時は過ぎて薔薇の庭園
ドーム型の天窓はすっかりそれに絡めとられ
360度どこを見渡しても見事
薔薇の赤や白に彩られている
その間をするりすり抜けて
柔らかい日差しが足元を照らし出す
緑を帯びた空気
何処かから迷い込んだ蝶が
軽やかに風を掴んで舞い上がる
野放しになったこの庭園を見たなら
あの人はきっと私を叱ることでしょう。
良いんです。それで。
私は叱ってもらいたい。
呆れながら笑うあの人の顔を思い浮かべる。
けれども・・・
いつの間にか、はっきりと思い出せなくなっている。
あんなに大事だった想いも朧気になっていく。
それを必死で繋ぎとめるための無数の薔薇。
いつもと同じ道を歩いていると
ほら、いつもと同じ風が頬を撫でる。
違うでしょう?ほんとうは・・・
わかるでしょう?いまなら・・・
あの人が戻ってこないことも
その想いも忘れてしまうことも
全てわかっている。
全てわかった上でそれを望む私に
木漏れ日だけが殊更に優しい。
生産のためのリハビリに・・・