えられるとあった。
最終的には、自分と共に歩く剣士もまた敵の一人になるかもしれない。
だが一時的であっても、連れがいるのは心強い事だ。
ハーレイは、自分がどうやって洞窟を通ってきたかを話し始めた。
剣士も口数は少なかったが、どんな怪物と戦ったかを語った。
やがて大きな穴の縁に辿り着いた。暗く深く、底は見えない。
剣士は、ハーレイをロープで下におろしてやろうと申し出た。
トーチもあるから貸すという。
ハーレイは、剣士を信用してロープの端を任せ、自分の身体を穴の下へおろしていった。
20メートルも下りた所で底に着いた。横穴が北の方に続いている。
上の方に呼びかけると、剣士もロープを岩に結びつけて下りてみると言ってきた。
二人そろって底に下りてから、剣士はロープを回収した。
唐突に、壁に本棚があった。革で綴じられた本があった。
ハーレイは、その本を調べた。
その本は、「血獣(ブラッドビースト)」という怪物について書かれていた。
棘の生えた皮は堅く、眼そっくりの突起物が顔を覆っている。
それは、唯一の弱点である本物の眼を隠す擬態である。
住みかは悪臭を放つ粘液の沼。
その瘴気は、人を気絶させるほど強烈である。
ブラッドビーストは沼から出てくる事はないが、
長い舌を延ばして犠牲者を絡め取り、沼に引きずりこんで食らうという……。