ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)とグラナダ・ホームズを語る
グラナダ(NHK)版ホームズの鑑賞日記とホームズ役ジェレミー・ブレットに関する情報を発信していきます
 



今回も引き続き、NANAさんにジェレミーとの思い出を語っていただきます。
ジェレミー・ブレットとエドワード・ハードウィックの舞台「シャーロック・ホームズの秘密」の観劇の話や
実際にジェレミーに会った時のお話など、今までになかった「生の」ジェレミー情報満載です♪

貴重な当時の写真も一緒に公開してくださっていますので、それもお楽しみ下さい。


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土曜日は昼の公演も観て、夜までの間は手紙を書いたりボーっとしたり、なんだか落ち着きませんでした。そして夜の部を観終わり、私たちは再び楽屋口へ。
ホントに私たちのことを覚えていてくれるかどうか気を揉みましたが、
受付の人に「約束してあります」と言ったら、彼のサイン待ちをしている人たちをすっとばして、私たちを先に中へ入れてくれました。

舞台がはねてまだ少ししか時間が経っていなかったので、舞台裏は前回より人がたくさんいて、なんと E.Hardwicke さんにも、ちょこっとですがお目にかかることができました。
私は思わず "Dr.Watson!!" と呼びかけてしまいました。
彼は日本へ来たことがあると仰ってましたよ。「いい思い出だなぁ…」と遠い目をして話して下さいました。ジェレミーにばかり目が行っていましたが、
彼もとてもステキな紳士でした。

そして再びJBの楽屋へ。
ちゃんと覚えていてくれました。でもその日は何を話したかあまり覚えていません…。
とにかく言いたいことの半分も言えなかったことだけは確かですが。
「写真のかわりにこれで勘弁してくれないかなぁ」といたずらっぽく笑いながら、「遠くから来てくれてありがとう、そして僕のことを気遣ってくれ、楽しんでくれて本当にありがとう」というようなメッセージ入りのポートレイトをくれました。



写真の代わりのメッセージ



それから、クリスマスにはロンドンで公演をやっていると彼が言ったので、
「是非また観に来ます!」って言ったら、
JBは苦笑いで"Don't waste your money!!"とまるでお父さんが娘を諭すように切り返してきました。
私は「あなたの舞台を観るために来るのだから、無駄遣いなんかじゃありませんっっ!」とやり返しましたよ。

それから、手紙はエージェントよりも劇場宛てにくれたほうがすぐ読めるよ、とのことでした。そしてそろそろお別れかな…というくらいの時間がたち、
私たちが立ち上がってJBもドアの方へ私たちを送り出そうとした時、
私は「今しかない」と振り返って背伸びをして、彼の右のほっぺにキスしちゃいました。これでまた1つ目標達成!

その晩も当然眠れなくて、ああ言えばよかった、こうすればよかったと後悔しまくり、でもジェレミーに会えた幸せに浸りながらに眠りについたのでした。

翌日はロンドンへ戻り、最後のショッピングなど済ませ、荷物をまとめてあとは寝るだけ。
でも気持ちはギルフォードに飛んでいました。
…それにしても、たった2週間の旅でこんな幸運に恵まれるなんて、
自分は何て幸せ者だったんでしょうか。
帰りの飛行機の中では、遠ざかっていくイングランドの景色を眼下に、あまりの名残惜しさに涙が出ました。

さて3度目のイギリスから戻った私は、早速また手紙を書き始めました。
本人に直接上手に話せない分、最初からとにかく手紙に力を入れてました。
それから、彼のお誕生日に花束を贈りたい、と前から思っていたので、
彼の居場所(ロンドンのWyndham's Theatre)がわかっている今ならそれも叶えられると、
都心の大きなホテルへ行き、そこの花屋さんでJBのお誕生日に劇場に届くように、
白い薔薇のアレンジメントを注文しました。

そして休日には、少しでも彼の情報や舞台の批評を知りたくて、洋書屋さんのハシゴです。
今はインターネットがあるので歩き回らなくてもかなりのことがわかりますが、
当時は海外の新聞や雑誌も1週間遅れ、ひと月遅れなんてザラでしたからね…。
それと、NHKにもずいぶん電話しましたっけ。
「再放送してください!」「次のシリーズはいつからですかっ!」…電話の向こうでお兄さんが困っているのがわかりましたが、とにかく見たかったんですもの。

