1994年
直球、シュート気味ー。シグペンの外角球を見逃す鈴木に、球の軌跡が鮮明になった。それよりやや甘い2球目、外角の球をバットは逃さない。八回、この左翼線二塁打で、二塁からパグリアルーロがかえり決勝点。「たぶん直球」鈴木はいった。でも思った通り投球は、わずかにシュートしていた。シグペンは、六月初めに来日した。ホワイトソックス時代の90年、57セーブの大リーグ記録を樹立した191㌢、100㌔の男だ。優勝争いするダイエーが抑えの切り札として入団させた。実力通り、日本では3回を投げ、一人も走者を出していない。しかし、組織の西武はそれを砕く。十一日の初対戦、打者三人のうち二人が三振した日に、すでにビデオを見て研究していた。講師役はシグペンが活躍した当時ヤンキースにいて、何度も対戦したことのあるパグリアルーロだ。「シュート気味の直球、落ちる球、それにスライダー」パグリアルーロはミーティングで、彼の武器をあげた。選手は、名をはせた救援投手の特徴を、頭にたたきこんでいた。八回は一死から、そのパグリアルーロが中前安打して手本を見せた。鈴木はミーティングを思い出す。外角、シュート。逆らわない流し打ちだった。終盤2本の本塁打と、ダイエーも持ち味を発揮した。それを上回る力で相手を突き落とした森監督は「野球は、みんなのつながりだよ」と、つぶやいた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます