新拠点はEUV露光装置を日本の研究機関で初めて導入する(インテルの装置)
米インテルと国立研究機関である産業技術総合研究所(産総研)は、最先端半導体の製造装置と素材の研究開発(R&D)拠点を国内に設置する。
半導体は経済安全保障の重要物資で、欧米などで得た研究データを日本に移転するための審査が厳しくなっている。
国内に最先端設備を備えた拠点をつくり、製造装置や素材を開発しやすくする。
新拠点は3〜5年後をメドに設立し、極端紫外線(EUV)露光装置を日本の研究機関として初めて導入する。
同装置は回線幅が5ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の最先端の半導体の生産に欠かせない。
産総研が運営主体となり、インテルがEUVを使った半導体の製造ノウハウなどを提供する。総投資額は数百億円規模になる見通し。
企業が利用料を支払い、EUVを使って試作や試験をする。新拠点では米国の研究機関との技術協力や人材交流も検討する。
国内では最先端半導体の量産を目指すラピダスが製造用のEUV装置を24年12月に導入するが、研究機関はEUVを保有していなかった。
EUV装置の価格は1台400億円を超える規模だ。素材や装置メーカーが自前で購入するのは難しく、ベルギーのimec(アイメック)など海外の研究機関のEUV装置を使って開発を進めている。
米中対立が激しくなるなか、米国は中国へのEUV装置の輸出を規制している。
EUVに関連する装置や素材も審査対象となり、海外で手掛けた研究の成果やデータを日本に持ち込むための手続きに時間がかかる。国内の研究機関にEUV装置があれば、自社製品への研究成果の活用のハードルが下がる。
EUV露光装置はオランダのASMLホールディングが独占しているが、半導体の製造には600を超える工程が必要で、関連装置や素材の開発が欠かせない。
国内勢ではレーザーテックがEUV関連の検査装置で100%のシェアを持ち、JSRなどは回路を作るのに使う感光材で強みを持つ。インテルは新たな研究拠点を通じて、国内の素材や装置メーカーとの協業関係を深める。
先端半導体を手掛ける大手では、台湾積体電路製造(TSMC)が22年6月、茨城県つくば市に次世代半導体の研究開発拠点を設立。
半導体を最終製品に仕上げる「後工程」向けの素材開発に取り組む。
韓国サムスン電子も24年度内に横浜市に研究拠点を設立する。
国内に技術開発の場が増えることで、日本の装置・素材や半導体デバイスメーカーが最先端技術を身につける機会が増える。
南川明インフォーマインテリジェンス シニアコンサルティングディレクタ
分析・考察
これだけ日本企業の装置、材料シェアが高い事や先端プロセスの重要性が認識されている中で日本に先端の開発環境が無い事は長期的な戦略上の足りないピースであった。
Intelも先端プロセス開発の遅れを取り戻すためには日本企業との強固な開発環境は有難いはずだ。
TSMCやSamsungが先端プロセスを日本に移管してくれないなら、残るはIntelだけである。2030年までに先行している2社に追いつくシナリオを描いて欲しい。
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日経記事2024.9.03より引用