好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

星新一ショートショート再読。(その50)

2024-08-02 | 星新一ショートショート
『最後の地球人』
新潮文庫、番号50、『ボッコちゃん』収録。

本作が書かれた当時は、日本を含め、地球の人口が大幅に増えていた時代だった。

「人口爆発」というのは、20世紀後半によく使われるようになった語だ。
ちなみに筒井康隆氏による『48億の妄想』は1965年作である。
翻って現在の地球人口は、ざっくり言えば80億。2倍近い。
このスピードを踏まえれば、本作の書かれた背景を想像しやすいだろう。

ただ、作中では、地球人口は瞬く間に100億、200億と増していくのに対し、実際の未来にあたる私たちの世界では、そこまでの勢いでは増えてはいない。

というよりも、増えるのが困難になってきている。
人間の消費活動より前に、星の資源が間に合わなくなってきた。
地球外などへ移住するような技術もまだ作られていない。
科学が進めば確かに人口が増えるが、戦争や疫病でたやすく人は死んでしまう。
逆に、本作のような、言ってみれば人類の衰退は、ある意味では既に始まっているのかもしれない。

ともあれ、かくして、全50話をもって『ボッコちゃん』の世界は幕を閉じる。
一旦終焉を、終演を迎えた世界は、「光あれ」の言葉で再起動する。
人間と悪魔が騙し合ったり、見知らぬ宇宙人と出会ったりする地球の歴史が、繰り返されるのだ。

それでは。また次回。