そうこうするうちに12月がやってきました。
なかなか飛行機のチケットが取れずイライラしましたが、結局なんとかなり、
今度は劇場のチケットも2回分だけ、高い手数料を払って日本から予約して行きました(後になって、そんな必要はなかったことがわかるのですが)。
ホテルも劇場近くに目星をつけておいて、1988年12月22日~'89年1月8日の予定で、
4度目のイギリスへ向かいました。

Wyindham's Theatre では合計6回観劇しました。
小ぢんまりしてはいるものの風格がうかがわれ、古き良き時代の劇場って感じがしました。

ギルフォードでは予定外の観劇だったので、また観客も家族連れなどが多くそれほど格式ばった感じがなかったのでカジュアルな服装で通しましたが、
ここは有名な劇場が軒を連ねるロンドン、マチネーはともかく、夜の公演にはきちんと淑女らしい格好で行かなければと思い、ワンピースやら靴やらバッグやら、現地調達しました。

4ヶ月ぶりに見るジェレミーは少しやせたように感じました。
お腹はギルフォードの時と同じくらい立派でしたが。
それでも、最初から最後まで全身でエネルギッシュに演じ続ける彼には圧倒されました。
汗が飛んできそうな熱演振りでした。

ギルフォードと違ってロンドンでは、劇場の中で日本語のおしゃべりもあちこちから聞こえましたよ。その中に、このブログを知っている方もいらっしゃるんじゃないかと思っているのですが。どうなんでしょうか…?

「日本から来られたんですか?」と若い女性(といっても自分と同じくらいだったと思いますが)が声をかけて下さったので、私は久し振りに「安心して」ジェレミーやホームズの事をおしゃべりしました。
1人でいる時に声をかけてくるヒトには過去何度か危ない目に合わされたことがあったので。

舞台を観たあとその女性と一緒に楽屋口へ行ってみたら、
JBは割と簡単に外へ出てきてくれて、まだ汗だくでおしろいが取れかかった顔のまま、
たくさんのファンにサインをしてあげていました。
人気者は大変です。でも人気者の全てが彼のようにファンと接してくれるとは限りませんものね。やっぱりジェレミーってすごいなぁ。
その時は、同行した女性もサインをもらって幸せそうでした。

私はというと、ぜいたくな話なんですが「サインや写真はもういい、ただただ彼の近くにいたい」という気持ちが強くて(実際、4度目のイギリスへはカメラを持って行きませんでした)、少し離れたところから、ファンにサービスするジェレミーを眺めているだけで幸せでした。

大晦日の晩にも劇場へ行き、そこで3度目のジェレミーさんと御対面、を果たしました。
彼は白いコットンパンツをはいて、左耳に金色のピアスを着けてました。
忘れてしまいましたが、多分例の黒いカシミアセーターも着ていたのでしょう。
でもその日は忙しかったのか、あまりお話しすることができず(私の英会話力のなさもあるんですが)、せっかく会えたのにちょっと不完全燃焼でした。

年が開けて1月3日、今度は劇場へ直接チケットを買いに行きました。
そしたらなんと、2日後と3日後の最前列ど真ん中の席が取れてしまいました。
帰国前夜の公演も、前から6列目のほぼ真ん中。
なぁーんだ、です。現地の人はそんなに焦って先の予約をしたりしないのですね。
だって公演自体は毎回満員でしたもの。
まあお芝居は、必ずしも前の方がいい、とも言い切れませんし。
お金持ちは上の方のボックス席などでゆったり観劇するのでしょう。
でも私にとっては、これ以上考えられない良いお席です。

ロンドンはクリスマス明けのバーゲン・シーズンでしたので、
昼間はお買い物を兼ねて、もう何度も足を運んだ場所も含めてあちこちお散歩しました。
私の一番のお気に入りは、テムズ川沿いのナショナル・シアター界隈。
劇場自体もモダンなのに気品があってステキですし(無料でミニ・コンサートなど聞けたりして)、古本などの小さなマーケットが催されていたりしていました。
寒かったけれど、自分のいるこの街に今ジェレミーもいるんだと思えば心も温まりました。
『My Fair Lady』でJB演じるフレディが、イライザを想って歌っていたとおりの気持ちでした。

相変わらず脚本を読んでいなかったので、台詞がよくわからないことは変わらなかったのですが、何回か観ているうちに、その日によって話し方や動きが微妙に違う事はわかりました。
当時は彼の躁鬱病のことは知りませんでしたので、これがジェレミーの病による「アドリブ」だとは気付かず、「舞台って生き物だからなー」などとのんきに観ていましたが。

