アオクジラ-Bluepain-

日々徒然に思ったことを書き記します。ワッショイ!

ひとつだけ

2007年04月26日 02時19分24秒 | テキスト
勢いよくホースから噴き出した水が
ぱたぱたと地面に落ちる

土の湿った匂いが鼻をついて
縁側で猫が耳を伏せる

やがて呼び水に誘われたモンシロチョウと
猫が愉快にダンスを始める頃
どこかで昼のサイレンが鳴った


庭先に生った沢山のびわの実は
逞しい緑の葉に映えて
強烈な黄色のコントラストを放っている

それを徐にもぎとっては
口いっぱいに頬張る

全部採ってはいけないよって祖母が言うから

一個だけ残した初夏の頃


太陽は真上から容赦なく照りつける

片手でそれを遮りながら
最後の一つに手を伸ばす

かつて在った祖母の声はもうしない


口の中には渋さとほのかな甘さが広がって
その度、記憶は翻る

いつの間にか庭先には
モンシロチョウを追いかけて迷い込んだ
見知らぬ猫が一匹