『猫魔温泉殺人事件』(by吉村達也)、読了。
図書館で偶然見かけて借りたノベルス。
1996年初出。
私が今まで読んだ吉村作品は、『ボクサー』『王様のトリック』『トリック狂殺人事件』といったところ。
本作は『トリック狂~』より後の作品である。
話の筋書きは、ミステリの、というより、往年の2時間サスペンスドラマの定番王道。
冷めた夫婦仲からの不倫旅行から勃発する殺人事件。
その一方で、なぜか温泉巡り大好きの刑事キャラ達が事件と接触する。
警察の捜査が行き詰まったところに、推理作家の名探偵が颯爽と謎を解く。
しかしながら、作中で描かれる謎たちは、むしろ硬派な本格推理。
「幕間」の章は事実上、「読者への挑戦」の代わりと言える。
葬式に真っ白なスーツで参列する男。
観光地で猫を抱いて歩く女。
絶対に見破られない究極の尾行方法。
殺人犯が長く抱えていた凄絶な動機。
ミステリ好きの読者なら、全てが明かされた時に膝を打つだろう。
あと、猫好きの読者なら、早めに色々と察する事が出来るかも。
ところで、この本、巻末に「取材旅ノート」というページがある。
舞台として挙げられた「野口英世記念館」や、「偕楽園の好文亭」など、旅行気分も楽しめるのは、お得な内容と言えよう。
それでは。また次回。