突然ですが、
皆さんは、“運命の恋”なるものを信じますか?
そして、そんな恋を経験したことがおありですか?
あ、それとももしかして、現在進行形?
――今からするお話は、ピート・バーンズという一人の人間が、年齢も性別も超えて恋に落ち、そのおかげで自分の人生で最大のピンチを救われ、そのおかげで自己と他者というものを改めて知った、彼の覚醒の物語です。
そして、そのお相手はといえば、ピートファンなら既にご存じ、かの色男、マイケル・シンプソン。
彼とピートはおよそ10歳の年の差があり、出逢った当時マイケルには娘も一人おりました。
その出逢いは自叙伝を書いた当時から2年半前のことだと明記してあるので、本が出版された2007年から執筆中までのタイムラグなどを考慮に入れると、大体時期的には'03~'04年あたりかと思われます。
その時、マイケルはレストランのウエイターをしていました。
ピートはビジュアル的に言えば、ポリアクリルアミドの注入のしすぎで唇が最大限まで腫れて痛み出していた頃でしょうか。
(そんな時期にレンアイが出来るピートのバイタリティ!)
でも、ここで私がなぜ、ピートとマイケルの馴れ初めを皆様にお伝えしようと思ったかを改めて書かせていただくと、
まァ、ただ単にピートのマイケルに対する惚れっぷりが尋常じゃないくらいすごくて、自嘲的ではありつつも正直な気持ちを綴っているピートの文面が、読んでてめちゃくちゃ気恥ずかしくも可愛かったので(*^_^*)そういう一面をお知らせしたかったのと、
後は【Big Brother編】を書くに当たって、どうしてもこの時期の2人の結びつきを避けて書くことは難しいと思ったこと、
そして、ピートの周囲には、どうも有名人と無名人とのカップルにありがちな片方に対する偏見だけではなく、ピート自身も相変わらず誤解されてる部分があって、
巷に流布している様々な2人のエピソードも、実は、ピートのあの頃の精神状態が原因で起こったことも多々あるという事実を伝えるとともに、
ピート自身がそのことにすごく心を痛めているということを知ってもらいたいというのがあったからです。
とは言え、
私の方から意図的というか、恣意的な書き方で皆様の感想を誘導したくはないので、ここはまた、ピート自身の言葉を使って書き進めていく方法を取っていきますね。
それによってどう思われるかは、それこそ、皆様次第。
でも、基本今回の記事は2人のラブストーリー。
そして、そんな燃えるような恋をしても、ピートとマイケルだけでなく、等しく誰の身にも時の流れは容赦なく襲ってくるということ。
それが、私個人の感想であることを、最初に付け加えておきたいと思います。
では、どうぞ。
神よ、オレはこの幸運、このめぐり合わせに感謝する。
“運命”がオレ達を一緒にしてくれたから。
――ロンドンにいた間、
オレはコベントガーデンにあるレストラン、“ジョー・アレン”によく行っていた。
オレはそこにいる人々が好きだ。サービスも好きだ。
そこは、まるでオレの部屋のようだった。
オレは、実のところあまり食べないし、あまり出かけない。
だが、それでも外食する時は“ジョー・アレン”がオレのお気に入りの場所だった。
そんなある夜のこと、
26番テーブルに座っていたオレの人生は、そこで永遠に変わったのだ。
オレはある友人と一緒にいた。それは、遅い時間だった。
オレ達は笑い合っていて、やがて見上げるとそこに彼がいた。
彼の名前はマイケルだったが、けれど、オレはその時はまだ、彼の名前を知らなかった。
オレは彼について、何でも知っていたわけじゃない。
だが、オレにはわかっていた。
それが自分が必要とした、自然界の力のように。
マイケルはレジのところに立っていて、お金の計算をしていた。
彼は、オレが見ているのに気付かなかった。
何かがオレに起こった。
オレには理解出来ない、何らかの繋がりがなされたのだ。
オレは前世を信じている。
だから、多分、他の人生の別の形でマイケルを知っていたんだと思う。
そういうわけで、オレが彼に出逢った時、それは完璧な認識に基づくフラッシュのようなものだったんじゃないだろうか。
キャノンボール。
アンタらが考えつく限りの決まり文句だ。
オレは初めてマイケルに会った時、彼に話しかけなかった。
オレは、自分がそこにいたのを彼が見たとさえ思っていない。
だが、その瞬間からオレの空想が始まった。
そして、そんな空想をしながら、オレはそのエネルギーを感じ、注ぎ込むために、ジョー・アレンに行くことが自分の人生の全てのように思えた。
やがてオレは、気違いのようなその週を清算した。なぜなら、オレはパートナーのいる人間だったから。
オレは、次に友人とジョー・アレンに食事しに行った時もそこに座り、また同じような繋がりを感じた。
オレは彼の顔を見つけた。
オレはこの男を知っていた・・・。
たとえ、まだオレが彼の名前を知らなかったとしても。
オレは少女のような突撃はしない。オレはティーンアイドルに夢を抱かない。
それは、オレが10代だった時の話ではなく、オレが“男”になった時の話でもない。
そして、この感じは、レストランのレジにいる男の外見に感じていたものでもなかった。
オレは既に、そんなものを越えていた。
だが、オレは、彼は自分を見ていないんじゃないだろうかと思って怯え始めていた。
オレがこの、見知らぬ人間からエネルギーを感じる必要があったからといって、一体どれぐらいジョー・アレンで夕飯を食べたんだ?
さぁ、わからないね。
だが、オレのケツが彼を見るために座った四角いシートの形になるまで、オレはそこに座っていただろう。
そして、彼がそこにいないと、オレの心はここにあらずだった。
彼に会えない時、オレの心は、夜空にぽっかり空いた穴のようだった。
リンは、オレがそこで取り憑かれている男の顔を見るためにジョー・アレンまでやって来て満足したようだった。
「オレに気付いて・・・オレに気付いて・・・オレに気付いて・・・。
オレを見て・・・オレを見て・・・オレを見て・・・」
オレは、心の中でそう叫んでいた。
こんなことが続いていた頃、オレはテレグラフ誌の表紙を飾った。
オレは全然知らなかったんだが、
オレが26番テーブルで四角いケツになっていた時、ある男がその写真を見て、マイケルと何か関係があるんじゃないかと思ったらしい。
それで彼に話し、そのことについて聞いたそうだ。
“マイケルの新しい彼氏”――それは、誰かがページのトップに書きなぐったもので、雑誌から引き裂いてジョー・アレンのスタッフボードにピンで止めていたのだと、彼は後でオレに話してくれた。
オレがそのことをもっと早く知っていれば、オレのケツはすごくラクだっただろうな。
そして、オレ達が初めて話をした時、オレは震えていた。
40代の一人の男が、ティーンエイジャーと同じくらい怯えている。
オレは、マイケルのために自分の電話番号を書き留めた。
――やっと、彼の名前がわかった。
だがオレは、彼の番号を間違えて書いてしまった。
オレの心は、オレの指より震えていたのだ。
全神経を注いで、オレはケタを間違えた。
けれど・・・それは夜のことで、それはハプニングだった。
ちょっとしたこと。暗雲ではない。
だが、同じ感覚だった。
これが、そうだった。
スパンダー・バレエの歌で『Through the Barricades』という曲がある。
マイケルとオレは、それがオレ達のことを歌っている曲だと冗談を交わす。
なぜなら、それが荒野で育まれるある愛についての詩を歌っているからだが、オレ達のそれは、けれど、ゴミ捨て場で育まれた。
街の、ジョー・アレンの外の、汚らしいゴミ捨て場で。
レストランの中の慌ただしさや喧騒や人々の群れから離れて、
オレ達は本当に、初めて話をしたのだ。
暗くて高くて狭い、そこは、静かで荒んだ通りだった。
ネオンもなく、レストランも会社もない。
切り立ったレンガ塀の間の一本道、その中のゴミ捨て場で。
「オレはパーティに行く予定なんだ。良ければ一緒に行かないか?」
それは質問だったのか、懇願だったのか、
申し込みだったのか要求だったのか、オレにはわからない。
けれど、オレはとうとうここまで来た。
そして、マイケルは「ノー」と言った。
彼は休憩中で、あまりに忙しかったから。
彼は仕事に戻らなけりゃならなかったので、「ノー」と言った。
オレは、またもや怯え、拒絶され、はみ出し者の子供のようになった。
そこで、オレは取りあえずパーティに行った。
だが、オレは焦点が合っていなかった。
マイケル・・・マイケル・・・マイケル・・・。
結局、オレはそこを出て家に帰らざるを得なかった。
やがてオレは、言い方を考えた。
それは午前3時だった。オレはシャフツベリー通りにいて、仕事を終えたマイケルと逢うことにした。
オレ達は落ち合うことに同意し、ソーホーにあるラウンジ・シャドウに向かい、見上げると雨が降り出していたが、オレは中には入らなかった。
オレはマイケルが道に迷ったり、気が変わったり、怖気づいたりした場合に備えて、冷えと湿気の中をドアマンのように立っていたのだ。
オレは彼を知る途中だった。
オレは、まだ彼を失いたくなかった。
それから、オレ達は中に入って話をし、移動した。
夜明けの朝食をとるために、オールドコンプトン通りにある“Balans”で、ひと組のカップルのいる角の辺りで。
オレ達は6時頃・・・多分、その後ぐらいまでそこにいた。
オレの2人の友人は、オレと一緒にいたこの男が連続殺人犯ではないことを確認するために、そこで見張っていた。
だがオレは、既にそれを感知する能力が自分にあることを、人生の中で学んでいたと思う。
オレは、マイケルを知っていた。
その朝は寒かった。
灰色でない銀色の、都会の空。
オレは朝日が昇ることなど気にしなかった。
オレは、このまま夜が続いて欲しかった。たった今会ったばかりのこの男と、話をするのをやめたくなかった。
束の間を維持しなければならなかった。
「オレのところへ戻ってきてくれるか?」
オレの人生は、一夜限りのものなんかじゃない。
オレは、既にマイケルが結婚をするつもりはないということを見分けていた。
けれどそれは、今回のことを曖昧にするということではなかった。
オレ達は24時間の中だけで始まり、経過があり、終わるということをするつもりはなかった。
オレは24年欲しかった。24の人生も。
オレは、その瞬間を掴まえた。
オレ達は、サウスロンドンのオーバルにある彼のアパートへ行った。
そこは小さなフラットで、一つしかベッドルームがなかった。
そこはオレの世界じゃなかったが、いずれにしろオレは自分の妄想から出て、外の世界にいた。
オレは、彼のものだった。
オレは、ホームに戻ってきたのだ。
オレ達は6日間そのアパートにいた。
6日の夜と、6日の昼。
オレは着替えを持っていなかった。メイクアップ用のバッグは持っていたが、だから、決して快適ではなかった。
アンタらは、マジで恋に落ちたことがあるか?
アンタらはそれほど深く、早く、誰かとわかり合うことが出来るか?
イエス、
もしアンタらがバーンズDNAを持っているなら。オレは信じる。
オレの父と母は2人が出逢った時は、時間などなく、お互い母国語でもない言葉で話さなけりゃならなかった。
彼らは世界大戦と向かい合わせの場所にいた。
だが、彼らは、そのグローバルな愛がお互いの次の50年に繋がっていくものだということをわかっていた。
彼らはそのチャンスを生かした。
そして、今、彼らの内の一人がいなくとも、まだお互いを愛しているのだ。
マイケルとは、
彼を愛するのは簡単なことだった。
なぜならオレの両親のように、オレは彼に会う前から彼を知っていたと信じているから。
彼のアパートで、オレは、彼の手や、足や、腕を知っていたことを理解した。
オレは、それを全部、以前に見ていた。そして、全部、感じていた。
もう一つの世界か、もう一つの時で?
オレにはわからない。
だが、そのどれもがオレにとっては新しいものではなかった。
全ては正しかったのだ。
とは言え、
オレ達が一緒に籠っていた6日間は、全部がのんびりしたおのろけ話ばかりじゃあなかった。
オレは、あまりにも芝居がかっていた。
パニックがあまりにも多くの時間、オレを襲った。
オレは、マイケルがタバコを買いに店に行くだけで、自分を見失った。
あふれ出る涙の川。
痩せた、ホモの猫のように、彼の部屋のドアを引っ掻く。
彼はどこ?なぜ行ってしまった?なぜ、帰ってこない?
そして、彼は戻って来るのか?オレは、もう彼を失ってしまったのか?
アンタは彼のアパートにいる。
そのクソったれなドアのキーを持っているのは彼だ。
もちろん、彼は戻ってくる。
誰か、このバカを落ち着かせてくれ。
なのに、涙はまだ流れ、すすり泣き、怖がっていた。
寒さと吐き気は彼がキーを外し、オレの世界に戻ってきた時にやっと緩和され、
そして、オレ達は再び一緒になったのだ。
オレ達は2人共、その、初めて一緒にいられる大切な時を過ごすために、沢山のものを断った。
オレは、ミーティングも、アポも、友人の誘いも断り、マイケルは仕事のシフトを全部キャンセルした。
ショーもなかった。
オレ達は幻想の部屋を作りあげ、『キャバレー』とデヴィッド・ボウイのビデオを観ていた。
オレ達は、お互いを見つけたのだ。
スパンダー・バレエと紙くずかご。
それは、死ぬまでオレを笑わせ続けるだろう。
だが、他の歌もまた、同じようにオレの人生を区切り、色づけ、形作ってきた。
それらの歌は、オレが聴いて知っていたり、たとえそれがわかるまで年月がかかったとしても、何かを意味していたということで知っていたと思う。
オレが知っていた歌はオレが歩んで来た人生のある日や、オレ自身についてを歌っている。
ブロンディのデビー・ハリーの歌、『Dreaming』はその内の一つだ。
それは、オレがマイケルを見つけたことを、歌っているのだ。
だがオレは、一週間以上オーバルの公営アパートに泊まることが出来ただろうか?
それ以上メイクもしないで。
それに、オレのルーツであるショーもなしで。
とにかく、オレとマイケルは生活を主要にし始めた。
そして、オレ達は真っ先に始めるつもりだった。
オレは自分の家に帰ったが、すぐに、それがもう自分のものじゃないと感じてしまった。
マイケルは週末にやって来た。
彼は、もう二度と離れなかった。
オレは知っているのだが――彼が、オレに話したから――オレは、マイケルが友人と電話で話をしていた時、ソファで彼の隣りに座っていた。
その友人は彼にオレから離れるよう言ったのだ。
彼らはそれが雑誌やレコードカバー上だけの奇態だということを知っていたので、オレを掴まえるまではしなかったが。
それは、タブロイド誌のゴシップ記事の名残だ。
マイケルはオレより若く、とてもハンサムだ。
彼はかしこい。すごくかしこい。
そして、マイケルの友人は彼がオレよりすごくなるだろうと言った。
マイケルはジョー・アレンの仕事を辞めた。
それで、オレ達は本当にお互いのことを知ることが出来たんだ。
だが、皆が彼に言った。
お前の家をあきらめるな。アパートを出るんじゃない。
そのためマイケルは、しばらくそれをそのままにしておいたように、オレも一カ月間考えた。
けれど、その頃にはオレ達は、彼のためにオレの顔を変えたかったくらい完璧だった。
それで、彼はアパートに行った。
マイケルは、彼が取っておいた時間より10分以上そこに行っていることはなかった。
オレ達は自分達の家と、自分達の幻想と、自分達の世界と共に暮らしていた。
オレは他人が思うように、叫んだり投げたりすることを恐れて生きてはいない。
オレは、自分であることや、自分が欲しいものに妥協しない。
マイケルとオレは触角型だ。
オレは、彼に触りたい。オレは歩いている時、彼の手の温かさが欲しい。
道路を渡るのを待つ間、オレの指は彼の肩甲骨を感じていたい。
オレは、手を組み腕を組み、オールドコンプトン通りを歩く同性同士のカップルを見たことがない。
彼らはその通りの終わりに達する瞬間、見つけられるのだ。
アンタらは自分の感じ方や生き方を、製図のように変えることが出来るか?
何で、アンタらは自分がいる地図のグリッド次第で変わるんだ?
そう、マイケルとオレはそんなことはしない。
オレ達は沢山歩く。そして、もしオレ達が互いに触りたければ、そうする。
それなのに、どうしてオレ達には人が期待しているかも知れない騒ぎが起こらないんだ?
オレは、それが自分達がお互いに感じているものの、もう一つの表明だと思っている。
オレは、人々はバカじゃないと思う。
彼らが危害を加えることが出来ると思うのは、物に攻撃する時だけだ。
そして、オレは何となく考えるのだが、あるレベル上では人は、オレ達に危害や損害を与えることが出来ないだろうという事実がある。
それは、オレ達が健全だということだ。
オレ達はあまりに健康で、あまりに仲がいい。
マイケルとオレは、幻想の中で生きている。
そして、他のどんなバカ共にとっても休むことはとても健全だ。
オレが、サポートシステムを利用したのは今回が初めてだった。
オレ達は、まさにお互いがピッタリ合っていた。
身体的にオレはマイケルと触れ合う。
それは全然不格好じゃない。
それは、バレエのようにとても優しく、優雅で、滑らかで、全てがフィットしていた。
人には、多少のスペースが必要だというが、マイケルのことはまだ、言葉に変換出来た。
――彼は言う。
自分達は全てのことを話すことが出来ると。
笑い、泣き、口ゲンカし、店に行き、本を読み、映画を見る・・・。
多くの人々には2人以内の間でそれは起こるが、オレ達もマジで他の誰も必要ではなく、要求もありはしなかった。
そうして、その頃のオレは、やがてますますサポートシステムを必要とするようになった。
――イタリアでの闘病生活だ。
さて。
ここからは、前回の【整形編】に書いた通り。
ピートは、ポリアクリルアミドのせいで顔面崩壊を起こし死にかけたところを再建手術で九死に一生を得、その間をマイケルの献身的な看病のおかげで何とか生きながらえます。
そして、その快復途上で、あるTV番組から一本の出演依頼の電話をもらったところから彼の再生物語が始まるわけですが、
それは3週間にも及ぶ脱落形式の勝ち抜き同居生活で、ピートはお金が入り用だったためそれを引き受けるものの、彼がそれに出演するにあたって最も辛い問題が一つありました。
それは、マイケルと離れなくてはならなかったこと。
まさに大恋愛のさなかにあったピートにとって、それは精神に異状を来たすほど、厄介な影響を収録中に及ぼしたのです・・・。
皆さんは、“運命の恋”なるものを信じますか?
そして、そんな恋を経験したことがおありですか?
あ、それとももしかして、現在進行形?
――今からするお話は、ピート・バーンズという一人の人間が、年齢も性別も超えて恋に落ち、そのおかげで自分の人生で最大のピンチを救われ、そのおかげで自己と他者というものを改めて知った、彼の覚醒の物語です。
そして、そのお相手はといえば、ピートファンなら既にご存じ、かの色男、マイケル・シンプソン。
彼とピートはおよそ10歳の年の差があり、出逢った当時マイケルには娘も一人おりました。
その出逢いは自叙伝を書いた当時から2年半前のことだと明記してあるので、本が出版された2007年から執筆中までのタイムラグなどを考慮に入れると、大体時期的には'03~'04年あたりかと思われます。
その時、マイケルはレストランのウエイターをしていました。
ピートはビジュアル的に言えば、ポリアクリルアミドの注入のしすぎで唇が最大限まで腫れて痛み出していた頃でしょうか。
(そんな時期にレンアイが出来るピートのバイタリティ!)
でも、ここで私がなぜ、ピートとマイケルの馴れ初めを皆様にお伝えしようと思ったかを改めて書かせていただくと、
まァ、ただ単にピートのマイケルに対する惚れっぷりが尋常じゃないくらいすごくて、自嘲的ではありつつも正直な気持ちを綴っているピートの文面が、読んでてめちゃくちゃ気恥ずかしくも可愛かったので(*^_^*)そういう一面をお知らせしたかったのと、
後は【Big Brother編】を書くに当たって、どうしてもこの時期の2人の結びつきを避けて書くことは難しいと思ったこと、
そして、ピートの周囲には、どうも有名人と無名人とのカップルにありがちな片方に対する偏見だけではなく、ピート自身も相変わらず誤解されてる部分があって、
巷に流布している様々な2人のエピソードも、実は、ピートのあの頃の精神状態が原因で起こったことも多々あるという事実を伝えるとともに、
ピート自身がそのことにすごく心を痛めているということを知ってもらいたいというのがあったからです。
とは言え、
私の方から意図的というか、恣意的な書き方で皆様の感想を誘導したくはないので、ここはまた、ピート自身の言葉を使って書き進めていく方法を取っていきますね。
それによってどう思われるかは、それこそ、皆様次第。
でも、基本今回の記事は2人のラブストーリー。
そして、そんな燃えるような恋をしても、ピートとマイケルだけでなく、等しく誰の身にも時の流れは容赦なく襲ってくるということ。
それが、私個人の感想であることを、最初に付け加えておきたいと思います。
では、どうぞ。
神よ、オレはこの幸運、このめぐり合わせに感謝する。
“運命”がオレ達を一緒にしてくれたから。
――ロンドンにいた間、
オレはコベントガーデンにあるレストラン、“ジョー・アレン”によく行っていた。
オレはそこにいる人々が好きだ。サービスも好きだ。
そこは、まるでオレの部屋のようだった。
オレは、実のところあまり食べないし、あまり出かけない。
だが、それでも外食する時は“ジョー・アレン”がオレのお気に入りの場所だった。
そんなある夜のこと、
26番テーブルに座っていたオレの人生は、そこで永遠に変わったのだ。
オレはある友人と一緒にいた。それは、遅い時間だった。
オレ達は笑い合っていて、やがて見上げるとそこに彼がいた。
彼の名前はマイケルだったが、けれど、オレはその時はまだ、彼の名前を知らなかった。
オレは彼について、何でも知っていたわけじゃない。
だが、オレにはわかっていた。
それが自分が必要とした、自然界の力のように。
マイケルはレジのところに立っていて、お金の計算をしていた。
彼は、オレが見ているのに気付かなかった。
何かがオレに起こった。
オレには理解出来ない、何らかの繋がりがなされたのだ。
オレは前世を信じている。
だから、多分、他の人生の別の形でマイケルを知っていたんだと思う。
そういうわけで、オレが彼に出逢った時、それは完璧な認識に基づくフラッシュのようなものだったんじゃないだろうか。
キャノンボール。
アンタらが考えつく限りの決まり文句だ。
オレは初めてマイケルに会った時、彼に話しかけなかった。
オレは、自分がそこにいたのを彼が見たとさえ思っていない。
だが、その瞬間からオレの空想が始まった。
そして、そんな空想をしながら、オレはそのエネルギーを感じ、注ぎ込むために、ジョー・アレンに行くことが自分の人生の全てのように思えた。
やがてオレは、気違いのようなその週を清算した。なぜなら、オレはパートナーのいる人間だったから。
オレは、次に友人とジョー・アレンに食事しに行った時もそこに座り、また同じような繋がりを感じた。
オレは彼の顔を見つけた。
オレはこの男を知っていた・・・。
たとえ、まだオレが彼の名前を知らなかったとしても。
オレは少女のような突撃はしない。オレはティーンアイドルに夢を抱かない。
それは、オレが10代だった時の話ではなく、オレが“男”になった時の話でもない。
そして、この感じは、レストランのレジにいる男の外見に感じていたものでもなかった。
オレは既に、そんなものを越えていた。
だが、オレは、彼は自分を見ていないんじゃないだろうかと思って怯え始めていた。
オレがこの、見知らぬ人間からエネルギーを感じる必要があったからといって、一体どれぐらいジョー・アレンで夕飯を食べたんだ?
