紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「痕跡」パトリシア・コーンウェル

2005年03月23日 | は行の作家
このシリーズを読んでいる方をあまり知らないのですが(笑)、
私は「検屍官」から、リアルタイムで追ってます。
前作の「黒蝿」から第2部、というような感じで、
登場人物はあまり変わりませんが、彼らを取り巻く環境は
劇的に変かしています。その中でも、まだケイは狙われるのです(笑)。

法医学コンサルタントのケイ・スカーぺッタは、
死因不明の少女の遺体を調べるため、5年ぶりにリッチモンドへ赴いた。
かつて彼女が局長として働いていた検死局の建物は、無残にも
壊されている最中。新しい検死局は、目も当てられないほど“狂って”いた。
リッチモンドで今、何が起きようとしているのか…。

検死の描写は、相変わらず微に入り細をうがっており、
ここで“証拠”が発見される様はいつ読んでいても気持ちいいもんです。
たいてい、ケイが見つけるんですけど、そこにはもっと“職人”な
人たちもいるわけで、日がな一日顕微鏡とにらめっこをしているような
ある種の変人たち(笑)も、上手く使われると非常に素晴らしい
結果を導いてくれるのですね。そういう種類の人達の使い方が、
ケイは非常に上手かった。これまでのシリーズでは、そうやって証拠を
得ていく様を眺めつつ、だんだんと真相に近づいていく様子に、
手に汗を握っていたのですが、「黒蝿」以降は、ケイの一人称ではなく、
三人称で描かれていることからも、そこからは少し離れて、
もう少し大きく登場人物たちを捉え、物語を眺めていくことによって、
楽しめるような展開が待っている…ということなのでしょうか。
そういう観点から眺めてみると、これまではリッチモンドの検死局を
舞台としていたのが、これからは、ルーシーの会社が舞台となるようです。
ルーシーや相棒のルーディはもちろん、今ではマリーノもそこの社員で、
ケイに至っては顧問という形をとっていますね。そして、例のあの人も…。
そうですね、やっぱり起こる出来事(事件の解決)を楽しむ、
というのではなく、シリーズとして楽しむ作品へと進化したようです。


「痕跡(上下)」パトリシア・コーンウェル(講談社文庫)

【カバー裏より】(上巻)
 一本の電話が始まりだった。法医学コンサルタントのケイ・スカーペッタは、死因不明の少女の遺体を調べるために、5年ぶりにリッチモンドの地を踏んだ。そこでは事件へのFBIの関与が明らかになる一方、かつてケイが局長として統率した検屍局が、無惨にも破壊されつつあった。この町で何が起きているのか?

【カバー裏より】(下巻)
 その奇妙な微物は、死んだ少女の口のなか、主に舌に付いていた。2週間後、まったく別の場所で亡くなった成人男性の遺体から同じ物質が採取され、事件の様相は一変する。憂愁と恐怖、挫折と殺意がこの世界を覆いつくし、さらにスカーペッタの姪、ルーシーにも何者かの影が迫る! 死の連鎖をくい止めろ!