そして!
いよいよ「最前列」の夜です。
すごい迫力でした。手を伸ばせば届くようなところで、彼が熱演しているのです。
もう周りのお客さんなど目にも入らず、
JBが自分だけのために演じてくれているかのような幻想に浸りました。
初めはあまりに近いのでたじろいでしまいましたが、慣れてくると、台詞も細かいところまでよく聞こえるし、微妙な表情の変化も読み取れて大変楽しめました。
ただ、ずっと舞台を見上げ続けたせいで首が痛くなりましたが。

終演後は、もう周りがどうであろうとお構いなく、手を高々と上げてスタンディング・オベーションで彼の熱演を称えました。
そして、カーテンコールに応えて出てきたジェレミーが舞台から引き際にしてくれた投げキッスは、絶対自分に向けられたものに違いない、と信じて止まないのでした(こうなるとちょっとアブナイですね)。
翌日の「最前列」は、もう少しリラックスして観ることができました。

でもこれで残るチケットはあと1枚…。
もうすぐ帰らなければならない。
最後の晩は絶対にJBに会いに行こうと決めました。


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今回読んでいて、本当に羨ましかったです。
NANAさん、ジェレミーにちゅーしたんですねー!!
それは余りにも素敵すぎるエピソードです

これを読んで、皆さん思われると思います。
「で、その時のジェレミーの様子は、どうだったの!?」と。
・・・と言うわけで、NANAさんにお尋ねしたところ・・

「ジェレミーにキスした時は、
私が急に振り返ったので彼は「?」って感じの顔をしてましたが、
私が背伸びしてキスするとにっこり笑って、
お返し?に私のほっぺたにもキスしてくれましたよ。
幸せでした…。」

ということでした。
きゃー、それますます羨ましいですから!!!!
心の底から羨ましいですから!!!!(笑)

「Don't waste your money!」と言ったジェレミー、すごく茶目っ気ありますね。
ファンから見たら、あなたを見に来てるんだからって話なんですから♪

NHKに何度も電話をされたんですね。
NANAさんのお話を聞いていて、あのアナログな時代を思い出しました。
十数年前までは、ネットもなかったし、海外俳優の情報を入手するなんて、ハリウッド俳優でもない限り、難しかったですもんね。
ジェレミーの情報なんて、本当に入ってきませんでしたから、些細な一つの情報がどんなに嬉しかったことか。
本「The TV Sherlock Holmes」なんて、注文して半年経っても来ないってありましたもの(^^;

ロンドン公演の時は、日本からかなりのお客さんが行っていたみたいですよね。
もしこのブログを読んでいる方で、観劇したという方は、ご連絡頂ければ嬉しいです♪

>彼は白いコットンパンツをはいて、左耳に金色のピアスを着けてました

やはり、そうなのですね!私生活ではやはりピアスを付けてたですね(笑)
時々、方耳だけ金のピアスをしていますよね。
あ、もちろん舞台に立っているときは、ピアスは着けていないそうですよ(NANAさんに聞きました!)

ジェレミーが投げキッス、しかも最前列でそれを受け止めれるなんて、最高じゃないですかー!!
あー、きっと舞台慣れしているジェレミーのことだから、すごくスマートに優しく投げキスをしたことでしょうね。
うわー、本当に羨ましいです!!!

ちなみに、ハードウィックさんは、日本に来たことがあるんですね。
日本のどこをどう回ったんでしょう、興味ありますね!
それにしてもハードウィックさんとも直にお話されてるなんてすごいです。

今回は、ジェレミー直筆のカードを見れたことも、幸せでした!
サイン以外で、ジェレミーの文字を見たことは、数回しかないんですが、こんな文字でした!
サインのようにさらさらと書いているような、この書き方なんですよね。

いやーしかし、私たちはジェレミーの文字といえば、サインをネットオークションとかで買うことがやっとですが、
NANAさんはジェレミー本人に会った上で、こういう風にサインやメッセージをいただいてたんですから、本当に凄いことですね。


今回は興奮するような内容ばかりで、もうテンション上がりっぱなしで読ませて頂きました。
本当にただ観劇されていただけではなく、こんなにジェレミーと素敵な思い出を実際に作ってらっしゃったんですね(お花も贈られたなんてロマンチックです)
そしてNANAさんの文章が上手だからでしょうか、読んでいる私たちもその場にいたかのように臨場感あふれています。

次が最終の更新になります。
24日のクリスマスにアップ予定ですので、楽しみにお待ち下さい♪







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コメント
 
 
 