さぁ、わからないね。
だが、オレのケツが彼を見るために座った四角いシートの形になるまで、オレはそこに座っていただろう。
そして、彼がそこにいないと、オレの心はここにあらずだった。
彼に会えない時、オレの心は、夜空にぽっかり空いた穴のようだった。
リンは、オレがそこで取り憑かれている男の顔を見るためにジョー・アレンまでやって来て満足したようだった。
「オレに気付いて・・・オレに気付いて・・・オレに気付いて・・・。
オレを見て・・・オレを見て・・・オレを見て・・・」
オレは、心の中でそう叫んでいた。
こんなことが続いていた頃、オレはテレグラフ誌の表紙を飾った。
オレは全然知らなかったんだが、
オレが26番テーブルで四角いケツになっていた時、ある男がその写真を見て、マイケルと何か関係があるんじゃないかと思ったらしい。
それで彼に話し、そのことについて聞いたそうだ。
“マイケルの新しい彼氏”――それは、誰かがページのトップに書きなぐったもので、雑誌から引き裂いてジョー・アレンのスタッフボードにピンで止めていたのだと、彼は後でオレに話してくれた。
オレがそのことをもっと早く知っていれば、オレのケツはすごくラクだっただろうな。
そして、オレ達が初めて話をした時、オレは震えていた。
40代の一人の男が、ティーンエイジャーと同じくらい怯えている。
オレは、マイケルのために自分の電話番号を書き留めた。
――やっと、彼の名前がわかった。
だがオレは、彼の番号を間違えて書いてしまった。
オレの心は、オレの指より震えていたのだ。
全神経を注いで、オレはケタを間違えた。
けれど・・・それは夜のことで、それはハプニングだった。
ちょっとしたこと。暗雲ではない。
だが、同じ感覚だった。
これが、そうだった。
スパンダー・バレエの歌で『Through the Barricades』という曲がある。
マイケルとオレは、それがオレ達のことを歌っている曲だと冗談を交わす。
なぜなら、それが荒野で育まれるある愛についての詩を歌っているからだが、オレ達のそれは、けれど、ゴミ捨て場で育まれた。
街の、ジョー・アレンの外の、汚らしいゴミ捨て場で。
レストランの中の慌ただしさや喧騒や人々の群れから離れて、
オレ達は本当に、初めて話をしたのだ。
暗くて高くて狭い、そこは、静かで荒んだ通りだった。
ネオンもなく、レストランも会社もない。
切り立ったレンガ塀の間の一本道、その中のゴミ捨て場で。
「オレはパーティに行く予定なんだ。良ければ一緒に行かないか?」
それは質問だったのか、懇願だったのか、
申し込みだったのか要求だったのか、オレにはわからない。
けれど、オレはとうとうここまで来た。
そして、マイケルは「ノー」と言った。
彼は休憩中で、あまりに忙しかったから。
彼は仕事に戻らなけりゃならなかったので、「ノー」と言った。
オレは、またもや怯え、拒絶され、はみ出し者の子供のようになった。
そこで、オレは取りあえずパーティに行った。
だが、オレは焦点が合っていなかった。
マイケル・・・マイケル・・・マイケル・・・。
結局、オレはそこを出て家に帰らざるを得なかった。
やがてオレは、言い方を考えた。
それは午前3時だった。オレはシャフツベリー通りにいて、仕事を終えたマイケルと逢うことにした。
オレ達は落ち合うことに同意し、ソーホーにあるラウンジ・シャドウに向かい、見上げると雨が降り出していたが、オレは中には入らなかった。
オレはマイケルが道に迷ったり、気が変わったり、怖気づいたりした場合に備えて、冷えと湿気の中をドアマンのように立っていたのだ。
オレは彼を知る途中だった。
オレは、まだ彼を失いたくなかった。
それから、オレ達は中に入って話をし、移動した。
夜明けの朝食をとるために、オールドコンプトン通りにある“Balans”で、ひと組のカップルのいる角の辺りで。
オレ達は6時頃・・・多分、その後ぐらいまでそこにいた。
オレの2人の友人は、オレと一緒にいたこの男が連続殺人犯ではないことを確認するために、そこで見張っていた。
だがオレは、既にそれを感知する能力が自分にあることを、人生の中で学んでいたと思う。
オレは、マイケルを知っていた。
その朝は寒かった。
灰色でない銀色の、都会の空。
