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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

原子力規制委員会設置法と原子力基本法の目的にこっそり「安全保障」を入れ、核武装に道を開いた自公民

2012年06月22日 | 人権保障と平和

 

 完全にしてやられました!

 2012年6月20日に成立した「原子力規制委員会設置法」の第1条「目的」には「(原子力の利用は)わが国の安全保障に資することを目的とする」と いう文言が入りました。

 また同法は、付則で「原子力の憲法」と呼ばれる原子力基本法を改正し、原子力基本法第2条「基本方針」に、同じく「安全保障」という文言を書き加えたのです。

 我が畏友津久井進弁護士のブログからこの事態の危険性を解説してもらいましょう。


『原子力基本法』があぶない

 『原子力基本法』は,戦後間もないころに作られました。
 原爆の惨禍が生々しいころでしたから,原子力を軍事利用しないようにという気持ちを込めて,「民主」「自主」「公開」の3原則を基本方針にしました。

 ところが,6月15日(金)に衆議院に上程された法案(「原子力規制委員会設置法案」)では,この基本方針に,『我が国の安全保障』
という文言を加えることになりました。

 驚いたのは,三党合意ができていたため,それがほとんど議論されないまま可決され,即日通過してしまったことです。

 この改正でどうなるのか?
 原子力利用の目的に,軍事利用も含まれることになるわけで,原子力基本法がくるっと後ろ向いた,180°方向転換ということになるわけです。

 このことで何が問題か?
私の原子力政策に関する主義主張とは関係なく,法律家として,3つの点で大きな問題があると思います。

 第1に,「こんな大事なことを,ちゃんと議論もせずに,ドサクサまぎれに,こそっとやったらあかんやろ」(=国民的議論の欠如)ということです。

 第2に,「細かな法律の“附則”なんぞで,「基本法」のような大事な法律の魂の部分をひっくり返すようなことしたらあかんやろ」(=法秩序の破壊)ということです。

 第3に,「被災地も日本全体もたいへんなときに,軍事利用だとかを考えてる場合じゃないやろ」(=社会状況の無視)ということです。

 

 

 本来、核と原子力は英語では同じNUCLEAR。それなのに、核兵器と違う「平和利用」があるのだと、原子力という訳語を作って、核兵器と原子力発電は全く別物だという建前で来たわけです。その区別がこれでなくなってしまいます。原子力発電でできたプルトニウムを安全保障=核兵器のために使用するという話になってしまいます。

 それにしても、津久井弁護士のブログで私も初めて知ったくらいで、不明を恥じなければいけないのですが、たいへんな事態です。今更ながら調べてみると、この修正法案は6月15日に衆議院を通過するまで、 国会のホームページにも掲示されなかったようです。

 原子力規制委員会設置法が通過した6月20日は、例の音楽・動画のダウンロードに刑罰を加えるという著作権法改正案が成立しており、私はそちらに気を取られていました。世間はオウム真理教の関連の報道で目をくらまされていたでしょう。

 そのほか、この日は競馬法改正案・・災害対策基本法改正案など13の法案をまとめて処理したため、どの法案もまるで議論がなされていません。

 決められる政治=「決めてしまう民主主義」は最低ですね。

 さらに調べてみると、なんと原子力関連法に追加された「安全保障」という文言は、政府が閣議決定した当初の法案には存在していませんでした。公聴会などでの議論もなく、修正協議の過程で自民党が主張し、民主党、公明党がそのまま受け入れたことで付け加えられたのです。

 このやり口は、著作権法改正の過程で急に自民党・公明党が刑罰化の修正案を出してきて全く議論をせずに可決してしまったのとそっくり同じやり方です。

音楽・動画の違法ダウンロードに2年の懲役・200万円以下の刑罰という自公修正案を丸呑みした野田民主党


 藤村修官房長官は6月21日午前の記者会見で、原子力規制委員会設置法の設置目的に「我が国の安全保障に資する」との文言を 盛り込んだことについて「原子力の平和利用の原則、非核三原則は揺るがない。軍事転用の考えは一切持っていない」と述べ、原子力の軍事利用につながるとの 懸念は当たらないと弁解しました。

 しかし、じゃあ、原子力を安全保障に資するように使うって、核兵器にプルトニウムを使う以外に何が考えられるというのでしょうか。そして、藤村官房長官の説明が真っ赤なウソであることは以下の経緯から明らかです。

 まず、もともと、石原都知事(ミスター核武装。橋下市長はここでも同意見)や石破茂自民党元政調会長(娘さんが東電に就職され、同社から多額の政治献金も受けている核武装=原子力の象徴)などのように、核技術と核兵器に使うプルトニウムの製造用に原発を推進し続けるべきだというトンデモ意見は根強くあります。

