
最寄りの図書館は完全閉鎖しており、五月の連休明けまで貸し出しはしていない。なので本屋でシェークスピアのリア王を購入。今までシェークスピアはマクベスしか読破していない。若きウェルテルの悩みも図書館で斜め読みしたが、若い頃を思い出しそうなシーンが多すぎて、怖くなって読むのをやめた。
逆に言えば、怖くなって読むのをやめるくらい、力を持った作品である。
リア王もマクベスと同様に戯曲形式で書かれている作品で、とにかく人間の愚かさと暗部が描かれているのだが、とにかく登場人物が善人悪党を問わず何故か魅力的に見えてしまう。
シェークスピアは2冊目だが、この人の作品は、いつも主人公が本当は何を考えているのかという事がわからないということに魅力がある。
リア王もマクベスも途中から狂ってしまうのだが、狂ってしまった方が清々しいまでに幸せに見え、しかも達観している。
そして王と道化のやりとりがとても意味深に見えた。
政治的にはイングランドとフランスの戦争、宮廷闘争、召使いの反乱など、シェークスピアが生きた絶対王政の時代に対して、やや否定的なメッセージにも読めなくないが、こういうことをするのは当時は勇気がいったことだろう。
トマスホッブズが、近代国家の構造の道筋をその著書の中でコッソリと表したが、体裁としては王権神授説を強化するような内容としてまとめた手法と同じものなのかもしれない。
まったく文学とか芸術というものは、作者がどこまで計算して書かれたものだか想像がつかないほど示唆に富んでいる。そして読み手が人生で経験を重ねるほどに、その作品の解釈はより深くなっていくものである。
ページ数にして200ページ弱。1日で読み切れるくらいの分量なのでオススメである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます