ロスチャイルド財閥ー246 ナポリ分家の消滅
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からの続き
ヨーロッパの戦乱の暗雲は次いで北に移り、『動産銀行』の没落のところで紹介したように、オーストリアはプロシア（ドイツ）と事を構えます（1866年）。
大ドイツ主義のオーストリアとしては、プロシアのビスマルクが画策する北方ドイツ諸邦によるドイツ統一の動きに我慢が出来ませんでした。
この戦争もロスチャイルド家にとってはいい迷惑でした。 フランクフルトのロスチャイルド家はすでにビスマルクとの関係を深めてその融資に応じていたので、戦争になればこれまたウィーンのロスチャイルド家の同士討ちになってしまいます。
慎重なロスチャイルド家は密かにオーストリアのハプスブルグ家に見切りを付けていたようです。
イタリアをめぐるフランスとの戦いに負けたオーストリアに対してはその後、起債の要請には遠慮する姿勢を見せ、プロシア（ドイツ）との戦争に備える公債発行を依頼されると「戦争のためならロスチャイルド家は融資はしない」ときっぱり断り怒りさへ買いました。
案の定、すでにオーストリア軍は後年の力はなく、わずか7週間でプロシア（ドイツ）軍の前に敗走します。
ロスチャイルド家が冷静にその実力を見透かして軍事公債の発行を断ったのに対して、オーストリア公債を記載した『動産銀行』のペレール兄弟は没落しています。
あれほど、深い関係にあったオーストリアであっても、ロスチャイルド家はビジネスを最優先したのです。
将来のドイツ統一の基盤をつくった普墺戦争は、またまた戦争の種を撒いていました。本当にヨーロッパの人は賢いのかアホなのかよくわかりません。 戦争ばかりして、自ら富の消耗ばかりしています。
私の実経験からは、今のヨーロッパの人たちはまったりで覇気がなく、欧州に住み、外交の仕事をしていた友人の外交官も同じことを言っていました。しかし、当時は血気盛んだったのでしょう。
この戦争でフランスはビスマルクの要請を受けて中立を保ち、恩義を売って領土の一部を譲り受けるつもりでいましたが、オーストリアに勝利したビスマルクは、ほとんど言う事を聞かなくなっただけでなく、対外政策でフランスとプロシア（ドイツ）はなにかと衝突するようになりました。
このためナポレオン三世は１８７０年７月１９日、プロシア王の遠い親戚にあたるレオポルドをスペイン王位につけようとした継承問題に激怒して、ついにフランスはプロシアに宣戦布告しました。
ところが実戦経験を積んだばかりのプロシア（ドイツ）軍は強く、装備にも勝っていて連戦連勝。 ９月２日にはセダンでナポレオン三世の８万のフランス軍を破り、たちまちパリ郊外にまで迫りました。
パリではナポレオン三世の安易な降伏に怒った市民が国防政府を樹立、籠城作戦にでました。
しかしながら、この国防軍も年明けにはプロシア（ドイツ）軍に降伏して、フランスはアルザス・ロレーヌ地方の割譲という大きな犠牲を払いますが、そのパリ包囲の間、なんとビスマルクとモルトケ将軍は、ロスチャイルド家のフェリエール館を接収して、最高司令部を置きました。
フェリエール館は、まもなくドイツ港手になるプロシア王・ヴィルヘルム一世（1797～1888、在位プロシア王1861～1888、ドイツ皇帝1871～1888）も訪れた事があり、ロスチャイルドひいきで、ビスマルク以下
熨斗将軍たちに城内の絵などの美術品には一切手を出さないように命じると共に狩猟も禁止しました。
おかげで館は接収されたにもかかわらず無傷だったといいます。
館の主は、そのころジェームズから息子のアルフォンス・ド・ロスチャイルド（1827～1905）に移っていて、ビスマルクとの賠償交渉などにあたっています。
パリは、徹底抗戦を叫ぶパリ・コミューンのプロレタリア政権の支配下にありましたが、アルフォンスはこれを非現実的だとして、ティエール首相の国防政府を支持しました。 また包囲されて飢餓状態のパリ市民のためにロンドンの一族が食料の緊急輸送などの救済活動を行いました。
フランスのこれまでの体制転換のときとは違って、第三共和制の成立には直接間接に絡んだためロスチャイルド家の力がそがれることはありませんでした。
フランスがプロシア（ドイツ）に支払うことになった５０億フランの賠償金の支払いにしても、ロスチャイルド家の協力がなければ空手形になってしまいかねないもので、ビスマルクとしてもアルフォンス・ロスチャイルドの意見を多少とも聞かないわけにはなりませんでした。
賠償金は同家の努力で予定より２年早く完済されました。 このころまでにはロスチャイルド家の各家はすべて三代目に代替わりしています。
一族の二代目であるフランクフルトの長男アムイェル、ウィーンを守った二男サロモン、ナポリの四男カールが１８５５年に亡くなり最も長寿だったパリの五男ジェームズも『動産銀行』との戦いの勝利を確認して１８６８年に７６歳で永眠しました。
息子に恵まれなかったフランクフルトの本家は、ナポリのカールの長男マイヤー・カール（1820～1886）が経営を引き継ぎました。
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