櫻井よしこ氏、西部邁氏、石原慎太郎都知事・・・核武装のための原発維持論批判 

石破茂自民党政調会長 原発推進は核武装・核抑止力のため 報道ステーションにて



 そして、この法案の修正を主導した、あの核武装論者の安倍晋三内閣の官房長官だった自民党の塩崎恭久議員は

「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない」「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。反対は見たくないものを見ない人たちの議論だ」

と強調し、自公民の協議の過程で反対意見が出なかったというのです。これで、今回の改悪が核武装に道を開くことが目的であることは明らかです。

東京新聞 2012年6月21日 「原子力の憲法」こっそり変更 


 秘密保全法を制定しようと策動を続け、武器輸出三原則を骨抜きにし、宇宙航空研究開発機構の平和目的を削除した野田政権は戦後有数の軍拡政権といえるでしょう。

野田新内閣は軍拡政権 宇宙航空研究開発機構の「平和目的」を削除・秘密保全法案・武器輸出3原則見直し

 「世界平和アピール七人委員会」は緊急要請文を通じて「(核の)軍事利用の道を開く可能性を否定することはできない。国益を損ない、禍根を残す」とする声明を発表しました。 

 だいたい、福島原発事故により原子力安全・保安院がちっとも国民の安全のことなんて考えていないことが明らかになって、原子力規制委員会を作ることになったわけです。

 そのどさくさに紛れて、核兵器保持に道を開く方策をしておくなんて、火事場泥棒どころか、国民の枕元にそっと核地雷を仕込むようなものです。もうテロですよ、これは。

 

 橋下維新の会批判の第一人者、秋原葉月さんはこう言います。

「もし自民党が私怨を捨ててひとたび同じ目的に向かって大同団結に転換したら、一挙に大政翼賛体制(=決められる政治)が整い日本の政治はデッドエンドを迎えることになります」

軍事目的を追加した原子力基本法改正案をさっさと衆院可決した民主党の「決められる政治」


 違法ダウンロードの刑罰化という何千万人という国民の人権にかかわる問題や、核武装という日本全体の平和に致命的な影響を与える問題について、真正面から議論しないで、裏口入学してしまった野田内閣。この後、襲ってくる消費税増税だの、原発再稼働だのという「テロ」で日本が「デッドエンド」を迎えないように、我々ももう跳ね返さないといけません。



 

鈍重そうに見えた野田内閣の極悪ぶり、凶暴性は私の想像を超えていました。

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「原子力の憲法」こっそり変更  

2012年6月21日 07時04分

 二十日に成立した原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更された。基本方針の変更は三十四年 ぶり。法案は衆院を通過するまで国会のホームページに掲載されておらず、国民の目に触れない形で、ほとんど議論もなく重大な変更が行われていた。

 設置法案は、民主党と自民、公明両党の修正協議を経て今月十五日、衆院環境委員長名で提出された。

  基本法の変更は、末尾にある付則の一二条に盛り込まれた。原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基 本法二条に一項を追加。原子力利用の「安全確保」は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行う とした。

 追加された「安全保障に資する」の部分は閣議決定された政府の法案にはなかったが、修正協議で自民党が入れるように主張。民主党が受け入れた。各党関係者によると、異論はなかったという。

  修正協議前に衆院に提出された自公案にも同様の表現があり、先月末の本会議で公明の江田康幸議員は「原子炉等規制法には、輸送時の核物質の防護に関する規 定がある。核燃料の技術は軍事転用が可能で、(国際原子力機関=IAEAの)保障措置(査察)に関する規定もある。これらはわが国の安全保障にかかわるも のなので、究極の目的として(基本法に)明記した」と答弁。あくまでも核防護の観点から追加したと説明している。

 一方、自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」と話した。

 日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹らが創設した知識人の集まり「世界平和アピール七人委員会」は十九日、「実質的な軍事利用に道を開く可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急アピールを発表した。

<原 子力基本法> 原子力の研究と開発、利用の基本方針を掲げた法律。中曽根康弘元首相らが中心となって法案を作成し、1955(昭和30)年12月、自民、 社会両党の共同提案で成立した。科学者の国会といわれる日本学術会議が主張した「公開・民主・自主」の3原則が盛り込まれている。原子力船むつの放射線漏 れ事故(74年)を受け、原子力安全委員会を創設した78年の改正で、基本方針に「安全の確保を旨として」の文言が追加された。

(東京新聞)


毎日新聞 2012年06月21日 22時56分(最終更新 06月21日 23時13分)

 20日に成立した原子力規制委員会設置法の付則に原子力基本法の改正が盛り込まれ「我が国の安全保障に資する」との目的が追加された。このため「原子力の平和利用の原則に反する」との懸念の声が出ている。藤村修官房長官は21日の記者会見で「平和利用の原則、非核三原則の堅持は揺るがず、軍事転用の考えは一切ない」と説明した。【笈田直樹】

