紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「殺意は砂糖の右側に 天才・龍之介がゆく!」柄刀一

2005年03月03日 | た行の作家
龍之介シリーズ第1作目。長編だと思っていたのですが、
連作短編のカタチです。以前に読んだ「殺意は幽霊館から」は、
話のつながり方からいって、たぶん、2作目ではなさそう。
(すごい消極的な意見ですが(笑))
ということは、もう1冊(もしくはそれ以上)がこの間に
ある、と。柄刀さんにしてはむちゃくちゃ軽い、異色な
シリーズなのですが、やっぱり読んでいてなんとなく
心がほんわかしてくる、というのは、龍之介の人柄でしょうか。

小笠原諸島のとある島で、天才科学者である祖父に育てられた
龍之介。祖父が亡くなったのを機に東京へ出てきますが、
浮世離れした祖父があてにしていた先は、ことごとく連絡が
付かず、唯一居場所が分かりそうな人物を追いかけることに。
それまでの間、龍之介はいとこの光彦のお世話になりますが、
彼ら(正確にいうなら龍之介)の行くところに、さまざまな
事件が待っていて…。

物語の語り手は光彦。彼の恋愛話があったりするのですが、
正直、そんなことはどうだっていい(笑)。それをきっかけに
“事件”が起きたりしますが、すべて、浮世離れしているけれども
IQ190を誇る天才・龍之介がキレイに解決してくれます。
この、“弱腰キャラ”がなんとも母性本能をくすぐるのですよ(笑)。
事件の現場のような血なまぐさいところは苦手だし、
それだけじゃなくて、幽霊もダメだし、自然の中で育ったので、
人込みだって苦手だし、かと思えば、特製の調味料を料理に添加
(要は、料理に自家製化学調味料を使うということですが)してみたり。
とても微笑ましく、好みなキャラです(笑)。

ミステリーとしても、それぞれ違ったトリックを使っていたり、
ホントは力が入っているはずなのに、それを感じさせない
軽いノリの文章も、実は柄刀さんは書けるのね、と。
そんな感想も抱きました。やっぱり好きだな(^-^)。


「殺意は砂糖の右側に 天才・龍之介がゆく!」柄刀一(祥伝社文庫)