ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)とグラナダ・ホームズを語る
グラナダ(NHK)版ホームズの鑑賞日記とホームズ役ジェレミー・ブレットに関する情報を発信していきます
 



今日からNANAさんにジェレミーとの思い出を語っていただきます。
ジェレミー・ブレットとエドワード・ハードウィックの舞台「シャーロック・ホームズの秘密」の観劇の話や
実際にジェレミーに会った時のお話など、今までになかった「生の」ジェレミー情報満載です♪

貴重な当時の写真も一緒に公開してくださっていますので、それも楽しんでくださいね。
では、NANAさんよろしくお願いします!


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りえさま、皆さまこんにちは。

『Dancing in the Moonlight』のコメント欄でちょっとした「騒ぎ」を起こしてしまったNANAです。そんなつもりはなかったのですが…。
この度は私のイギリスでの体験を記事に、というお言葉をりえさまから頂き、ありがたいと同時にちょっと緊張しています。

幸いその頃のことはわりと詳しく日記に記録があるので、大きな間違いはなく大切な思い出を綴っていけると思います。
皆さんに楽しんで頂けると良いのですが…。

本題に入る前に1つだけ。実はわたくし病気療養中なもので、パソコンを開けない日も結構あります。この記事を読んで、もしコメントを頂けても、すぐにはお返事できなかったり、短文でしかお返事できなかったり、あるいはお返事そのものができないこともあるかもしれません。申し訳ありませんが御了承下さいませ。

前置きはこのくらいにして、早速本題に入りましょう。

グラナダのホームズ・シリーズで、ホームズのみならずジェレミー・ブレット(以下JB)というイギリスの俳優のファンになった方は多いでしょう。私もその1人です。
もともと探偵小説は好きだったのですが、なぜかシャーロック・ホームズを読んだことはなく、NHKで「本国イギリス製」のホームズを放送するというので、楽しみにその放送を待ちました。

第1回目の放送が始まり…あのドキドキワクワクさせるようなテーマ曲が聞こえるとすぐに私は「これはきっと素晴らしいシリーズになるに違いない」と直感しました。
そして主人公らしき男性の横顔が画面に映った瞬間、私の心は「!!!!!」。
番組が始まると同時に、私の心はジェレミーに奪われてしまいました。

それからというもの、毎週土曜日が待ち遠しくて待ち遠しくてたまらなかったものです。
そして番組とJBへの想いはどんどんつのり「彼に手紙を書こう」と思い立ちました。
何度も何度も書き直して、彼のエージェント宛てに何通も手紙を出しました。
初めて出した手紙に返事("Thank you for your very kind letter"とメッセージの入った写真)が送られてきた時は嬉しくて嬉しくて、写真を抱いて寝ましたよ。



初めてのサイン入り写真




写真の裏側にはメッセージが


でもそのうち手紙を書くだけでは気がすまなくなり、
「本人に会って番組と彼への想いを伝えたい」と考えるまでになったのです。

シリーズが始まってから、4回渡英しましたが、彼に会えたのは3回目と4回目です。

最初の2回は、とにかく彼に関する情報を得ようと書店をハシゴしたり、
皆さんの多くが御存知の、ホームズゆかりの場所を訪ねて回りました。
ロンドンって東京と比べると狭いので、結構歩いていろんなとこへ行けちゃうんですよね。

また、最初の渡英では、David Burkeさんがナショナル・シアターで『Philistines』という作品に出ていました。脚本も読まずに観たので台詞の半分もわからず、内容も忘れてしまいましたが、本物のDr.Watsonを観ることができて嬉しかったです。

2度目の渡英では、グラナダTVのあるマンチェスターへ行きました。
フェンス越しにベイカー街が見えて思わず興奮。「撮影中はお静かに」なんていう看板も出ていて、雰囲気だけでもたっぷり味わえました。




一般公開前のベイカー街セット




セットの裏側



それから今度はやはりナショナル・シアターで、シェークスピアの『リア王』を上演していて(主演は確かアンソニー・ホプキンズ)、意地悪な長女の役でJBの元奥様Anna Massey さんが出演しておられました。
こちらは話の筋を大体知っていたので、「アンナさん、恐過ぎ~」などと心の中でつぶやきながら楽しむ事ができました。

