実は、日記に書くまでもないだろう脅威にさらされている。毎年のことだが、秋口に飛来する巨大蛾クスサンさんの恐怖だ!
マイガー!!
嫌なんだよ! 嫌いなんだよ!
怖いんだ!!
今週こそご来店するだろうと、恐々と出勤したけど、一匹もいなかった。とすると、来週は確定だろう。どうしよう?! どうしたら?
店の入口で仕留めないと、軽く20匹は入ってくるよ。それがトルネード飛行して、何処に落ちるかわからない。手元に落ちた時は、心臓が止まりそうになる。でもどうにか慣れようと、動画を見たり調べたり、去年と同じことをしている。
自分に言い聞かせてみた。
いいか、よく聞くんだ。ヤツらはいつだってこう言っている。いきなり店に飛び込んできたヤツもそうだ。
死にたくない!
死にたくないよう!!
殺さないでー!!
思い出すんだ。少女時代、セセリーという名の茶色の蝶を指に乗せて遊んでいた頃のことを。指を差し出せば乗ってくれた、つぶらな瞳のセセリーと、本気で心を通わせていたではないか。クスサンさんは、よく見れば顔が可愛くて、少しセセリーに似ている。蛾と蝶の大まかな違いなんて、止まっている時に、羽根を開いているかいないかの違いだろう? 店にやってくるクスサンさんは、きっと昔遊んだセセリーの生まれ変わりだ。きっとそう!
って、あかーん!!
そんな妄想したら、もう叩けないやーん!
死にたくないよーう!っていう命を、叩き潰す勇気を失った…。