( 「息子の無念を晴らしたい」。隊員の遺影を持つ両親。父親は2009年に57歳で病死した=2005年1月撮影)
海上自衛隊の隊員が自殺したことを巡る裁判で、国が「すでに廃棄した」と説明してきたいじめに関する内部調査の文書について、海上自衛隊は、2012年6月21日夜、緊急の会見を開き、文書が見つかったと発表するとともに、「誤った説明をしてきたことをおわびしたい」と陳謝しました。
海自いじめ自殺、破棄したはずのアンケート存在
2004年に海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」の元乗組員(当時21歳)が自殺した問題で、海自は21日、これまで遺族に「存在しない」と回答していた、いじめの有無を調べた他の乗組員へのアンケート結果が見つかったと発表した。
アンケートは海自の調査委員会が乗組員190人に対して実施。海自はこれまで、「調査報告書をまとめた後に破棄した」とし、遺族の情報公開請求にも存在を否定してきた。
遺族は06年、自殺は先輩によるいじめが原因だとして、国などに損害賠償を求めて提訴。東京高裁で行われている控訴審で、1審で国側指定代理人 だった3等海佐が、「海自は資料を隠していた」とする陳述書を提出したため、海自が再度調べたところ、横須賀地方総監部で20日、アンケートの原本約 370枚がとじられたファイルが見つかったという。記者会見した杉本正彦海上幕僚長は「誤った説明をしてきたことを心からおわびする」と陳謝した。
この裁判は2004年、海上自衛隊横須賀基地所属の護衛艦で勤務していた21歳の隊員が自殺したことを巡り、「いじめが原因だった」として遺族が国などを訴えたもので、1審は合わせて440万円の賠償を命じていました。
このいじめ事件を巡っては、自殺直後に隊員へのアンケート調査が行われていましたが、国はこれまで「文書はすでに廃棄した」などと説明してきていたのです。
この文書について、海上自衛隊トップの杉本海上幕僚長が
「再度、探したところ見つかった。これまで誤った説明をしてきたことについておわびしたい」
「文書は、横須賀地方総監部にあるキャビネットの中で6月20日に見つかった。2011年に退職した隊員の私物ファイルに収められていた。」
などと説明し、
「文書は存在しないとしてきた原因について厳しく調査したい」
と述べているのですが、こんなん、隠していたに決まっているではないですか。
だって、本来、このアンケートは海自の規定では報告書にまとめた時点で破棄する決まりだったそうで、この海上自衛隊のトップは、6月19日には「決まりに従って破棄した」と記者会見していたのです。
それを、記者会見の翌日の20日にアンケートが見つかったんですぅ、とさらに21日に記者会見するだなんて、どれだけ恥知らずなんでしょうか。
結局、2審の裁判で、
「国は虚偽の主張をしている。いじめに関する内部調査の文書が存在する」
という現役の自衛官の陳述書が遺族から提出されて、もう隠せなくなったので出してきたわけです。
このアンケートはまさに辛うじて生き残っていた「生き証人」です。アンケートを報告書にまとめる段階で、都合の悪い部分は捨象されてしまっているに違いないのです。原資料は実に証拠価値が高く、だからこそ、海自は隠蔽したのでしょう。
海自の中では公然の秘密であったであろうこのアンケートの存在を告白した自衛官に必要とされた苦しみと勇気はいかばかりだったでしょう。なにしろ、一審では国側の指定代理人だったわけで、国から見れば裏切りです。
しかし、国の隠ぺいを知っていてそのままにすることができず、苦悩し、遺族にご連絡して書面を作成したのでしょうから。
ところで、重要文書の破棄といえば、沖縄密約文書事件があります。
1972年(昭和47年)の沖縄返還の際に日本とアメリカが沖縄返還の際に、本来はアメリカが支払うべき400万ドルなどを日本が肩代わりするとする密約を交わしたとして、 元毎日新聞記者の西山太吉さんや作家の澤地久枝さんなど原告25人が、2008年に外交文書を公開するよう求めていた裁判で、2012年9月29日、2審の東京高等裁判所は、文書の開示と慰謝料の支払いを命じた1審の判決を取り消し、元記者側に逆転敗訴の判決を言い渡しました。
この裁判で、外務省と財務省は、調査の結果、文書は残っていなかったと主張しましたが、1審判決は2011年4月、米側公文書や吉野文六元外務省局長の法廷証言などから、密約の存在を認定。「政府にとって秘匿の必要性や重要性が高い文書 で、存在していないとは認められない」と判断し、国に文書の開示と慰謝料の支払いを命じました。
ところが、2審の判決で、東京高等裁判所の青柳馨裁判長は、密約があったことをやはり認めたのに、その一方で
「外務省と財務省では文書を隠すという強い意図が働いていて、国の調査で発見されなかったことを考えると、文書はすでに廃棄された可能性が高い」
と指摘して1審の判決を取り消し、原告らの訴えをすべて退けました。
しかし、今回のいじめ自殺のアンケート事件を見たら、破棄したといっていてもあるかもしれませんよ、密約文書。
沖縄返還密約事件 TBS日曜劇場「運命の人」 最終回終わる 意義ある作品だった
沖縄返還密約文書開示請求訴訟 原告ら逆転敗訴 外務省が文書を隠すか捨てるかしてしまった!
