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小さい記事だったのであまり目立ちませんでしたが、福島第1原発の事故について、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長が2015年1月27日、宮沢洋一経済産業相と経産省で会談し、原発構内のタンクに保管されている汚染水について、浄化処理後でも安易に海に放出しないよう要望しました。
福島第1原発:ALPS処理水、海洋放出やめて 全漁連が要望
毎日新聞 2015年01月27日 19時59分
東京電力福島第1原発構内のタンクに保管されている汚染水について、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は27日、宮沢洋一経済産業相と経産省で会談し、浄化処理後でも安易に海に放出しないよう要望した。
原発で出た汚染水は多核種除去設備(ALPS)でほとんどの放射性物質が除去される。しかし、放射性物質のトリチウムは残り、処理後の水の扱いは決まっていない。タンク増設が廃炉作業の妨げになることを懸念し、原子力規制委員会は今月、ALPS処理水を2017年以降に海洋放出することを国や東電に求めていく方針を示していた。
岸会長はこの日、「漁業者は一日も早く操業再開したいが、こうした(海洋放出の)方針が出ると、風評被害の懸念を上乗せすることになる」と訴えた。宮沢経産相は「関係者の理解なしには行わない方針を堅持している」と答えた。【斎藤有香】
そもそも、皆さんは、今の放射性除去装置ではトリチウムは取り除けないこと、そして、取り除けなかったトリチウムをそのまま含有した放射能汚染水が海に流される予定であることをご存じだったでしょうか。
トリチウムは三重水素のことですが、現在地球上で測定されるトリチウムのほとんどは、過去の核実験により環境中に大量に放出されて残っているものか、または、原子力発電所または核燃料再処理施設などの原子炉関連施設から大気圏や海洋へ計画放出されたトリチウムです。
トリチウムたいていは水として存在し、口・鼻・皮膚から吸収されると、 ほとんどが血液中に取り込まれ、体内のどこにでも運ばれ、水や水素として体の構成要素になります。
上述のようにトリチウムは除去しにくいので放出基準が非常に緩いという本末転倒な状態になっています。また、まれにしか検査されず、検出されても「基準以下」ということになります。
前回の記事で書きましたが、安倍首相が東京オリンピック誘致のために、福島原発は完全にコントロールしていると言い切りましたが、実際には放射能汚染水の処理と管理の問題さえ全くクリアできていません。
2015年1月23日、東京電力は、福島第1原発のタンク内に保管している高濃度汚染水を2014年度内にすべて処理するという当初の目標を断念したことを明らかにしました。
もともと東電は2013年9月、オリンピック開催地決定と言う世界が注目する場で「原発事故はコントロールしている」と大見得を切ってしまった安倍首相から、敷地内のタンクにたまった汚染水の処理を2015年3月末までに完了するよう命じられていましたが、やはり無理だったのです。
東電 放射能汚染水 年度内処理を断念 安倍首相は福島原発事故をアンダーコントロールにしていない
そのうえ、これ以上地下水が原発建屋に流れ込んで放射能汚染水を増やさないための凍土壁計画もうまくいかず、また計画延期が発表されました。
東京電力福島第1原発で、放射能汚染水の増加抑制策として「氷の壁」で原子炉建屋などの周囲を囲む凍土遮水壁の工事が遅れ、東電や経済産業省が計画した3月からの運用開始が難しくなった。東電が2日、作業員の死亡事故で中断していた凍土壁の準備作業が半月から1カ月程度遅れる可能性があると明らかにした。工程の見直しは避けられない状況だ。
東電は当初、1〜4号機の周囲全てで凍結を開始する方針だったが、準備が進まないため変更し、3月時点では西側部分から始めるとしていた。
だが西側も凍結管の設置が遅れ、1月29日時点で地中に埋設できたのは567本中268本。工事は開始から既に半年が経過している。 [時事通信社]
このように、福島原発内には放射能汚染水がどんどんたまる状態なので、2015年1月21日、原子力規制委員会は2017年からトリチウム入りの放射能汚染水を薄めて海に流すことを決めてしまっているのです。
規制委:「17年以降、海洋放出を」処理済みの汚染水
原子力規制委員会は21日、東京電力福島第1原発の廃炉作業に伴うリスク低減目標を大筋で了承した。増え続ける汚染水について、多核種除去設備(ALPS)でほとんどの放射性物質を除去した後、2017年以降に海洋放出することを国や東電に求めていくとしている。しかし、いったん放射性物質に汚染された水の海洋放出は地元漁業関係者の反対が根強く、批判を招く可能性もある。
