家屋に被害を与える木材害虫として代表的な「ヒラタキクイムシ」も、戦前は竹材の重要害虫として有名でした。戦後,ラワン材をはじめとする南方産広葉樹の輸入が急増したことによって、大量発生したため木材害虫として注目されました。日本では主にヒラタキクイムシ、ナラヒラタキクイムシ、ケヤキヒラタキクイムシ、ケブトヒラタキクイムシの4種が知られています。
ヒラタキクイムシといえば、以前は春~夏頃、年1回発生がみられていたのですが、最近は秋頃までつづき、被害度合いも甚大なものが見られるようになりました。
住宅の高気密・高断熱化や冷暖房の影響で被害が無季節化しているのか?環境問題による規制の影響で、住宅の木質材料が低ホルムアルデヒド化になっている事が原因か?いや異常気象の影響では?など、その理由についてはいろんな説が飛び交っていました。
しかし、専門の先生方の研究によって、今の日本で家屋に被害をもたらしているキクイムシは、前述の4種だけではなく、実は外国から輸入された木材・木製品によって日本に持ち込まれたと思われる「アフリカヒラタキクイムシ」や、関西では「アメリカヒラタキクイムシ」も生息し、その分布を広げつつある事がわかりました。
ヒラタキクイムシの脱出時期は3月~7月,アフリカヒラタキクイムシの脱出時期は5月~10月ごろまでみられるため、春~秋にかけてヒラタキクイムシ類の発生が確認されているのだと推察されています。
今回は、いま日本のヒラタキクイムシ類の代表種となっている「ヒラタキクイムシ」と「アフリカヒラタキクイムシ」についてお伝えします。
●2種の共通しているところ
ヒラタキクイムシの仲間は、家屋の建材に使われているラワン材や合板を主に食害します。木材を加害するのは幼虫です。新築家屋の単材や合板から発生しますが、針葉樹は食べません。成虫が脱出する時、木粉や糞を虫孔から排出するため、加害材の下に盛り上がった白い粉が見られます。これによって初めて被害に気が付くことがほとんどです。
●2種の異なっているところ
*ヒラタキクイムシ
日本全国で見られます。体長が3~8mmと成虫の大きさは様々で、幼虫の間に食べた木材の栄養状態(デンプンの量)によって、成虫の大きさが決まるといわれています。産卵する前に、メスは木材の一部をほんの少しかじってみて、自分の子供が成育するのに適している木材かどうか(デンプン質がより多く含まれている辺材を好みます)を確かめてから産卵します。年1回発生し、成虫の寿命は3~5週間程度。成虫は主に夜活動します。
*アフリカヒラタキクイムシ
最近になって国内に侵入したものと言われています。奈良・大阪など関西地方、東京、愛知で発見され、近年増加傾向にあります。
本来アフリカヒラタキクイムシは、高温に強く低温に弱いため、自然環境下の日本では冬を越せないため、繁殖出来ない(虫類は自分達が生存するために必要な絶対条件が揃っていなければ繁殖することはできません)はずなのですが、ヒラタキクイムシより生活環境に対する適応能力や繁殖能力が高い事、冬季に使用される暖房の普及によって冬季に死滅しない事、日本の年間平均気温が上昇している事など、アフリカヒラタキクイムシにとって様々な好条件が重なったため、国内での分布を広げつつあります。
体長は2.5~4.0mm、赤褐色~暗褐色。ヒラタキクイムシと非常に良く似ていて、肉眼での区別はできません。幼虫が必要とするデンプン質が少量であっても成育できるため、被害は新築だけでなく築10年経過した住宅まで広がっています。ヒラタキクイムシより食害が激しく、繁殖力も旺盛で、年に数回発生します。成虫は日中に飛翔します。
対策
1.日曜大工で板材を買い求める時、家具を新調する時は、虫の穴が開いていないか十分に確認してから購入しましょう。
2.駆除する時などに、不自然に盛り上がった木粉(非常に細かい粉状です)を見かけたら、まず相談してください。
不用意に市販のエアゾールなどで処理すると、かえって被害範囲が広がる場合があります。
3.被害初期であれば、こまめな薬剤注入によって処理が可能ですが、被害が進行している場合は、針葉樹あるいは防虫処理材に取替える必要があります。
