紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「陰陽師 龍笛ノ巻」夢枕獏

2005年05月25日 | や行の作家
厳密にいうと、これだってミステリーではないですけどね(^^;)。
扱っているものは“あやかし”だから、一概に美しいとは言えないの
ですが、どことなくはんなりとして、しかも雅びやかな雰囲気が
作中にずーっと漂っているわけです。安倍晴明も源博雅も、そして
今回から出てきた賀茂保憲も、なかなかいい“漢”なんですよね。
しかも本作では、起こる事件にあまり凄惨さや哀しさ、侘びしさを
感じなかったんですよね(麻痺している、とも言う(笑))。
だから余計に、晴明と博雅の良い関係が、うらやましくなるくらい
実感でしました。そして、晴明の家の庭の風景も。季節の移ろいを
目で感じ(実際には活字ですけど)、博雅の心で感じられる、
というのが、この作品の醍醐味の一つでもあるんじゃないかな。
なんとなく、賀茂保憲はこれからも出てきそうな気がするんです。
というか、出てきてほしいなあ。晴明ほど浮世離れしているわけでは
なく、かといって、博雅ほど逞しいわけでも雅なわけでもないんですが、
その俗っぽさが、逆にこの2人の間に入ると魅力的です。
よい漢3人か醸す、よい風情に、ぜひ酔ってみてください(^-^)。


陰陽師 竜笛ノ巻」夢枕獏(文春文庫)