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嘘だった「武器支援でウクライナ反転攻勢は可能」との報道。西側の武器供給が止まる2つの理由=高島康司

2022-07-04 | 教材

マネーボイス

嘘だった「武器支援でウクライナ反転攻勢は可能」との報道。西側の武器供給が止まる2つの理由=高島康司

いま日本の主要メディアでは、ウクライナへの兵器の支援さえあれば反転攻勢は可能で、最終的にはウクライナは戦争に勝利するとの報道が多い。しかし、欧米の武器供給の能力から見ると、これはかなり厳しいと言わねばならない。おそらくウクライナは負ける。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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欧米の武器支援は可能なのか?

日本や欧米の主要メディアの報道では、欧米からの重火器を中心とする武器支援が継続すると、いずれはウクライナは反転攻勢してロシア軍に勝利するだろうという観測が、いまだに多い。

しかし、その欧米の武器支援の継続がどこまで可能なのか疑念が出てきた。

グローバルなサプライチェーンの寸断からIT機器や部品の入手が難しくなっており、これがウクライナへの武器支援の継続を困難にする可能性があるというのだ。

直近の戦況

まずは兵器の供給問題を書く前に、最新の戦況を確認しておきたい。香港の有力紙、「アジア・タイムス」が掲載しているもっとも客観性の高い戦況分析だ。要点だけを伝える。

東部ルガンスク、リシチャンスクの戦いは、セベロドネツクでの非常にゆっくりとした戦いに比べ、ロシアに有利な展開となっている。

またもや遅々として進まない包囲戦は、ロシアに大きく有利に働くだろう。ウクライナ軍は機動力とイニシアチブを取り戻し、補給線を再開するか、部隊を撤退させ、塹壕を崩し、より防御しやすい周辺に撤退する方法を見つける選択が迫られている。

ウクライナへの新兵器の供与が流れを変えるという希望は見当違いである。そのような兵器の登場によって、より強固な防衛線からの反撃が可能になるかもしれないが、新兵器が無計画に導入された場合には、再び敗北と士気の喪失につながるだけかもしれない。

しかし、冬までにウクライナ軍が勝利を収め、失われた地盤を回復して戦争を終結させるというゼレンスキーの話は、どう考えても無理があるように思える。ゼレンスキーがそのような話をするのは理解できるが、現実的とはほど遠い。

このような話や、西側からの「ゲームチェンジャー」兵器システムの到着に期待を寄せるのとは裏腹に、兵士を含む大量のマンパワーの損失が、ウクライナの戦場での主要な問題である。

12基の最新型多連装ロケットシステム(MLRS)が、今後数カ月の間に米国、英国、ドイツから提供される予定である。米国とドイツはさらに榴弾砲も送る予定だ。だが、ウクライナにはそれらを発射するのに十分な経験豊富な兵士が必要だ。

このように、ウクライナ軍の劣勢は続いている。「アジア・タイムス」の戦況分析では、たとえこれから最先端の兵器の供給があったとしても、訓練された兵士を含むマンパワーの決定的な不足から兵器を活用できず、戦況を変えることにはならない。ゼレンスキーは冬になる前に戦争に決着をつけたいと言っているが、これは実質的に不可能な状況だ。

しかしながら、こうしたウクライナのマンパワー不足だけではなく、欧米による武器支援の継続そのものが困難ではないかという見方も強くなっている。

武器供給の困難性

いまアメリカは、スティンガーとジャベリンを除けば、155mm榴弾砲18基と3万6,000発の弾薬、ハープーン沿岸防衛システム2基、ウクライナ軍用の暗視装置数千個と不明数の熱画像装置、安全無線数千個、スイッチブレード無人機700機、ケブラーヘルメット付き防弾着7万5,000セット、化学バイオ防衛装置など多くを供与してきた。

さらに米議会は最近、400億ドルのウクライナ補足歳出法を可決し、大統領が署名した。この歳出法は、ウクライナへの武器と人道的物資のためにさらに140億ドルを供与するものである。

このように、ウクライナへの手厚い武器支援は続いてるものの、どれだけ支援しても足りず、まさにブラックホールのような状態だと形容されてもいる。

しかしアメリカでは、「レイセオン」や「ロッキード」などの大手防衛企業が、軍への補給に深刻な困難に直面している。アメリカではすでに戦時在庫の3分の1以上のスティンガーとジャベリンミサイルをウクライナに送っている。戦争が続けば、これらの兵器の在庫の半分も消費されると見られている。

だが、軍需企業に新しい装備を発注しても、新兵器の生産には長い時間がかかる。そのため、戦争が長期化して武器への需要がさらに増大し、在庫が不足した場合、軍需企業はおそらく需要には追いつけない。装備の不足は、たとえ支援を続ける意志があったとしても、武器の生産には数年はかかる。たしかにヨーロッパ諸国の政府のなかには、防衛費を増額しているところもある。しかし、ヨーロッパでの武器製造は、アメリカの非常に長い生産時間と比較しても、もっと時間がかかる。年単である。

たとえば米ミサイル製造大手の「レイセオン」はスティンガーミサイルの再補充のために6億3400万ドルの新たな契約を得た。だが、「レイセオン」は来年までに生産を着手することは不可能だとしている。

また、英国国防幕僚長のトニー・ラドキン提督は、貴族院国際防衛委員会で、「近代的な兵器を迅速に生産することはできないので、我々は年単位で話をしているのです。確かに砲弾や大砲を生産することはできますが、超高級品でなくても、NLAW(対戦車ミサイル)兵器のような控えめなものでも、元の在庫に戻すには数年かかるのです」と証言している。