オレは朝日が昇ることなど気にしなかった。
オレは、このまま夜が続いて欲しかった。たった今会ったばかりのこの男と、話をするのをやめたくなかった。
束の間を維持しなければならなかった。
「オレのところへ戻ってきてくれるか?」
オレの人生は、一夜限りのものなんかじゃない。
オレは、既にマイケルが結婚をするつもりはないということを見分けていた。
けれどそれは、今回のことを曖昧にするということではなかった。
オレ達は24時間の中だけで始まり、経過があり、終わるということをするつもりはなかった。
オレは24年欲しかった。24の人生も。
オレは、その瞬間を掴まえた。
オレ達は、サウスロンドンのオーバルにある彼のアパートへ行った。
そこは小さなフラットで、一つしかベッドルームがなかった。
そこはオレの世界じゃなかったが、いずれにしろオレは自分の妄想から出て、外の世界にいた。
オレは、彼のものだった。
オレは、ホームに戻ってきたのだ。
オレ達は6日間そのアパートにいた。
6日の夜と、6日の昼。
オレは着替えを持っていなかった。メイクアップ用のバッグは持っていたが、だから、決して快適ではなかった。
アンタらは、マジで恋に落ちたことがあるか?
アンタらはそれほど深く、早く、誰かとわかり合うことが出来るか?
イエス、
もしアンタらがバーンズDNAを持っているなら。オレは信じる。
オレの父と母は2人が出逢った時は、時間などなく、お互い母国語でもない言葉で話さなけりゃならなかった。
彼らは世界大戦と向かい合わせの場所にいた。
だが、彼らは、そのグローバルな愛がお互いの次の50年に繋がっていくものだということをわかっていた。
彼らはそのチャンスを生かした。
そして、今、彼らの内の一人がいなくとも、まだお互いを愛しているのだ。
マイケルとは、
彼を愛するのは簡単なことだった。
なぜならオレの両親のように、オレは彼に会う前から彼を知っていたと信じているから。
彼のアパートで、オレは、彼の手や、足や、腕を知っていたことを理解した。
オレは、それを全部、以前に見ていた。そして、全部、感じていた。
もう一つの世界か、もう一つの時で?
オレにはわからない。
だが、そのどれもがオレにとっては新しいものではなかった。
全ては正しかったのだ。
とは言え、
オレ達が一緒に籠っていた6日間は、全部がのんびりしたおのろけ話ばかりじゃあなかった。
オレは、あまりにも芝居がかっていた。
パニックがあまりにも多くの時間、オレを襲った。
オレは、マイケルがタバコを買いに店に行くだけで、自分を見失った。
あふれ出る涙の川。
痩せた、ホモの猫のように、彼の部屋のドアを引っ掻く。
彼はどこ?なぜ行ってしまった?なぜ、帰ってこない?
そして、彼は戻って来るのか?オレは、もう彼を失ってしまったのか?
アンタは彼のアパートにいる。
そのクソったれなドアのキーを持っているのは彼だ。
もちろん、彼は戻ってくる。
誰か、このバカを落ち着かせてくれ。
なのに、涙はまだ流れ、すすり泣き、怖がっていた。
寒さと吐き気は彼がキーを外し、オレの世界に戻ってきた時にやっと緩和され、
そして、オレ達は再び一緒になったのだ。
オレ達は2人共、その、初めて一緒にいられる大切な時を過ごすために、沢山のものを断った。
オレは、ミーティングも、アポも、友人の誘いも断り、マイケルは仕事のシフトを全部キャンセルした。
ショーもなかった。
オレ達は幻想の部屋を作りあげ、『キャバレー』とデヴィッド・ボウイのビデオを観ていた。
オレ達は、お互いを見つけたのだ。
スパンダー・バレエと紙くずかご。
それは、死ぬまでオレを笑わせ続けるだろう。
だが、他の歌もまた、同じようにオレの人生を区切り、色づけ、形作ってきた。
それらの歌は、オレが聴いて知っていたり、たとえそれがわかるまで年月がかかったとしても、何かを意味していたということで知っていたと思う。
オレが知っていた歌はオレが歩んで来た人生のある日や、オレ自身についてを歌っている。
ブロンディのデビー・ハリーの歌、『Dreaming』はその内の一つだ。
それは、オレがマイケルを見つけたことを、歌っているのだ。
だがオレは、一週間以上オーバルの公営アパートに泊まることが出来ただろうか?
それ以上メイクもしないで。
それに、オレのルーツであるショーもなしで。
とにかく、オレとマイケルは生活を主要にし始めた。
そして、オレ達は真っ先に始めるつもりだった。
オレは自分の家に帰ったが、すぐに、それがもう自分のものじゃないと感じてしまった。
マイケルは週末にやって来た。
彼は、もう二度と離れなかった。
オレは知っているのだが――彼が、オレに話したから――オレは、マイケルが友人と電話で話をしていた時、ソファで彼の隣りに座っていた。
その友人は彼にオレから離れるよう言ったのだ。
彼らはそれが雑誌やレコードカバー上だけの奇態だということを知っていたので、オレを掴まえるまではしなかったが。
それは、タブロイド誌のゴシップ記事の名残だ。
マイケルはオレより若く、とてもハンサムだ。
彼はかしこい。すごくかしこい。
そして、マイケルの友人は彼がオレよりすごくなるだろうと言った。
マイケルはジョー・アレンの仕事を辞めた。
それで、オレ達は本当にお互いのことを知ることが出来たんだ。
だが、皆が彼に言った。
お前の家をあきらめるな。アパートを出るんじゃない。
そのためマイケルは、しばらくそれをそのままにしておいたように、オレも一カ月間考えた。
けれど、その頃にはオレ達は、彼のためにオレの顔を変えたかったくらい完璧だった。
それで、彼はアパートに行った。
マイケルは、彼が取っておいた時間より10分以上そこに行っていることはなかった。
オレ達は自分達の家と、自分達の幻想と、自分達の世界と共に暮らしていた。
オレは他人が思うように、叫んだり投げたりすることを恐れて生きてはいない。
オレは、自分であることや、自分が欲しいものに妥協しない。
マイケルとオレは触角型だ。
オレは、彼に触りたい。オレは歩いている時、彼の手の温かさが欲しい。
道路を渡るのを待つ間、オレの指は彼の肩甲骨を感じていたい。
オレは、手を組み腕を組み、オールドコンプトン通りを歩く同性同士のカップルを見たことがない。
彼らはその通りの終わりに達する瞬間、見つけられるのだ。
アンタらは自分の感じ方や生き方を、製図のように変えることが出来るか?
何で、アンタらは自分がいる地図のグリッド次第で変わるんだ?
そう、マイケルとオレはそんなことはしない。
オレ達は沢山歩く。そして、もしオレ達が互いに触りたければ、そうする。
それなのに、どうしてオレ達には人が期待しているかも知れない騒ぎが起こらないんだ?
オレは、それが自分達がお互いに感じているものの、もう一つの表明だと思っている。
オレは、人々はバカじゃないと思う。
彼らが危害を加えることが出来ると思うのは、物に攻撃する時だけだ。
そして、オレは何となく考えるのだが、あるレベル上では人は、オレ達に危害や損害を与えることが出来ないだろうという事実がある。
それは、オレ達が健全だということだ。
オレ達はあまりに健康で、あまりに仲がいい。
マイケルとオレは、幻想の中で生きている。
そして、他のどんなバカ共にとっても休むことはとても健全だ。
オレが、サポートシステムを利用したのは今回が初めてだった。
オレ達は、まさにお互いがピッタリ合っていた。
身体的にオレはマイケルと触れ合う。
それは全然不格好じゃない。
それは、バレエのようにとても優しく、優雅で、滑らかで、全てがフィットしていた。
人には、多少のスペースが必要だというが、マイケルのことはまだ、言葉に変換出来た。
――彼は言う。
自分達は全てのことを話すことが出来ると。
笑い、泣き、口ゲンカし、店に行き、本を読み、映画を見る・・・。
多くの人々には2人以内の間でそれは起こるが、オレ達もマジで他の誰も必要ではなく、要求もありはしなかった。
そうして、その頃のオレは、やがてますますサポートシステムを必要とするようになった。
――イタリアでの闘病生活だ。
さて。
ここからは、前回の【整形編】に書いた通り。
ピートは、ポリアクリルアミドのせいで顔面崩壊を起こし死にかけたところを再建手術で九死に一生を得、その間をマイケルの献身的な看病のおかげで何とか生きながらえます。
そして、その快復途上で、あるTV番組から一本の出演依頼の電話をもらったところから彼の再生物語が始まるわけですが、
それは3週間にも及ぶ脱落形式の勝ち抜き同居生活で、ピートはお金が入り用だったためそれを引き受けるものの、彼がそれに出演するにあたって最も辛い問題が一つありました。
それは、マイケルと離れなくてはならなかったこと。
まさに大恋愛のさなかにあったピートにとって、それは精神に異状を来たすほど、厄介な影響を収録中に及ぼしたのです・・・。