舞台は1945年、終戦間近の日本。といっても、
“終戦間近”だと理解しているのは、軍の中でも一握りの存在で、
命令されるがままに西へ東へ、南へ北へと奔走させられる下々の
軍人さんたちには知る由もなく、また“関係ない”と
言い切ってもいいのかもしれません。
と、こんな切ないことを思うようになったのも、読み終えてから。
終章へ辿り着いて初めて、感じることができました。
文庫で全4巻、ほぼ1冊1章という感じで進む物語は、全編が
激戦というわけではないのに、息つく暇もなく、手に汗を握りながら
ただただ、没頭して読み続けるだけでした。結末へ向かって。
海軍軍令部に籍を置く浅倉大佐の命により、ドイツ軍より譲り受けた
潜水艦《伊507》の艦長となった絹見。“特攻”として訓練を受けてきた
17歳の清永と折笠。南方での戦争で地獄を見、鬼とあだ名される田口。
艦に乗り込むのは初めてたどいう軍医・時岡。機関部の主・岩村。そして、
ドイツの艦《UF4》であった頃から乗り込み、驚異的な探査システム
「ローレライ」の“全て”を担う元SS将校フリッツ・エブナー。
誰もが軍人でありながら、それでもやっぱり人間である。立場や命令や、
なんなら今起こっている戦争ですら関係なく、それぞれが胸に“思う”
ことはあるわけで。しかし、それを無視してでも“皇軍”であろうとする
ことが、とても悲しいことである、と気付かせてくれます。“皇軍”で
あろうとするのは、戦地へ飛ばされる軍人のみ。上層部は、日本という
国のことについては、何も考えていないのだから…。
序章から第5章まで、それこそ没頭して読み続けました。
が、終章です。その後、いわゆる“戦後”から“現在”までを
ざっと駆け抜けていくわけですが、なんか虚しくなりましたね。
あんな“ドラマ”があって、あんなに命を掛けた人たちがいて、
その上に成り立っているはずの、この平和な現代日本。自分も
その中に組み込まれているんですが、ホントいやになった(笑)。
でも、これは一つの“副作用”だと思って受け止めます。少し時間が
経てばすぐに冷静になって、この物語の“核”がちゃんと
見えてきますから。今までもあったモノだし、これからもずっと
あり続けるモノだし、誰もが最初から心に持っているモノでもある。
この物語は、ともすると忘れがちになる“それ”を思い出させ、
“それ”を持っている心を鷲掴みにします。
映画とも多少内容が違うし、ぜひとも読んで感じて欲しいと
思ったので、とてもぼやけていて、何を書いているのかわかりにくい
かと思いますが(ま、いつものことではあるのですが(笑))。
それともう一つ。福井さんの文章が、とても好きです。
どこがどう、とは説明できませんが、分かりやすくて伝わりやすくて、
居心地のいい文章、とでも言いましょうか。戦争用語とか、軍のこととか、
難しそうだしハナから興味のないことも、物語に支障がない程度には
理解でき、なんというか、そんな難しいことを考えるまでもなく、
気付くと物語の世界へ心を持って行かれてしまっている、という。
読む人の心を惹きつける文章なんでしょうね。私にとっては、
テーマがテーマだけに、なかなか手が出にくい福井作品ですが、
これからは臆することなく読むことができそうです。
「終戦のローレライ1~4」福井晴敏(講談社文庫)
“終戦間近”だと理解しているのは、軍の中でも一握りの存在で、
命令されるがままに西へ東へ、南へ北へと奔走させられる下々の
軍人さんたちには知る由もなく、また“関係ない”と
言い切ってもいいのかもしれません。
と、こんな切ないことを思うようになったのも、読み終えてから。
終章へ辿り着いて初めて、感じることができました。
文庫で全4巻、ほぼ1冊1章という感じで進む物語は、全編が
激戦というわけではないのに、息つく暇もなく、手に汗を握りながら
ただただ、没頭して読み続けるだけでした。結末へ向かって。
海軍軍令部に籍を置く浅倉大佐の命により、ドイツ軍より譲り受けた
潜水艦《伊507》の艦長となった絹見。“特攻”として訓練を受けてきた
17歳の清永と折笠。南方での戦争で地獄を見、鬼とあだ名される田口。
艦に乗り込むのは初めてたどいう軍医・時岡。機関部の主・岩村。そして、
ドイツの艦《UF4》であった頃から乗り込み、驚異的な探査システム
「ローレライ」の“全て”を担う元SS将校フリッツ・エブナー。
誰もが軍人でありながら、それでもやっぱり人間である。立場や命令や、
なんなら今起こっている戦争ですら関係なく、それぞれが胸に“思う”
ことはあるわけで。しかし、それを無視してでも“皇軍”であろうとする
ことが、とても悲しいことである、と気付かせてくれます。“皇軍”で
あろうとするのは、戦地へ飛ばされる軍人のみ。上層部は、日本という
国のことについては、何も考えていないのだから…。
序章から第5章まで、それこそ没頭して読み続けました。
が、終章です。その後、いわゆる“戦後”から“現在”までを
ざっと駆け抜けていくわけですが、なんか虚しくなりましたね。
あんな“ドラマ”があって、あんなに命を掛けた人たちがいて、
その上に成り立っているはずの、この平和な現代日本。自分も
その中に組み込まれているんですが、ホントいやになった(笑)。
でも、これは一つの“副作用”だと思って受け止めます。少し時間が
経てばすぐに冷静になって、この物語の“核”がちゃんと
見えてきますから。今までもあったモノだし、これからもずっと
あり続けるモノだし、誰もが最初から心に持っているモノでもある。
この物語は、ともすると忘れがちになる“それ”を思い出させ、
“それ”を持っている心を鷲掴みにします。
映画とも多少内容が違うし、ぜひとも読んで感じて欲しいと
思ったので、とてもぼやけていて、何を書いているのかわかりにくい
かと思いますが(ま、いつものことではあるのですが(笑))。
それともう一つ。福井さんの文章が、とても好きです。
どこがどう、とは説明できませんが、分かりやすくて伝わりやすくて、
居心地のいい文章、とでも言いましょうか。戦争用語とか、軍のこととか、
難しそうだしハナから興味のないことも、物語に支障がない程度には
理解でき、なんというか、そんな難しいことを考えるまでもなく、
気付くと物語の世界へ心を持って行かれてしまっている、という。
読む人の心を惹きつける文章なんでしょうね。私にとっては、
テーマがテーマだけに、なかなか手が出にくい福井作品ですが、
これからは臆することなく読むことができそうです。
「終戦のローレライ1~4」福井晴敏(講談社文庫)