原発敷地内には、汚染水やALPS処理水など約60万トンが、タンク約990基に貯蔵されている。敷地には限りがあることから、規制委はタンク増設が廃炉作業の妨げとなることを懸念していた。
ALPSでは放射性物質トリチウムは除去できないが、この日の規制委定例会で委員から海洋放出の前倒しを求める意見も出た。田中俊一委員長は記者会見で「安全上は問題ないと判断している。タンクをむやみに増設することで労災事故が起きている」と述べた。
リスク低減目標は、19年までに取り組む課題を、放射性廃棄物や地震津波対策、労働環境など6項目に分けて整理した。【斎藤有香】
2015年01月22日 00時30分 毎日新聞
この決定に対して、地元漁協が「風評被害」が出ると注文を付けたというのが冒頭の新聞記事なのですが、風評被害とは本当は被害・損害が出ていないのに出ていると噂が立って漁業に従事する方々が言われのない損害を被ることです。
しかし、放射能汚染水を垂れ流して起こる被害は風評被害ではありません。
本当に日本に住む人々、さらには世界の人々が被曝します。そして、実際に健康被害をこうむる可能性があるのです。
以前、福島原発事故で海に出てしまったセシウムは広島に投下された原爆152発分であること、また、そのセシウムは海流に乗って全世界に迷惑をかけた後、30年後にまた日本に戻ってくるという話を書きました。
東京湾が放射能汚染され続け2年後には1キロ4000ベクレルになる!まるで収束していない福島原発事故
その結果、海では魚介類が放射能汚染され、生物濃縮が進み、いまだに基準値以上の魚が毎日のように陸揚げされています。東電は福島原発の専用港だけの話にしたがっていますが、2012年末には原発から遠い北海道の室蘭沖でも、漁獲されたマダラからも、国の基準値の上限にあたる1キロ当たり100ベクレルの放射性セシウムを検出されており、魚介の汚染範囲の広がりが懸念されているのです。
福島第一原発から流出し続けているセシウム汚染水17兆ベクレル 拡散し続けている放射性物質
さらに、もっと恐ろしいシミュレーションが発表されていて、京都大学防災研究所のグループは、福島第一原発の事故で関東に降った放射性物質などの調査データを使い、東京湾に流れ込んで海底にたまる放射性セシウムを、事故の10年後まで予測するシミュレーションを行いました。
その結果、放射性セシウムの濃度は2014年の3月に最も高くなり、荒川の河口付近では、局地的に泥1キログラム当たり4000ベクレル!に達すると推定されるということです。これは、2012年1月に福島第一原発から南に16キロの海底で検出された値とほぼ同じです。
比較的濃度が高くなるとみられる東京湾の北部では、数年後、福島直近の海と同じく、平均すると海底の泥1キログラム当たり300ベクレルから500ベクレル程度と計算されたということです。
つまり、今も東京湾には関東平野から、あるいは、福島原発から黒潮とは逆方向の海岸流でセシウムが流れ込み続けており、その結果、原発事故直後ではなく、昨年2014年3月に東京湾のセシウムが局所的には1キロ4000ベクレルにもなる最大の放射能汚染状態になるということですね。
この状態が本当に起きているか、もう誰も結果を発表していません。
究極の環境破壊で世界中にヒバクシャを作る福島原発事故 そしてセシウム137は30年後に戻ってくる
ちなみに原爆症認定集団訴訟の全国各地での判決で認定されたことですが、放射線被曝によるガンを含む多くの病気にはしきい値(これ以上少量の放射線だと人外に影響がない値)がありません。
つまり、どんなに弱い放射線被曝でも病気が出る可能性があるのです。
また、子どもは放射線被曝への感受性が強く、30歳の大人と比較すると15才未満の子どもは3〜4倍の発がんリスクがあるとも言われています。。
福島原発事故から1年 原爆症訴訟がまた勝訴! 裁判で確定した放射線に起因する全病名はこれだ
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上述のように、原子力規制委員会は、トリチウム入りの放射能汚染水を日本の海に流すことを決めました。しかし、その我々をとりまく海にはすでにセシウムやストロンチウムなどの放射性物質が大量に存在しているのです。
それでも、生じる被害は生産者に対する「風評被害」であって、消費者に対する実際の健康被害は生じないと言い切れるでしょうか。
大阪地高裁を筆頭に全国各地の裁判所で国が次々と負け続けている原爆症訴訟の中で、放射線に被曝した後の後遺障害は被曝後何十年経っても、体中に、ガンだけではなく肝障害・腎障害・血液や心臓の障害などさまざまな病気として人体に致命的な被害を与えることがわかっています。
