Doll of Deserting

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人形即興曲:Ⅲ(ギンイヅ+乱菊)

2005-07-23 21:34:45 | 過去作品連載(パラレル)
Ⅲ:その全てが狂気
 乱菊がそこでギンを見たのは、初めてだった。その部屋は永く閉ざされていたらしく、入る者など誰もいなかった。それなのにも関わらず、奥座敷とも言うべきその部屋には埃など一点も見られなかった。なぜだろうと思っていたが、まさかギンが逢引に使っているとは思いもしなかった。そしてその相手が、イヅルだなどと思ってもみなかった。確かに二人はただならぬ関係に見えたが、それはまるで主人と使用人のようで、決して色めいた仲とは思えなかった。
 これで二人がことに及んでいようものならばすぐにでも立ち去るのだが、今はただ何か話しているだけだった。やけに目線は近かったが。
『何でお前はそない頑ななん?』
『…何を仰っておられるのか理解出来ません。そんなに気に入りませんか。』
 私があなたを愛さないことが。私があなたではなく隅の奥座敷にいる姫君のことばかり見ていることが。あなたに少しも心を許さないことが。乱菊にはその言葉が全てゆっくりと頭の中で響いたように感じた。
 イヅルは、ギンに愛されているらしい。それならばイヅルは女だろうか。そう思ったところで、イヅルはおそらく女性であろう奥座敷の姫君が好きなのだと言う。乱菊は混乱し、意識が闇に飲まれていくようだった。
『何て言おうとな、ボクがお前好きやいうんは変わらんよ。それとな、お前はそない人形やいうこと気にしとるみたいやけど、これだけは言うとくわ。』
 イヅルは黙ってギンの方を真っ直ぐに見つめる。それは彼から僅かに感じられる狂気じみた情念に向けられた恐れでもあったが、自分の中の狂気に向けた牽制でもあった。
『人形同士やったら、何してもええんちゃうの?逆にな、残るもんも、何もないんやから。』
 イヅルは、その言葉を聞いた瞬間びくりと震えた。むしろ何も残らないからこそ恐ろしいのだということを、彼は知らない。今愛することが最優先だと思っている。後になり、残るものもなく、振り返ることを許されないということがどれだけ酷なのかを、知らない。
『あなたは、永遠に生きるということがどういうことなのかを、理解していらっしゃらないんですね。』
 イヅルは、それだけ言っておもむろに背を向け去った。乱菊は取り残されたギンを見つめながら、ふっと途方に暮れる。自分もいつか人形だということで、人を愛せないことがあるのだろうか。
『ボク達は永遠やね。人間が欲しかったもんを持っとるんや。…何や、虚しいなあ』
 ギンが呟いたその言葉に、乱菊はゆっくりと息を吐き出した。しかしそれも無駄な抵抗だったようだ。乱菊は、その場にくずおれ涙を流した。何に悲しんでいるのか見当も付かなかったが、なぜだか身体は言うことを聞いてくれなかった。
「何やってんだ、お前。こんなところで。」
 乱菊は、少年が放った言葉にも耳を貸すことが出来なかった。少年はふと眉間に皺を寄せ、足音を立てずに近付いて来る。また新たに狂気を具現化した作品が、自分に迫って来ているように感じた。


 どんだけ恥ずかしい話を書いたら気が済みますか。(自問自答)こんばんは桐谷です。いや色々ネタは考えていたんですよ。乱菊さんと今度は誰を会わせようかなーと。藍染さんかな?日番谷君かな?はたまた桃とかかなーみたいな。でもまあここらでギンイヅを明かしておくべきかなーと。乱菊さんはまだイヅルの性別を理解出来てないみたいですが、話上イヅルは人形の種類の都合で両性です。いや別に身体がそうってわけじゃないけど両性。(この人絶対考えてないだけだよ!!)どうしてもここらへんで日番谷君と出会わせなければと思い無理矢理最後に入れてみました。(痛)次は乱菊さんと日番谷君の出会い編になります。(笑)

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