兵器生産の困難性、軍需産業独自の問題

このように、欧米からウクライナに向けての武器支援はいまは辛うじて維持されているが、戦争が長引くと在庫の減少と兵器製造の時間的な長さから、支援の継続は困難になる可能性が高い。

そうなると、ウクライナはかなり悲惨な状況に追い込まれる。兵士を含む絶対的なマンパワーが不足に加え、期待していた欧米からの十分な武器支援も乏しくなる。

このような状況では、ウクライナは戦闘の継続が困難な状態に追い込まれることま間違いない。

軍産複合体が中核の「外交問題評議会(CFR)」の影響力の強い米バイデン政権は、ウクライナ支援を続けて戦争を長期化させ、ロシアの弱体化をねらっている。1979年に始まったアフガン戦争はソビエト経済を弱体化してソビエト崩壊の背景になったが、今度はロシアを弱くするためにウクライナを使っている。しかし、マンパワーも決定的に不足し、さらに武器の継続的な支援も期待できないとしたら、ウクライナは長期戦を戦えないことになる。バイデン政権のロシア弱体化のシナリオは実現不可能だ

しかし、それにしても、なぜ兵器の生産に時間がかかるようになったのだろうか?

これにはいくつか理由がある。ひとつは、軍需産業独自の問題である。アメリカとヨーロッパにおける防衛用品の調達は、継続的ではなく、単発的である。ある一定量の防衛装備品を購入するために資金が配分される。契約が完了し、すぐに次の購入がない場合、生産ラインは停止され、第2、第3層の部品サプライヤーも生産を停止するか、他のプロジェクトにシフトする。場合によっては廃業してしまう。

このため、兵器の在庫がなくなり、後で新たな注文が入った場合、サプライヤーネットワークや生産ラインをほぼゼロから立ち上げなければならなくなる。ある種の兵器のためのインフラが失われることに加え、熟練した工場労働者やエンジニアがいなくなったことも関連している。

グローバルサプライチェーンの依存

そしてもうひとつは、アメリカとヨーロッパは、アジアからのハイテク機器供給への依存度を高めているため、深刻な供給不足のリスクが存在していることだ。

いま、アメリカでもヨーロッパでも、軍需産業は中国のハイテク部品を中心にしたグローバルサプライチェーンに完全に依存している。たとえば、少し古い調査だが、トランプ政権が2018年に発表した軍需産業の報告書、「合衆国の国防産業と製造業におけるサプライチェーンの弾力性調査とその強化に向けての報告書」によると、すでに300ほどの分野でグローバルサプライチェーンへの依存が進み、アメリカ国内の軍需産業の生産能力がなくなっているという。

中国は、軍需品やミサイルに使用される多くの特殊化学品の単独、または、唯一のサプライヤーである。多くの場合、他の供給元や代替材料が存在せず、そのような選択肢がある場合でも、新材料を試験・認定するための時間とコストは、特に大型のシステム(1つ当たり数億ドル)においては、法外なものになる可能性がある。

突然の壊滅的な供給喪失は、国防総省のミサイル、衛星、宇宙発射、およびその他の防衛製造プログラムを混乱させる。多くの場合、容易に入手できる代用品はない。炭素繊維工場の代替は非常に高価で時間がかかる。代替できるサプライヤーの選定は不確実性であり、多大な時間とリソースが必要になる。

報告書には、以下のような具体的な状況が列挙されている。

・数値制御工作機械のドイツ依存
精密兵器の製造にはなくてはならない数値製造工作機械はすべてドイツからの輸入に依存している。

・レアアースの供給は中国依存
90年代初頭まではアメリカ国内でもレアアースの掘削産業は存在していたものの、いまはない。精密兵器やIT機器にはなくてはならないレアアースは、すべて中国からの供給に依存している。

・ASZM-TEDA1添着炭
化学兵器や有毒ガス、また放射能ガスの防御機器の製造には欠かせない物質、「ASZM-TEDA1添着炭」の国内メーカーのほとんどは倒産しており、すでに一社しか残っていない。「ASZM-TEDA1添着炭」は72種類の防御機器で使われている。サプライヤーの多くは中国企業だ。

・精密兵器用IT基盤
精密兵器はプリントされたITの基盤を必要としているが、この分野でも米国内のメーカはほとんどが倒産しており、一社しか残っていない。いまは中国企業に依存している。

このような状態だ。

いま新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争の影響によって、グローバルサプライチェーンは随所で寸断されている。すでにウクライナ戦争前から、サプライチェーンの寸断が原因で、パンデミックからの回復に伴う半導体需要の高まりに対応できず、半導体は非常に手に入りにくい状態になっていた。これにウクライナ戦争後のロシア経済制裁によるサプライチェーンの寸断が加わり、さらに半導体は手に入りにくくなっている。

これが原因で、ウクライナ支援のたのの武器の供給には相当な障害が出てくるものと思われる。

もちろんこうした状況は、ロシアも同様だ。ロシアもハイテク兵器の生産には問題が生じてくるだろう。しかし、ロシアには旧型の戦車やミサイルを含めると、まだ膨大な在庫があり、マンパワーと兵器の不足にいま苦しんでいるウクライナとは対照的な状況にある。もし今後、欧米による兵器の供給が困難になると、ウクライナには勝ち目はないことになる。

いま日本の主要メディアでは、ウクライナへの兵器の支援さえあれば反転攻勢は可能で、最終的にはウクライナは戦争に勝利するとの報道が多い。しかし、欧米の武器供給の能力から見ると、これはかなり厳しいと言わねばならない。

おそらくウクライナは負ける。今後の展開に注目だ。

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