(記者会見する原告ら。一番手前が西山太吉氏。真ん中が名作「密約」の著者澤地久枝さん)
ところで、秘密保全法が今国会に提出され、「折しも」発覚した在日中国大使館の1等書記官をめぐる情報漏えい疑惑に絡んで、この法律の制定を求める声が高まりました。
しかし、すでに自衛隊法で防衛秘密漏洩は懲役5年、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」でアメリカ関連の特別防衛秘密は懲役10年とされます。
秘密保全法を新たに作ることで公務員による今回のような勇気ある証言はますますしにくくなります。しかも、この法律は大学などの研究機関や民間企業も対象にしているので、国民が知りたい情報がますます表に出にくくなってしまいます。
他方、「国民の知る権利」を明文化した情報公開法改正案は、たなざらし状態が続いています。福島原発事故では、経産省原子力安全・保安院や原子力安全委員会などの情報隠しや、やらせタウンミーティングなどが次々に明らかになっています。
今、日本にとって必要なのは、国民が知りたいけれど国は隠したい秘密を秘匿する保全法ではなく、公務員に大事な情報を破棄させないために情報破棄・隠匿に厳罰を科して保全し、国民に公開するための法律、つまり、情報保全・公開法なのです。
航空自衛隊の次期主力戦闘機へのF35選定と秘密保全法 官僚の都合で侵害される国民の知る権利
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21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/上 海自護衛艦の後輩いじめ賠償 /神奈川
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/中 後輩「指導」は暴行恐喝 /神奈川
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/下 隊員の「人権無視」今も /神奈川
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/上 海自護衛艦の後輩いじめ賠償 /神奈川
海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」で、先輩の後輩いじめが日常化していた。自殺した隊員の遺族が国と先輩の元隊員を相手取り、国家賠償を求めた訴訟の判決が26日、横浜地裁で言い渡される。21歳だった隊員の「無念」は晴れるか。【網谷利一郎】
◇裁判官、別の自殺も指弾 「先輩は紙クズ以下」
「他の後輩隊員の自殺も起きている。もっと考えなきゃだめじゃないか」
05年1月、横浜地裁横須賀支部の初公判で、後輩への暴行と恐喝の罪に問われた2等海曹(事件当時34歳)に対し、裁判官が起訴内容以外の暴行に言及し指弾した。隠蔽(いんぺい)されていた自殺が、裁判官の言葉で発覚する異例の展開だった。
その傍聴席の最前列に、遺影を抱いた両親がいた。長男の1等海士(当時21歳)が04年10月、鉄道自殺した。遺書には2曹の名前を挙げ「悪徳商法みたいなお前は紙クズ以下だ」と悲痛な訴えが残されていた。
自殺した隊員は宇都宮市出身で、高校卒業後にカナダに1年間留学。「英語力を生かし国際貢献したい」と海上自衛隊に入り、03年12月、護衛艦「たちかぜ」に配属された。護衛艦隊の旗艦だった。
そこにいたのが先輩の2曹で、同艦勤務7年の最古参だった。「サバイバルゲーム」と称し、持ち込みが禁じられているエアガンで後輩たちを撃った。現場は「CIC」(戦闘指揮所)と呼ばれ、作戦遂行で最重要の場所だった。
裁判官は「暴行は日常的で事件は氷山の一角」としながらも、初犯だったとして懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月、確定)だった。2曹は懲戒免職となり、2年後に自己破産した。
警務隊は04年11月、2曹を暴行容疑で逮捕した時、匿名で発表した。毎日新聞が「重大事件で匿名発表はおかしい」と報じ、照屋寛徳衆院議員(社 民)が国会で追及すると防衛庁(当時)は「軽微な事案だから」と釈明後、名前を公表した。しかし、背景の自殺は明かさなかった。
■ことば
◇海自いじめ自殺訴訟