この時はJBの母校であるEton Collegeや、ホームズ関係の資料があることで知られるMarylebone Libraryを訪ねることもできて、特にMarylebone Libraryでは司書(?)のキャサリン・クックさんが私の見たい物をみんな出して下さって、グラナダ・シリーズの脚本や、『Baker St. File』(ホームズのあらゆる特徴や癖など、原作を忠実に再現するために作られたファイル)など、貴重な資料を目にすることができました。

もうこの頃にはイギリスに夢中になっていて、帰ってくると同時に「次はいつ?」と計画を練ったりしていました。

そしていよいよ3度目のイギリス(1988年8月22日~9月5日)です。

この時は初めて、同じくジェレミーファンの女友達と2人で行きました。
期間も、それまでは3週間近くかけたゆっくりした旅でしたが、その時は友人の都合もあり、2週間と短いものでした。スケジュールも、スコットランドでネッシー見物(笑)、グラナダのスタジオツアー見学(その頃にはグラナダの人気番組のセットなどを見学できるツアーがあり、当然ホームズ・シリーズも目玉の1つとなっていました)、ストーンヘンジ見物といろいろ計画があり、私にとっては少し忙しいイギリスの旅でした。




グラナダTV見学ツアー入口




ツアーで訪れた局内のドレッシング・ルーム




221bの室内セット(復元だと思います)



ところがなんと!!!
信じられないことに、ジェレミーが『The Secret of Sherlock Holmes』という作品で
舞台に立っている、そしてもちろんホームズ役を演じている!
という衝撃的な情報が入ってきたのです。イギリスのTVガイド誌や、演劇のパンフレットに出ていたんです。

もう「ええ~っっ!?」としか言えませんでした。
しばらく、どうしていいのかわかりませんでした。
でもどうするも何も、これは行くしかない!ということで、
スケジュールの合間をぬって、ロンドンから南西へ電車で30~40分ほど下った、
Yvonne Arnaud Theatreのあるギルフォードという町へ向かったのです。
そこはイギリス南部の典型的な小都市で、ロンドンより更に緑が豊かな、比較的静かなところでした。ここでは全部で4回観劇することになります。

早速劇場へ。
おお~。ちゃんとポスターが貼ってある(当たり前ですが)。
ここにジェレミーがいる!
でもそんな思いにふけっている場合ではありません。
チケットを買いにボックス・オフィスへ急行しました。
そしてチケットを手に入れ、まずは初めての観劇です。



Yvonne Arnaud Theatreの入口で



…今までTVでしか見たことのなかった大好きなJBが、本当に目の前にいる(もちろんE.Hardwike さんも)。
夢を見ているようでした。
JBの台詞回しや身振りはTVで見るより更にハデハデで、ついボーっと彼のことだけ観ていると、彼の大きな声で夢から覚める、といった状態でした。
本当は脚本を読んでから見られると良かったのですが、あいにくまだ出版されていなかったようで、台詞の半分くらいしかわかりませんでした。
でも次から次へといろいろな事件のエピソードが盛り込まれていて、TVで聞いた台詞と重なっている部分も結構ありました。

そして舞台が終わり、カーテンコールに応えて出てきた彼の身のこなしのなんとステキだったこと!
胸に手を当てて観客に深々とお辞儀をしたかと思うと、フロックコートの裾をひらりと翻し、颯爽とステージを後にしたのでした。
もう気絶寸前のカッコよさでした。

その翌日も観に行き、前日と同じように彼の演技に酔いしれたのですが、
私の目的はただ観劇することじゃない。彼に会わなければ!

昼間の公演を観たあと、私と友人は意を決して楽屋口へ向かいました。
日本と違って警備員みたいな人もいなかったので、
受付窓口の男性に「ブレットさんに会いたいのです」と言いました。
でも当然「アポ無しではダメ」と1度は断られました。

しかしここは簡単に引き下がるわけには行きません。
「彼に会うために日本からやってきたのです」(厳密に言えばウソになるわけですが)と粘りました。それでもやっぱりダメ、と言われ、さすがにがっくり肩を落としていると、
そのおじさまは「…ちょっと待ってて」とどこかへ電話をかけ始めたのです。

極東の島国からやってきた女の子をかわいそうに思ったのか(当時26でしたがカジュアルな服しか持って行っていなかったので、コドモに見られたと思います)なんとJBの楽屋へ連絡を入れてくれたんです!
そしてとうとう窓口のおじさまは、私たちを彼のいる部屋へ案内してくれたのでした。

