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冬に入った富山へ飛んだ。厳しい交渉が予想される出張なので気が重い。

富山空港は日本海の風が吹きつける、神通川河川敷に造られた南北一本滑走路の空港だ。エンジンパワーを維持したまま、スポイラーを使って高度を下げてゆくB6。案の定、富山上空から富山湾に出て旋回、北からアプローチするB6-300は揺れまくり。久しぶりにコップのスープが飛び出しそうなアップダウン。最後はドカチンでランディングした。
あー気持ちいいシビレルゥ

客先に向かう高速から見る富山の風景。雪を抱いた立山が見えたり見えなかったり。
。くるくる変わる。
まるで女神のお心のようです。

お客と交渉している最中に、いきなり轟いた巨大な雷鳴。不思議なことに、以後、なんとなく話は進み、一定の結論が出て交渉終了。

3時半ごろ遅い昼飯を、“きときと”の鮨ですませ、駐車場に出てみれば、すごいあられ(霰)が降っていた。


帰路の高速を走ると、それがみぞれ(霙)になり、になり、になり...。
入り混じるうち、前の雷雲に大きな虹


前方の視界いっぱい。左右の根っこから天頂まで。色も紫まで見える上、虹の外側に第2の虹もうっすら見える。写真でうまく撮れないのが残念だ。

虹の根っこがこんなにはっきり分かるのは、初めての経験で、同乗している富山の所長も見たことがないという。

その根っこはすぐそこにあるのだけれど、けっして届くことなく、僕らから逃げるように平野を移動してゆく。

そしてふと下を見ると、虹の根っこの続きが、車のサイドウィンドゥに、孤を描いて写ってるじゃないか
すっげー不思議
外の虹と内の虹と、その遠近はどうなっているのだ

夕暮れの富山空港。機種変更でB7からB6になった888便は15分遅れで離陸。後方右の窓際席。夕暮れに列島を横断するフライトの席は、絶対に西側でなければならない。
強風雷雲でB6は。翼は
あー気持ちいいシビレルゥ

雲の上に出る。
彼方まで雲海が続く空の黄金色。
赤から闇へと無限に色を変えてゆく、西の周囲。昼と夜の不確かな一線。
機内照明を落としてくれたら、どんなに素晴らしいだろう。

スカイクロラシリーズ『クレィドゥ・ザ・スカイ』を開いて読む。夕暮れの飛行機の中で?俺は気障で嫌な野郎である。

「愛している」という言葉の色が書いてあった。不思議な小説である。
若いからだのまま、不慮の事故でも逢わなければ、永遠に生き続ける主人公たち“キルドレ”は、いつか、自己の消滅を幽かに望みながら、今の、刹那にのみ、正直に生きようとする。
誕生と死と、二つの永遠の間で、短い生を年老いてゆく我々は、死の前に何事かを成さねばならぬと、過去にすがり未来におののき、段取りに追いまくられ、人生を切り刻んでゆく。

人の意識は、今、この瞬間の刹那にしか存在しないのに、過去から続く太い脈に思えるのは、“自己”が、過去の記憶の積み重ねの中にしかいないからだ。過去の記憶がなければ、“自己”の同一性は継続しない。それが途切れないように、未来に続くように、人は過去の延長を望む。それは、人が“死”を発見したから...。

飛行機で飛ぶと操縦士になりたいと云い、海を帆で走れば船乗りになりたいと云う。半端なまんま、情熱の振り向け場所を定めることなく、流れた結果、地面でサラリーマンをし、大台まで夏二(『なつに』と読む)となった。

せめて、空と海を身近に、腹立てることなく。人生を生きる。



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