04年10月、海上自衛隊横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」に勤務していた1等海士(当時21歳)が東京都内で電車に飛び込み自殺した。両親が06年4 月、自殺は先輩だった元隊員のいじめが原因だったとして、国と元隊員に約1億3000万円の国家賠償を求め、横浜地裁に提訴。被告側は「いじめと自殺の因 果関係はない」と主張している。
「息子の無念を晴らしたい」。隊員の遺影を持つ両親。父親は09年に57歳で病死した=05年1月撮影 |
毎日新聞 2011年1月18日 神奈川版
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/中 後輩「指導」は暴行恐喝 /神奈川
◇エアガン撃たれ青あざ 現職隊員「重い証言」
階級社会の自衛隊にあって、若い隊員が公の法廷で隊を批判するのは極めて異例だ。
「04年夏から先輩(事件当時34歳、2等海曹)の暴行がひどくなった。航海中も停泊中もエアガンで撃たれ、自分も自殺隊員も体や顔に青あざができた」
09年夏、現役の隊員(27)が法廷で証言した。同僚で04年10月に自殺した隊員(当時21歳)には「試験準備で英語を教えてもらった」。先輩の起訴内容となった「パンチパーマを強要され、艦内で正座させられ、エアガンで至近距離で撃たれた」被害者でもあった。
その先輩は入隊歴16年のベテランで、勤務評価は「若手の指導に優れている」。
しかし、法廷では「指導」の実態が次々に明らかになった。19~25歳の後輩数人を標的に、艦内でエアガンと自作のナイフで脅し、アダルトビデオを数万円で買い取らせていた。
先輩は「いじめたが、自殺との因果関係はない。エアガンは遊び感覚だった」と否定した。国側も「自殺原因は風俗遊びでの多額の借金苦」と主張した。
現役隊員らは「風俗遊びは知らない。あったとしても借金苦になるほどとは思わない」と証言。原告側は「先輩は逮捕時約500万円の借金があった。 自らも(別の)先輩に借金の肩代わりをさせられており、自殺した隊員を脅し名義貸しで借金させたとしか考えられない」と反論した。
国側が証人に立てた砲雷長(当時)は、自殺後、若い隊員らに事情聴取し「辞めた隊員と父親に電話した」と証言した。だが、その元隊員(26)は 「父は事件の1年余り前に死亡している。自分も電話を受けていない」と明かした。原告側は「偽証だ」と追及し、砲雷長は「勘違いだった」と証言を翻した。 【網谷利一郎】
後輩いじめに使われたのと同型のエアガンを掲げる原告側弁護士。至近距離でアルミ缶がへこむ威力がある。 |
毎日新聞 2011年1月19日 神奈川版
21歳の無念:海自いじめ自殺訴訟/下 隊員の「人権無視」今も /神奈川
◇「国防秘」せめぎ合う裁判 幹部ら見て見ぬふり
4年余の裁判は「国防秘」で激しいせめぎ合いとなった。
原告弁護団が入手した海上自衛隊横須賀地方総監部の調査報告書は、黒い線の塗りつぶしが目立った。証拠開示で文書提出命令を求めると、国側は「国の安全に関わる」と反対。東京高裁で08年2月に認められるまで1年半かかった。
04年春に退職の元隊員(26)らは「エアガンによる2曹(当時)の後輩いじめを退職時、上司に伝えたが、放置された。幹部たちは見て見ぬふりをしていた」と証言した。
被告の元2曹(39)は法廷で「自分も指導名目で2、3人の先輩から殴られた。先輩から『金を貸して』と約80万円踏み倒された」と隊内のいじめの連鎖を認めた。
04年10月の隊員自殺後、自衛隊は各総監部に部外カウンセラーの相談窓口の設置など対応策を取った。だが、約25万人の自衛官の自殺者数は07~09年度で、83人、76人、80人(防衛省調べ)。自衛官の自殺率は、一般国家公務員よりも高い。
護衛艦「さわぎり」の艦内で99年、隊員(当時21歳)が自殺。両親が訴え、福岡高裁で08年8月、上司のいじめを認め、国に350万円の賠償を命じる 逆転判決が出た。現在も空自隊員の自殺訴訟(静岡地裁浜松支部)など、全国で裁判が続く。昨春、自衛官人権裁判全国弁護団連絡会(浜松市)が発足した。
PKO(国連平和維持活動)など自衛隊の国際出動は広がっているが、原告弁護団の岡田尚団長は「若い隊員の人権を無視し、旧軍隊の新兵いじめのような体質が今もある」と指摘する。
判決は26日午後1時半。原告で自殺した隊員の母親(56)は「息子の無念を晴らし、名誉を回復する公正な判決を期待したい」と願いを込めた。【網谷利一郎】
「たちかぜ」は除籍後、ミサイル標的艦となり、09年夏、海中に没した=原告弁護団提供 |
毎日新聞 2011年1月20日 神奈川版
Keiさんは北朝鮮と中国の事をどう見ていますか?
まぁ、大半の日本人は、北朝鮮と中国の行いを怪しからんと思っているでしょうが、大日本帝国も、核を開発していたり、勢力圏を拡大したりもしていました。 北朝鮮と中国への牽制とまた、来るであろう自然災害に備えて自衛隊は必要ですが、日本は大丈夫なのかなぁ…と考える事がありますが、どう思いますか?
福沢諭吉が朝鮮人差別をしていたのは、「征韓」する際に相手を人間と思うと殺せないからだという説を聞きました。北朝鮮との戦争の可能性が有ることで隊員にその準備をさせている何者かの意向が感じられて不気味です。
私が組合理事をしているマンションの管理人氏の中で海自を定年退職された方が居ましたが、真面目で仕事が出来てコミュニケーション能力も高い良い方でした。
ペルシャ湾での機雷掃海や南極にも派遣されており、厳しさを超えて死人が出る程の訓練や虐めのことなども話されていまして、私が興味深々で色々と質問をすると、「言えないことが沢山有るよ。」とそれ以上は話してはくれませんでしたが。
法律で縛られているのだとは思いますし、機密事項は勿論駄目でしょうが、内部に問題について自衛隊員の本音をもっと聞くことが出来れば、より先進的な組織に変化して行くのではないかと思います。
アへはそんなの嫌でしょうけどね。
此れでもかと言わんばかりに、朝鮮人を批判していました。 そりゃ、北朝鮮や中国がお世辞にも法治国家ではないのは、一目瞭然ですが、翻って、日本は法治国家だと、胸を張って言えるのか甚だ、疑問です。
北朝鮮や中国を非難したいなら、まず、此の国自身が、基本姿勢を改めた方が良いと思います。
かわいそうに。
暴力沙汰が絶えないのは、旧日本軍の体質を引きずっているからなのか、それともこういう軍隊(類似)組織には暴力が付き物なのか。
実戦しない自衛隊ですらこうなのだから、最前線に配備される米海兵隊隊員が沖縄でさまざまな事件を起こすのも当然だろう。
真っ当な神経で人を殺せないから。
なお、私の身内が数年間、大学事務のバイトをしていた時に元自衛隊員が再就職で結構な人数入って来ていたそうです。何の仕事か聞き忘れましたが、自衛隊→その大学、というルートがあるようです。身内曰く
「なんかねー、自衛隊の人って変。常識が通じない。変なんだよぉ。」
何が変か?
ボキャ貧なので分からんわ w
多分自衛隊特有の価値観、思考回路、行動に謎な部分があった、ということなのだろう。
別にその人たちが悪いんじゃなくて、あそこが世間と隔絶された組織だから、そこにずっといた人たちに違和感を感じざるを得ない何かがあった、ということだと思う。
災害救助に命を賭けて臨んでいる隊員には申し訳ない感想なんだけど。
個々の隊員が幸せを感じられる、風通しの良い自衛隊になることを望みます。主様の言われるとおり災害救助専門隊にしたらいいのに。アヘはそんなの嫌でしょうけどね。
食べて行く為とはいえ、世間とはかけ離れた場所でした。
脱柵も、二度、起こっていました。
自衛隊が必要なのは、分かりますが、もう少しだけ、組織体制が良くなって欲しいです。
当ブログへのコメント注意書きより
あまりお答えできませんがコメントを歓迎しています。 記事に批判的でも一向にかまいませんが、必ず記事を読んでからコメントしてください(笑)。
名誉毀損・プライバシー侵害・わいせつなど違法なもの、人を不愉快にする・品が悪いもの、感情的なもののみ承認しません(URLがある場合、そのリンク先を含む)。
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とはいえ、堅苦しいことは言いませんので、どんどんコメントをお願いいたします!
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行政文書管理は甘くないよ
そして海上自衛隊も腐ってます。憎しみしかわいてこない