筆者は、1980年代に中国西部を旅した時、目に肌色の膜がかかった子どもを多く見ました。発展途上地域に、共通の疾病といいいますが、向こうでは、あまりにありふれた光景に驚きました。
子どもが二十人も集まれば、三人くらいは片目が、一人は両目が肌色の膜で覆われているのです。明るいシルクロードの太陽の下、子ども達は屈託ないのですが、見る方は、ひどくやるせない思いがしました。当時の人気番組『シルクロード』では、映し出されない現実がありました。
ユネスコはじめ、国連各機関が、ビタミンA剤を送るプログラムを行っていますが、僻地には、どうしても届いていないのが現実です。
さて、アフリカでヴィタミンA補給の最も、緊急性のある地域は、エチオピア、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ、タンザニア、南アです。
( 西アフリカのようにベータカロチンを多く含んだ、赤いパームオイルを使う地域は、それほど酷くはないとのことです。)
国際イモ類センター(CIP.) が、ベータカロチンを含む「 SPK 004 」というサツマイモと、その改良種をつくり、普及に努め、農業生産を増やそうとしているのですが、多様な嗜好性の違いなどから、あまり進んでいないようです。
こうした貧困の撲滅には、農業生産の増加が重要で、FAO,国連食糧農業協会によると、農業生産が1%増えると、貧困人口が最大で1.2%減る、と言われています。
そこで、アフリカで活躍する日本人海外協力隊の方々に、現地でサツマイモや、カボチャが一般に栽培されているか、問い合わせてみました。
答えは、現在、普及中であるが、まだ一般化していないとの事でした。トマトやオクラ、たまねぎは作っているが、ビタミンAの王様のカボチャや、サツマイモは、あまり見ないとの事でした。大都市と農村の格差も、凄まじいようです。中には、小さな子どもが次々に、マラリアで死んでゆくのを、どうにも出来なかったと綴る方もいました。
・画像は、日本の伝統品種 「 鹿ケ谷 」 耐病性強く、甘く美味しい。
考えるに、日本の誇る優れ物のカボチャを現地で作らせて見てはどうかと思うのです。
日本には、一本に70~100個も実り、病気に強く、栄養価も優れた『 万次郎南瓜 』(f1)という品種があります。
暑さに強い『 日向南瓜 』、貯蔵性のよい『 愛知白皮 』、戦時中大活躍し、食糧難を助けた『 鉄かぶと 』(f1)も健在です。味もよし(^^)。
もちろん日本で開発された、各種サツマイモも、大豊産種から、つるを食べる品種、カロチンやアントシアニン色素を含むものも開発されていますから、平行して普及するべきです。
わが国が誇る、往年の銘品種や農業技術が、世界の病苦、貧困、飢餓に苦しむ人々を救って欲しいものですね。旱魃に弱い 穀類中心の不安定な農業の 改善が、今、求められています。
* 12月4日追記
タンザニアにお住まいのLuluさんから、貴重な現地情報を、頂きました。
なんと、タンザニアには、カボチャもサツマイモも普通に、売られているとのことです。にもかかわらず、一般の人々には、栄養に関する知識が欠如しているように観察されるとの事です。
考えてみると、食べ物はあっても、平均寿命が32歳で、五分に一人の割合で、マラリアで死んでいく状態は、教育の問題でもあるようです。机の上で考えても、現場にいないと、気がつかない事って往々にあるのですね。Luluさん、本当にありがとうございました!
ご参考-
・ <<< 国境なき医師団、ニジェール食料危機2005年 現地報告.
・ <<< Lima based International Potato Center
・ <<< 各国 N G O の活躍
・ <<< Bカロチンを含んだ米の品種も.
・ 日本の誇る 草取り器具 三角ホーがお奨めです.
・ 拙ブログ関連記事
・ <<< 根菜文化の航跡.
・ <<< 中国湖北の蔬菜「諸葛菜」.
・ <<< 土と健康.
・ <<< カボチャの病気.
