不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

幸先の悪い日

2004年04月17日 01時08分36秒 | Life
「おっ」と、思うまもなく、小さな袋はワンバウンドして、折角乗り込んだ電車とホームの間に落ちて行った。
朝、満員の電車を一本乗り過ごした後のことだった。

無常にベルが鳴り、小袋は必要な物だったので、私はまた、電車を降りた。
まさに、「幸先の悪い日」である。

私は、こういうのを結構気にしてしまう。
「乗り換えにことごとく乗り遅れる」
「小銭が1円足りない」
「注文した品物が来ない」
私の、「幸先の悪い」サインである。

 当然のように、ほとんど毎朝通っているドトールでも、お気に入りの子ではなく、新入りの無愛想な男の子にコーヒーを渡された。

 一度、朝、思い込んでしまうと、自己暗示なのかすべてにネガティブになってしまう。
何気ない女の子の一言が、ずっしりと胸を刺す。
上司の視線が、重く感じる。
部下の小声が、さげすみに感じる。
なにせ、「スイッチがON」されているので、止めどない。

さすがに、ながぁい年月、この自分の性格と付き合っているので、そういう時は、「風に柳モード」に入り、すべてを受け流す。

しかし、それにしても今日の奴は強かった。
いわれのないそしりを受ける。
建前だけで推し進める奴がいる。
いい加減、頭にきたので少し怒鳴ったら、それが呼び水となり関係のないことまで持ち出されて、押し切られてしまった。

修行が足りないのである。
まったく、こうゆう日は辛い。

心底疲れ果てて、会社を出た。
泥のような疲労が全身を包んでいる。
駅前に来ると、「ドトール」がまだ開いていた。
「・・・コーヒー飲んでいこうかな」

扉を開けた。
「いらっしゃいませ!」
元気な声が飛び込んできた。
あれっ?この声・・・

いつもの子だった。
「朝・・・だけぢゃないの?」
「あ、今日だけ。ちょっと変わってもらったんです。コーヒーLサイズ、ブラックでよろしいですか?」
「え?・・あ、ああ、うん。」
てきぱきと、目の前にコーヒーが運ばれた。

コーヒーの香りが、じんわりと体を包む疲労をほぐし始める。
「お待たせしました。280円です。」
「あ、え、ああ。」
財布を開いた。
小銭は、・・・279円ちぇっ。千円札を取り出した。

「千円、お預かりします。」
彼女が、私の手先から千円札を奪っていく。

「はい、では、720円お返しします。」
にっこり笑って、私の手をしっかりと取って、お釣りをその手の中に押し込んだ。

「あ、アリガト」
手の中を見ると、500円玉が光っていた。
「平成16年だ・・・。」
 コーヒーを飲み終わるころ、私は幸先の悪い日が終わるのを実感していた。
「有難うございました。」
 店を出るときの彼女の笑顔が、それを後押ししていた。

 ・・・その日、家に向かうバスには1本乗り遅れたが、暇潰しに入ったパチンコ店では、ちょうど待ち時間の間に単発の当たりが来て、私の財布も少し潤った。

 まあ、そんなもんだね。^^

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