パートナー
田中 美恵子/(株)ハウスドクター 環境衛生事業部 部長
http://www.housedoctor.co.jp/
ヒラタキクイムシといえば、以前は春~夏頃、年1回発生がみられていたのですが、最近は秋頃までつづき、被害度合いも甚大なものが見られるようになりました。
住宅の高気密・高断熱化や冷暖房の影響で被害が無季節化しているのか?環境問題による規制の影響で、住宅の木質材料が低ホルムアルデヒド化になっている事が原因か?いや異常気象の影響では?など、その理由についてはいろんな説が飛び交っていました。
しかし、専門の先生方の研究によって、今の日本で家屋に被害をもたらしているキクイムシは、前述の4種だけではなく、実は外国から輸入された木材・木製品によって日本に持ち込まれたと思われる「アフリカヒラタキクイムシ」や、関西では「アメリカヒラタキクイムシ」も生息し、その分布を広げつつある事がわかりました。
ヒラタキクイムシの脱出時期は3月~7月,アフリカヒラタキクイムシの脱出時期は5月~10月ごろまでみられるため、春~秋にかけてヒラタキクイムシ類の発生が確認されているのだと推察されています。
今回は、いま日本のヒラタキクイムシ類の代表種となっている「ヒラタキクイムシ」と「アフリカヒラタキクイムシ」についてお伝えします。
●2種の共通しているところ
ヒラタキクイムシの仲間は、家屋の建材に使われているラワン材や合板を主に食害します。木材を加害するのは幼虫です。新築家屋の単材や合板から発生しますが、針葉樹は食べません。成虫が脱出する時、木粉や糞を虫孔から排出するため、加害材の下に盛り上がった白い粉が見られます。これによって初めて被害に気が付くことがほとんどです。
●2種の異なっているところ
*ヒラタキクイムシ
日本全国で見られます。体長が3~8mmと成虫の大きさは様々で、幼虫の間に食べた木材の栄養状態(デンプンの量)によって、成虫の大きさが決まるといわれています。産卵する前に、メスは木材の一部をほんの少しかじってみて、自分の子供が成育するのに適している木材かどうか(デンプン質がより多く含まれている辺材を好みます)を確かめてから産卵します。年1回発生し、成虫の寿命は3~5週間程度。成虫は主に夜活動します。
*アフリカヒラタキクイムシ
最近になって国内に侵入したものと言われています。奈良・大阪など関西地方、東京、愛知で発見され、近年増加傾向にあります。
本来アフリカヒラタキクイムシは、高温に強く低温に弱いため、自然環境下の日本では冬を越せないため、繁殖出来ない(虫類は自分達が生存するために必要な絶対条件が揃っていなければ繁殖することはできません)はずなのですが、ヒラタキクイムシより生活環境に対する適応能力や繁殖能力が高い事、冬季に使用される暖房の普及によって冬季に死滅しない事、日本の年間平均気温が上昇している事など、アフリカヒラタキクイムシにとって様々な好条件が重なったため、国内での分布を広げつつあります。
体長は2.5~4.0mm、赤褐色~暗褐色。ヒラタキクイムシと非常に良く似ていて、肉眼での区別はできません。幼虫が必要とするデンプン質が少量であっても成育できるため、被害は新築だけでなく築10年経過した住宅まで広がっています。ヒラタキクイムシより食害が激しく、繁殖力も旺盛で、年に数回発生します。成虫は日中に飛翔します。
対策
1.日曜大工で板材を買い求める時、家具を新調する時は、虫の穴が開いていないか十分に確認してから購入しましょう。
2.駆除する時などに、不自然に盛り上がった木粉(非常に細かい粉状です)を見かけたら、まず相談してください。
不用意に市販のエアゾールなどで処理すると、かえって被害範囲が広がる場合があります。
3.被害初期であれば、こまめな薬剤注入によって処理が可能ですが、被害が進行している場合は、針葉樹あるいは防虫処理材に取替える必要があります。
パートナー
田中 美恵子/(株)ハウスドクター 環境衛生事業部 部長
http://www.housedoctor.co.jp/