 ◇「平和利用」違反の懸念も

 基本法は2条の基本方針で、原子力研究や利用を「平和目的に限る」と明記。民主・自主・公開の原則を掲げている。規制委設置法は付則に基本法を改正する規定を置き、基本法2条に「我が国の安全保障に資することを目的として行う」と追加した。原子炉等規制法にも同様の改正が行われた。

この表現は当初の政府案にはなかったが、自民、公明両党が4月に提出した対案で明記した。日本の高い核技術を潜在的な抑止力としてとらえ、安全保障政策のなかに位置づける考え方が背景にある。20日の参院環境委員会では、複数の委員から「日本が核武装する表明か」と疑問が出た。

細野豪志原発事故担当相は答弁で、平和目的に限定した基本法の条文は堅持すると強調。設置法を提出した吉野正芳衆院議員(自民)は、核物質の軍事転用を防ぐ国際原子力機関(IAEA)の保障措置、原子力安全、テロなどを防ぐ核セキュリティーの3分野を挙げ、「安全保障」とは「これらを規制委に一元化する意味だ」と答弁した。

 基本法の「民主・自主・公開」は、同法が成立した1955年以来、日本の原子力平和利用の根本理念に位置づけられてきた。一方、規制委設置法は15日の国会提出から実質4日間で可決というスピード審議。「安全保障目的」という新たな規定が十分議論されたとは言えず、あいまいさが残った。【笈田直樹】



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6 コメント

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Unknown (中国在住)
2012-06-24 01:34:26
第3に,「被災地も日本全体もたいへんなときに,軍事利用だとかを考えてる場合じゃないやろ」(=社会状況の無視)ということです

というのは、何だか要領を得ない主張です。
国際情勢の視点、隣国の軍備拡張についての何か感じないのでしょうか?
マスメディアも加担者? (Unknown)
2012-06-24 14:58:29
「我が国の安全保障」という文言は、規制委員会に関する塩崎議員が提出した案に、付則による原子力基本法の改正も含めて、明記してあり、こっそりなどではなかった。これは衆議院のウエブサイトに掲載されていた。早くからメディアが注意喚起していれば国民的議論になったはずである。政府の規制庁案を批判するばかりで、対案となった3条委員会案の内容を国民に注意喚起しなかったマスメディアは、もし「我が国の安全保障」という文言が提出されている塩崎案に含まれていることを知らなかったのであれば怠慢であるし、知って触れなかったのであれば、党利党略に加担したか核武装に賛成しているかであろう。
「我が国の」という言葉は非常に不自然で、もし入れるとしたら、「国際的な核不拡散、原子力安全および核防護(つまりIAEAのいう3S:nuclear safeguards, nuclear safety, nuclear security)に資する」という文言にすれば国会審議でのやりとりおよび成立後の政府や成立した案の共同提案者の弁明とも合う。ただし塩崎議員の本心は核武装であろうが。
ホントの話です (浪速姫)
2012-06-25 01:55:26
随分前ですが、生徒に「日本国憲法の三大原則は?」と質問したところ、「持たない・作らない・持ち込ませない」と高らかにのたまいました! 思わず「あのなあ」と言ってしまいました。かれが言ったのは「非核三原則」なのです。
 昨今の状況では、大人のだれかが言いそうですね。「非核三原則」はもう死語なのでしょうか。もちろん「日本国憲法の三大原則」は・国民主権・戦争放棄・基本的人権の尊重です。
最近の政治 (通りすがりの民主主義者)
2012-06-25 12:16:11
最近の自公民+維新の動きを一言でいえば、盗人猛々しいと言うほかない。
ファシスト民主党! (匿名)
2012-06-28 14:16:51
ファシスト民主党!
狭い日本 そんなに~ (村石太ダー&コピペマン&ザード)
2012-12-13 20:23:00
原発 地雷 で プログ検索中です
テレビ 新聞で 自民党 圧勝の支持率ですね。
このままだと 自民が 過半数を 決めて、衆議院を 決めたところは 参議院も 決めるという説もあるとか?
そうすると 自民党の公約の政策を 始める日本ですね。
民主党に関しては ネット見ていると 不人気かなぁ?
少し ホローしたいけれど やめときます。
第3極も 今のところ 議席過半数に なる ことは ない支持率ですね。
第3極で 終結するとしたら 未来の党になるかなぁ
消費税増税反対 TPP反対 脱原発 
脱原発に関しては ある程度の政党は 脱原発かなぁ
オザワさん 岩手県出身 亀井さん 広島出身 滋賀県には 3つ原発があるのかなぁ。
TPPにしても 国防費についても 20年か30年前から 政治で やっていますね。
今すぐ 政策に進むというのも 心の準備が できていない私です。
国防軍とか 老人達に 聞きたいです。
消費税増税も TPPも 失業者が かなりでるのかなぁ?
国の税収(歳入)は やれるのかなぁ?もっと増税~ないと願います。
このままいくと 自民党政策ですね。

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