素敵なジェレミー (Motoko)
2006-12-24 22:11:41
NANAさん、
ジェレミーとの素敵な思い出話をありがとう。
NANAさんの文章を読んでいると、臨場感があって私自身がジェレミーに会ったいるような気がしました。
ジェレミーの温かい人柄やユーモアセンスなども、文章をとおして伝わってきました。
"Don't waste your money!!"って言ったときは、若い日本の女の子が、わざわざ極東から自分の舞台を観にきてくれるのは嬉しいけれど、たくさんのお金をつかわせてしまうことを心配したんでしょうね。
ジェレミーのお腹が立派だったというお話には、笑ってしまいました。後半のホームズを演じている時のジェレミーは、薬の副作用でかなり太っていましたし、お腹の大きさも服の上からでもわかる時がありましたね。でも、ジェレミーはどんな時でも素敵ですよね。
 
 
 
コメントありがとうございます (NANA)
2006-12-25 07:12:31
Motokoさま:

ジェレミーの思い出、楽しんでいただけたようで私も嬉しいです。

そうかぁ、やっぱり彼にとって日本は相当遠いところだったのかもしれませんね。
そんなところから年に2回もやってきた私を心配してくれたのなら、ジェレミーにお礼を言わねばなりませんね。

自分としては4度目の渡英でもあり、ましてや彼に会えるのなら、どんなに遠くても、お金がかかっても、そんなことは気にならなかったのですが(でも確かに今思うとかなりの出費でしたが)。

お腹はほんとに立派でした。
初めてお会いした時から。
顔や手足はそれほどでもなかったんですけど。
でも黒い服で舞台に立っている時はあまりわかりませんでしたけど…。

今で言う「メタボリック・シンドローム」を心配しなければならない体型でしたね。
白人男性には結構多い体型ですけどね。
彼の場合は心臓が悪いってわかっていたのですから、本当に何とかならなかったのかと今でも思います。
タバコも結局やめられなかったようですし。
主治医出て来い~!!!って叫びたいです。

ところでMotokoさんはどんなクリスマス・イブを過ごされましたか?
(宗教上問題があればお詫びします。スルーして下さいませ)
ウチでは毎年なぜかボルシチとピロシキと、ケーキも何かしら作って食べるのですが(相方が元イタリアンのコックさんで料理がうまいので、私が出る膜はほとんどないんですけど)、
今年は初めてジェレミーにもプレゼントを用意して、写真立てのそばに置いてあげました。
Fahrenheitのミニボトルです。
赤とグリーンのリボンをかけて…。
喜んでくれたかな。
今日は彼のかわりに封を開けて、香りを楽しむつもりです。

りえさまが仰っていましたが、17年前(!!!)と香りが変わってないといいな。

あ、それとクリスマスと言えば…の「The Blue Carbuncle」も見ました。初めて放送されてから、もう何回見ただろうか…。
寝起きのジェレミーがとってもカワイイのです。
そして犯人を逃がしてやるところは迫力ありますよね。
まだあの頃は、激しい動きや台詞回しができてたんですね…。
最後の方のお話では、動きも台詞も少なくなってしまいましたから…。

まだ、ジェレミーの映像に触れるのは相当辛いのですが、昨夜は楽しく見ることができました。

私の「思い出」もあと1回でおしまいです。
最後まで楽しく読んでいただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

そしてMotokoさまにとって2007年が平和で明るい年になることをお祈りしています。

NANA



 
 
 
本当に素敵な思い出です♪ (りえ)
2006-12-30 00:08:46
>Motokoさんへ

やはりMotokoさんもジェレミーに会っている様な気分になれましたか♪
NANAさんの文章が魅力的というのが、一番の理由ですよね。
ジェレミーのお腹が立派だったとか、そういう表現が(私もこれを読んだときは、くすっとなりました)
本当にジェレミーをリアルに感じさせるんですよね。


>NANAさんへ

素敵なクリスマスを過ごされたようですね♪
ジェレミーの写真も用意されたとか!
きっとジェレミーも喜んだと思います。
それにしても、元コックさんのパートナーがいらっしゃるとはうらやましいです!
うちなんて、ケーキも買ってきましたから(私、料理は苦手です)

「青い紅玉」では、本当にジェレミーの前髪ぱらり寝起き姿がかわいいです!
私好きなんです、前髪おろしたジェレミーって。
とってもかわいくて、セクシーで素敵です♪♪
 
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