10日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、終値は前日比251円82銭(0.6%)高い4万1831円99銭と史上最高値を連日で更新した。
保険や銀行などの金融株が堅調で、時価総額の大きい主力株や株価指数先物に海外投資家とみられるまとまった買い注文が続いて午後に一段高となった。2日間の上げ幅は合計で1000円を超えた。
東証株価指数(TOPIX)も続伸し、4営業日ぶりに最高値を更新した。13.65ポイント(0.5%)高の2909.20と終値で初の2900台に乗せた。
この日はETF(上場投資信託)が取引終了にかけて分配金捻出のために売りを出す需給面での懸念もあった。最高値圏での利益確定売りも跳ね返す力強さや先高観を印象づけたのが、連日で上場来高値をつけたリクルートホールディングス株だ。
前日の取引終了後に6000億円を上限とする自社株買いを発表し、企業が株主還元をさらに拡大する期待を集めた。
リクルートは発行済み株式総数(自己株式を除く)の5.67%に当たる8700万株、6000億円を上限に自社株買いを実施する。その一部として10日朝の東証の立会外取引で791億円分を取得した。
5月の決算説明会では、約1.1兆円のネットキャッシュ(手元現金から有利子負債を引いた額)を株主還元などに充て、6000億円程度に引き下げたいと表明していた。
実施自体には驚きがなかったが、その規模は市場の想定を上回るサプライズとなった。日経平均の押し上げ寄与度でトップに立つ場面があったことからも投資家たちの驚きがうかがえる。
「自社株買いは株価を下支えするためのものという意識が変わってきた」とSBI証券の鈴木英之投資情報部長は指摘する。リクルート株は24年に5割上げ、6月半ば以降上場来高値を更新し続けている。
PBR(株価純資産倍率)は7倍、ROE(自己資本利益率)は19%と日本株市場では「優等生」の部類に入る。鈴木氏は「メジャー級の会社は米国企業と比べて自社の資本効率がどうかを意識している」とみる。
自社株買いを映す事業法人の株式買越額は年初からの6月最終週までの累計で2.5兆円に達した。
富国生命保険の野崎誠一・有価証券部長は「日本企業は内部留保が潤沢で自社株買いを進める余地があるし、実際とにかく買っている。
需給はゆがめられているともいえ、米国株が大きく調整するなどでなければそう簡単には崩れない相場だ」とみていた。
日経平均は最高値圏にあるため、売り圧力は今後も強いとみられる。ただ、買い手として存在感を高める企業の自社株買いが一段と広がれば、相場の調整は限られそうだ。この日のリクルート株は日本企業の株主還元の潜在力を示したともいえる。
(今堀祥和、篠崎健太)
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日経記事2024.07.10より引用