人類が、石油を発見、そして利用した歴史は古く、古代エジプトに遡ります。 古代エジプトでは、紀元前１５００年頃、死者を葬るにあたり、死体を布で巻き、その上から液体アスファルトを塗布し、この防湿・防腐効果により、死体はミイラとなり、３０００年を過ぎた今日でも彼らの過去の栄華を見ることができます。
旧約聖書の「出エジプト記」第二章に、モーゼの母親がイグサで作った船にピッチを塗り、モーゼをその中に入れ河の葦の中に隠しておいたという有名な物語もあります。
ペルシャの拝火教、すなわちゾロアスター教もまた、石油と大きな関係があります。 ゾロアスター教の寺院のあるところには、必ず神火が燃えていました。 一度火を灯すと、永遠に消えることのない炎を見て、この青白い火を「オルムズド」（火の神）と崇めました。 この火こそ、自然に噴出する天然ガスがあげる炎でした。
ペルシャの北、カスピ海に面してロシアのバクー油田があります。 これまた、ペルシャと同様に古い頃から知られていました。 バクーのほとりにカスピ海に突出したアプセロン半島があり、その裏方にスビアイト島という小島が横たわっていますが、古代、この島には消えない火が燃え続けていました。
ペルシャ人の間では、神聖化され、ゾロアスター教のメッカとして巡礼者が絶えることはありませんでした。 バクー方面では９世紀ころから石油は灯用に使われ、粘土製の油壷などが発見されています。 その他、車両の塗料とか，皮膚病の霊薬として利用されていましたが、国王がこれに重税を課したために、石油はさして発展しませんでした。
ロシアのピーター大帝がバクーを占領したのは、西暦１７２３年ですが、当時はまだ石油の利用についえ着目されず、土着民が伝統的に使用しているだけでした。 ピーター大帝の野心はオスマントルコを黒海から追い出し、コンスタンティノーブル（現・イスタンブール）を占領することでありました。しかし、この野心は満たされずに終わり、このバクー油田が開発され始めたのは、１９世紀に入ってからです。
南米のインカ帝国においてはも石油利用のあとがうかがえます。 インカ帝国は現在の南米ペルー及びエクアドルを中心として栄えたインディアン帝国（今日ではインカ帝国をつくったのは縄文人であることが世界的に知られています）で、その遺跡は今日なお一つの驚異とされています。
このインカ帝国がスペイン人の侵入にあい、、滅亡したのは、西暦１５３８年の頃でしたが、それ以前に石油を利用していたことは、様々な場所に残された石油採掘の遺跡で明らかで、古いスペイン旅行者の手記によっても、土着民がせきゆの採取に従事していたことは事実です。
驚くべきことは、インカ帝国が華やかなりし時代には、今日のペルーのクスコからエクアドルのキトーに至る１５００マイルの道路建設にあたり、アスファルトを使って舗装していたことです。 ご存じ、南米のベネズエラは巨大な石油の埋蔵量で知られていますが、ここは超重質油といって、アスファルトや重油には適しておらず、ガソリンや灯油をつくるには、かなりの精製技術が必要で、後に、欧米の資本により、開発されました。
西アジアにおいても、バビロニアにアスファルト舗装道路があったことが伝えられています。
我が日本でも、石油の発見は相当古く、残る記録としては、天智天皇即位７年、「越後献燃土興燃水」と日本書紀に記されており、越後の国より燃える土と、燃える水を献上したことが明記されています。
天智天皇に献上した「燃える土、燃える水」の産地がどこであったか、それと伝えられる土地としては、新潟県刈羽郡妙法寺村、三島郡吉水村、蒲原軍黒川村などがあげられています。 越後ではこれを「草生水（くさうず）」「臭水（くさみず）」と称し、現在もこれに因んだ地名が残っています。
今日、東京電力の新潟本社・柏崎刈羽原子力発電所が有名ですが、刈羽村は昔石油の産地ともしられており、同じエネルギー産業の奇妙な縁があるようです。
（参考）
主要地域別石油・天然ガス生産量（２０２０年）及び 生産地の地質構造
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/e58336a9bcb818512bf46d089c74b95a
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