・ <<< ビタミンA を多く含む食品
・ <<<・ GEORGE. W. CARVER . アメリカの青木昆陽
サツマイモやかぼちゃが役に立てばいいですね。食べ物については現地の方たちの嗜好や習慣もあるでしょうからおいそれとは行かないかもしれませんが、日本でも救荒作物に助けられた歴史はありましたし、普及するといいな、と思います。
ここはひとつ青木昆陽先生にあの世からもう一度お越し願って今度は国際的に活躍してもらいたいですね。
芸術家の方に来て頂き、本当に嬉しいです(^^)。
失明した子どものうち三分の二が、五歳に満ずに死んでしまうというのも、なんとも哀れというか、やるせない思いがいたします。
W H Oによりますと、全世界で1200万人の子どもが、同様の原因で、毎年、死亡しているとのことです。原因は同じで、マラリア、風邪・肺炎、下痢、はしかを併発しているとの事です。
視力を失った子どもは、1800万人の計算になり、大変な数です。
http://www.who.int/vaccines/en/vitaminamain.shtml
おそらくは、カボチャが伝来する前の、日本も同じような状態であったかもしれません。サツマイモは、江戸時代になって伝来し、徳川吉宗の頃に至って、ようやく普及し出したのですから、時間を要しました。
アフリカに、いや第三世界に青木混陽先生の化身が、現れ出る事を祈りましょう。
お返事にも書いたように、わたしが滞在しているところでは、サツマイモもかぼちゃも栽培されています。サツマイモはとくによく市場で見ます。
ブログでも写真を取り上げたことがあるのですが、タンザニアでは、5分に1人、マラリアの死者が出ているということです。アフリカ諸国でのエイズの蔓延は先進国側から見ると深刻な問題ですが、現地の人からすると、エイズとマラリアの深刻さには、大した違いがないように見えていると思います。
こちらに長くいて思うのは、基本的な栄養に関する知識が、一般の人々にない、ということです。離乳時のこどもに野菜や果物をすったりして食べさせている母親は、見たことがありません。穀物のおかゆを与えるだけです。それと、新しい食料に対する保守的反応が強い、というのもあります。だから新しい野菜の栽培を試験的に導入しても、それが市井の人々に定着するかには疑問があります。長くなってすみません。
サツマイモの収穫量・栽培面積。年間伸び率
国名 年収穫量 栽培面積 年伸び率
Ethiopia 158,000t 20,000ha 0.7%
Kenya 725,000t 74,000ha 3.8%
Rwanda 967,000t 150,000ha 0.5%
Tanzania 402,000t 250,000ha 2.5%
Uganda 1,888,000t 1,519,000ha 2.7%
1999年.
日本でも、戦時中の栄養状態の悪い時に、マラリアが発生した事を思えば、カローリーではなく、栄養が人の健康に、大きく関わっているのですね。
>長くいて思うのは、基本的な栄養に関する知識が、一般の人々にない、ということです。・・・
それっ、本当に貴重な情報です。私達からすると盲点です。う~ん。目からウロコ。寝耳に水。びっくりしています。一番大切なことが、教育されていないのですね。シリアスです。
マラリア、HIV、風邪・肺炎、下痢、はしかの感染に、ヴィタミンAの欠乏が関わっている事は明らかです。
http://www.who.int/vaccines/en/vitaminamain.shtml
小さい時からの教育って、本当に大切だと痛感しました。簡潔で貴重なお知らせ、本当に感謝致します。
今日、UNICEFから募金のお誘いのメールが届きました。
5000円の支援でビタミンA補給剤1年分を1168人の子供に届けることができるのだと書いてありました。
ですが、やはり最も大切なのは教育なのですね。他人から与えられたものは長続きしませんね。
UNICEFのサプリメント配布、緊急用としてはよいかもしれませんが、もう長らく、ヴィタミンAの欠乏が慢性化し、マラリアやHIVの母子感染が増加しているのは、不思議です。
ごく単純な知識の欠乏によって、莫大な数の子ども達が死んでゆくのですから、不思議です。一日一切れの、マンゴーか南瓜を食えばよいのに!!
ビタミンAの欠乏が叫ばれて、何年ったったのでしょう。アフリカは、「製薬会社の市場」であったり、先進国の余剰穀物のはけ口になっているような気がしてきます。
栄養はサプリでは、問題はいつまでたっても・・・・・
ビタミンAが免疫力賦活作用もありますので、βカロチンを含む食物の普及は、子供の感染症による死亡率を下げる有効な手段であると思います。私もサプリメントの過大評価には疑問を感じています。仰る通り緊急的な補給はまあよいとして定常的に飲むのは経済的にも非効率だと思います。
土壌や気候にあった品種のカボチャやサツマイモがあって、アフリカでの栽培が普及すればよいですね。
Luluさんのコメントにありましたが、タンザニアでは、5分に一人の割合で、マラリアで死んでゆくそうです。日本でも、戦時中先島諸島でマラリアが蔓延して同じような状況になった事が伊丹十三の『小説よりも奇なり』-神兵衰弱-に出ていました。
最近の日本の子どもの「好きな物食い」が話題ですが、将来の日本にも、起こり得ることかもしれませんね。家庭での教育って、本当に大切ですね。
野菜隊員に質問してみたところ、ジンバブエでもカボチャ、サツマイモはそれなりに一般的で、そろそろスーパーなどにも並ぶ時期だそうです。
ジンバブエには、政治社会的な状況に起因する食糧不足があり、農家の方などは作物の多角化を図っているようです。カボチャは栄養もあり、保存も利くので利用していこうという方向性だそうです。
とりいそぎ、簡単にお知らせまで!
ジンバブエの首都ハラーは大都市で、鉱山景気で、富裕な外国人が多いことで知られていますが、スーパーなどない農村部では、どうでしょうか。
飢餓と報じられるエチオピアなども、首都には食料が豊富にあるとのですが、農村は、まったく別で、飢餓と貧困に苦しんでいるそうです....。