放射能汚染水はたまり続けるから海に流すしか方法がない。しかし、それでは日本に住む我々が必然的に被曝する。
まさに原子力発電所はいったん重大事故が起これば、人間の力では取り返しがつかないのです。
だから、せめてもう原発を再稼働してはなりません。新たに建設するなどもってのほかです。
我々には原発、ひいては放射能が手に余ること、コントロールできないことを直視して、少なくとも今後の被害をできるだけ抑えることだけを考えるしかないのです。
人間は身の程を知り、自然に対してもっと謙虚にならなければ、必ずしっぺ返しを食らうのです。
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追伸
福島原発事故でトリチウムが問題になったのは2011年10月31日。
原発事故後、伐採した樹木が自然発火することを予防するために散布されていた水の危険性が問題になりました。
そこで、当時の内閣府の園田康博政務官が、福島原発5・6号機から出た汚染水の純水をコップに入れて、 報道陣の前で飲み干した!という事件がありました。
実はその水に含まれていた放射性物質がトリチウムなのです。
「東京電力が『飲んでも大丈夫』って言ってるんですから、コップ1杯ぐらい、どうでしょう」と、 記者会見でフリージャーナリストの寺澤有さんが質問しました。
会見後、寺澤さんは
「絶対飲まないほうがいいです」
と園田政務官に言ったのですが、 園田政務官は
「飲めるレベルの水であることを言いたかった」
と飲んでしまったのです。
パパは政務官 福島原発の浄化済み放射能汚染水を飲んじゃった!
その前に公表されていた東電の資料を見ると、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137は「不検出」で、 トリチウムは1リットル当たり2,600ベクレルとありました。
下欄に、トリチウムのWHO 基準が10,000ベクレル/リットルとあったので、「飲めるレベル」と思ったのでしょう。
しかし、アメリカではトリチウムが原発周辺でガンを起こしたとして問題になっています。
アメリカの飲用水のトリチウム基準は2万ピコキュリー(740ベクレル)/ リットルですから、コップの水はアメリカの飲用水基準の3.5 倍だったのです。
ちなみにEUの水質基準はもっと厳しく、100ベクレル/ リットルなので、コップの水は26 倍になります。
そのことを知っていたら、園田政務官は同じパフォーマンスをできたでしょうか。少なくとも、水を飲みほした後この事実を知ったなら、激しく後悔してWHOの基準しか教えてくれなかった東電を恨んだことは間違いないでしょう。
これぞ宮仕えの厳しさか!
挑発したジャーナリストも猛省したことでしょう。
福島第1原発汚染水、「処理後に海洋放出」 規制委が明文化
2015.1.21 11:50 産経新聞
原子力規制委員会は21日、東京電力福島第1原発でたまり続けている汚染水について、放射性物質を処理した後、平成29年以降に海洋放出することを明文化した。これまで田中俊一委員長が同様の考えを示してきたが、規制委の総意として明文化したのは初めて。東電は海洋放出を判断しておらず、漁業関係者への説得は難航するとみられる。
明文化されたのは、福島第1原発のリスクを減らすための計画を示した「中期的リスクの低減目標マップ」。第1原発には、汚染水約28万トンが敷地内にある約900基のタンクにたまっている。1日約350トンの地下水が原発に流れ込み新たな汚染水を生んでいることから、その処置が問題になっていた。
汚染水は強い放射線を出しているため、東電は放射性物質を除去する「多核種除去装置」(ALPS=アルプス)で汚染水を処理する作業を進めている。東電は現段階で処理水を海洋放出する判断をしていないが、規制委の田中委員長は「リスク低減をきちっと受け止めなくてはいけない。東電はそうした覚悟を持っていない」と批判した。
ただALPSでは処理後も、放射性物質のトリチウム(三重水素)が残るため、その放出基準が課題となっている。規制委の更田豊志委員長代理は「風評被害などさまざまな課題がある」と指摘。政府の廃炉・汚染水対策チームが、トリチウムをどう処理するか、ワーキンググループを設けて検討している。
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日本の原発の最大最悪の問題は、運営組織の腐敗を防ぐ具体策が、なーーーーんにも語られてないことについて、なーーーーにも語られていません。まあ、自分の所で不正と不正見逃しを防ぐ具体策をたてるのが先でしょう。思ったより早稲田の理工系の劣化、酷いようです。