階段を少し上がって…このドアの向こうにジェレミーがいる!と思っただけで、本当に体が震えました。そしてドアが開き…。
そこには、バスローブ姿でメイクを落としたばかりのジェレミーがいました。
そしてまるで旧友に再会したかのような温かい笑顔で大きな椅子に座り、私たちを迎えてくれたのです。

彼はさすがにスターらしく、こちらが頼む前に劇場のパンフレットに私たちの名前入りでサインをしてくれて、貫禄たっぷりのオジサマでした。
思ったより太めでした(特にお腹)。
部屋はとても暖かくて、鏡の前のテーブルには化粧品やらぬいぐるみやらいろんなものが並べてあって、部屋の片隅には休息用(?)の簡易ベッドが置いてありました。




パンフレットにサインしてくれました



とりあえず"How do you do?"と型どおりの挨拶をしてから、
私はグラナダ・シリーズをどんなに素晴らしいと思っているか、彼をどんなに大切に想っているかを必死に伝えました。

少し落ち着いたところで、日本にもあなたのファンがたくさんいて番組も大好評なのですよ、と言ったら、彼はそれをよく知っていて、「毎日ファンレターがたくさん来てびっくりしているし、とても嬉しいよ!」と言ってくれました。

写真を撮ってもいいですか?と聞いたらやんわり断られましたが(今思えば、汗だくのバスローブ姿なんて撮られたくないですよね。それに肖像権の問題などもあったのかも)、
「今日(9月1日)は夜もあるから忙しいんだけど、今度の土曜日の夜に来てくれたら、もう少しゆっくり話ができるよ」と約束してくれたので、ものすごく嬉しかったです。
そして、うまく話せないと困ると思いあらかじめ書いておいた手紙を彼に渡し、
最後に握手をして(大きくて温かい手でした)その日は楽屋をあとにしました。




この奥にジェレミーが…



宿に帰ってからも夢を見ているようで、なかなか眠れませんでした。そして次の土曜日に向けて、どんな話をしよう、どんな手紙を書こう、と考えを巡らせているうちに眠ってしまいました。


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・・・もう私は、これを読んで感無量でした。
ジェレミーに実際に会えたらと!と何度も何度も夢に見ていたので、
その思いがこのNANAさんの文章と重なって、自分がNANAさんになった気分で、のめりこんで読んでしまいました。
疑似体験でも、ジェレミーと会った気にさせて頂いて、NANAさん有難うございます!

>胸に手を当てて観客に深々とお辞儀をしたかと思うと、フロックコートの裾をひらりと翻し、颯爽とステージを後にしたのでした。
もう気絶寸前のカッコよさでした。

これを読んだ時、ジェレミーの様子が目に浮かびました。
ジェレミー・ホームズがする、フロック・コートを翻すポーズ、本当に最高にかっこいいですよね!
それを実際にされては、本当に気絶寸前だったと思います
読んでいる私もドキドキしてしまいました!

バスローブ姿といえば、いわば「素」のジェレミーに近いわけですよね。
きゃー、素敵!!きっと舞台のホームズの顔を落として、ジェレミーになっていたんでしょうね。
そんなプライベートに迫れて、NANAさん羨ましいですー!!

>最後に握手をして(大きくて温かい手でした)

こういった表現が、ますますジェレミーをリアルにさせてくれます!
私の想像していたジェレミーが体温を持って、より親近感が湧きます。

それにしてもNANAさん、凄すぎます。
ジェレミーのみならず、デビット・バークにジェレミーの前妻アンナ・マッシー、そしてエドワード・ハードウィックまでも!!
ブラウン管を通してとは全然違う、それぞれの俳優の空気感があったんでしょうね。
それにしても、アンナ・マッシーさん怖い役が多いですねー(笑)

しかもイートンにも行かれてたんですね。
イートンも憧れの地です。一度は行ってみたい!
いまだにジェレミーが着ていた頃と同じ制服で男子学生がうろうろしているらしいですよね。
ああー、若かりしジェレミーを妄想しながら、イートンを彷徨ってみたいい(笑)

今回、Marylebone Libraryは初めて知りました。ホームズ関係の図書館なんですね。
ちなみに「The Baker Street File」については、今は一般販売もされています。

また写真もジェレミーのサイン入りあり、劇場のポスターが写っているものもあり、ベーカー街のセットあり(しかも一般公開前!)、ともう貴重な写真のオンパレードです!
本当に素敵な写真を拝見できて、嬉しかったです。


NANAさんの丁寧な記述のおかげで、これを読んだ方は、ジェレミーをより身近に感じてもらえたんじゃないかと思います。
私にいたっては、自分が会った様な錯覚さえ(なんて素敵な疑似体験!)までさせて頂きました。
本当に素敵なお話を有難うございました♪
この続きは、21日(木)に公開予定ですので、楽しみにお待ちくださいませ。

今回は、画像いっぱいでページが重いと思います。すいません。
どうしても今回の文章と一緒にご紹介したかったので、ご了承くださいませ。


では、また21日に♪







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コメント
 
 
 
すごいっすごすぎます! (ゆり)
2006-12-18 22:02:27

うらやましいと同時に
おもいっきり感情移入です!
いいなあ、わたしもそんな経験したかった・・

それにしても、本人自身が
次のアポとってくれちゃうなんて
なんてやさしいでしょう。
もう、ますます、好きになちゃいますね。

今日一日、ドジやってへこんでましたが
一日の終わりにジェレミーサマの素敵な話がきけて
ほっとしました。
あ~それにしてもなんてチャーミングなんだ!!
 
 
 
コメントありがとうございます (NANA)
2006-12-20 08:49:09
ゆりさま:

最初のコメントを頂き、どうもありがとうございました。

自分の文章がネットにのるなんて初めてですし、
ましてやそれにコメントを下さる方がいらっしゃるなんて、嬉しさ、恥ずかしさ、戸惑いがいっぺんに来ています。

ジェレミーが「今度の土曜なら…」と言ってくれた時は、ただただ嬉しいだけでしたが、
今になって落ち着いて考えてみると、確かにすごいことですよね。
彼は、他にもたくさんの人に会って話したり、サインしてあげたりしなければならないのに。

そして疲れていたに違いないのに。

でも彼は、そうやっていろんな人が自分と会って喜んでくれる事を、励みと言うか、喜びとして、撮影や舞台にのぞんでいたような気もします。

だけどやっぱり、疲れた時は休まないと…。

何度も会いに行っておいてこんなこと言うのも勝手ですが、今思うと、小さいかもしれないけれど彼の疲労の一部分になってしまったのかも…という、申し訳ないような気もしています。

この記事を読んで、ゆりさまが元気になっていただけたのなら、とても嬉しいです。

残りの2回も楽しく読んでいただけますように。

NANA

 
 
 
いやー、本当に素敵な思い出ですね (りえ)
2006-12-24 00:38:34
>ゆりさんへ

コメントありがとうございます♪

これを読んでいると、素顔のジェレミーに会えたみたいで、とっても嬉しいのです。
舞台の観客としてだけではなく、楽屋まで行って「NANAさん」という一個人としてジェレミーに認識してもらえたんですから
本当にこれはすごいことですよね。

いままで、ジェレミーのことを紹介するのに、英語のものを訳してばかりでしたが、
日本語で語って頂ける方のレポートを読めるなんて、幸せですねー♪

次で最後になりますが、楽しみに待っていてくださいねー


>NANAさんへ

何度も会ったことで、彼の疲労の一部になったかも・・・、なんてそんなことはないと思います!
ジェレミーは、ファンと触れ合える時間を楽しく思っていたと思っています。
TVより観客の様子が分かるから、舞台が好き、と言っていたので、
観客やファンの反応を知ることってとっても楽しい時間だったと思います。
そういう彼を真剣に応援するファンの姿って、ジェレミーにとっても勇気づけられる存在だと思いますし

そういえば、私もグラナダ・スタジオって行ったことあります!
私が行ったころは(1996年)べーカー街の野外セットは屋内に再建築されていました。
だから見れたのは、本物じゃないんですよね。
でも屋内のホームズの居間のセットは、私が行った頃も再現してありましたよ!
私、あのセットの中でビクトリアンな衣装来て、写真とりました(笑)
いまでは、このスタジオももうやっていないみたいですね。残念です。

今回、本当に貴重な写真や日記を後悔してくださって、ありがとうございました。
明日で、連載は最後ですねー。寂しい。もっと見ていたい気分です。
 
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