Doll of Deserting

はじめにサイトの説明からご覧下さい。日記などのメニューは左下にございますブックマークからどうぞ。

人形即興曲:Ⅵ(乱菊+イヅル+桃)

2005-08-13 11:49:58 | 過去作品連載(パラレル)
Ⅵ:優しい狼
 寄り道をしてはいけないよ。真っ直ぐ自分の行くべき道を歩まなければいけないよ。お前は分かってしまうだろうから。全ての穢れているものすら、愛しく感じてしまうだろうから。必ずここへ帰っておいで。でもどうすればいいの?もし森にいる狼が上辺に私の愛するものを、しっかりと貼り付けた人間だったらどうすればいいの。


「あなたがお人形さん?」
 乱菊が言ったことを、桃は暫く理解することが出来なかった。この屋敷に住むことを許されているのならば、彼女も人形であるはずなのに、どうして自分だけが人形であるかのような扱いをされなければならないのか、全く理解出来なかった。
「あなたは、人形じゃないんですか?」
「ご免なさいね、挨拶もなしにこんなこと聞いて。あたしは松本 乱菊。あなたは雛森 桃ちゃんね?」
「はい、乱菊、さん…?」
 つまりそれは事実上の人形ではなく、桃が「主人」のお気に入りの人形であり、所有物であるかということを確かめるためのものだったのだが、やや言葉を選ばなさすぎたらしいと乱菊は反省の念を見せた。イヅルは相変わらず桃から視線を逸らしたままだ。
「吉良君、吉良君が乱菊さんを連れてきたの?」
 桃が唐突にイヅルに向かって声を発した。イヅルは一瞬びくりと身体を震わせたが、急にばつの悪そうな表情になってゆっくりと頷いた。イヅルは大きな罪を犯したかのように振舞っていたが、桃には特に何か不快に感じた様子はなかった。
「あの、あたしに何か、聞きたいことがあるんですか…?」
 桃が小さな声で言った。顔はおそらく元は健康的な色をしていたと思われるが、今やイヅルより少しはましというくらいまで蒼白になっていた。きちんと肌の色が変わるところを見ると、些細なことからどこまでこの人形が精巧に造られているのかが分かる。
「ええ、次ご主人が訪れる日取りを知らないかと思って。どちらかといえば、あなたっていうよりご主人に用があるのよ。」
 ご主人、と言うとまるで桃の夫のようだと思いつつ、乱菊が単刀直入に聞いた。桃はふと目を伏せると、悲愴感を漂わせながら答えた。
「あたしにも、分からないんです。あの人、全然そういうこと言って下さらないから…。」
 とても優しい人ではあるけれど、と切なげに言う桃を見ながら、乱菊はあることを思いついて桃に尋ねてみた。
「出ようとか、思わないの?ここから出て、自由になりたいって。」
「思いません。それだけは、絶対に。後悔なんて、まさかそんなもの。」
 一息で言ってから、桃は溜息をついた。自分がなぜそこまで思うのか、自分でも分かっていないとでも言うようだった。イヅルは淡い色の睫毛を伏せ、桃よりも切なげな顔になった。今にも泣きそうだ、と乱菊が思ったほどだ。ここから出られない理由など、一目瞭然だった。桃は屋敷の主人に、イヅルはギンではなくおそらく桃に、それぞれ心が捕らわれたままなのだろう。なぜギンではなく桃だと思ったかというと、ギンを見る時の表情と今の表情は全く違うからだ。イヅルにとって桃という存在は、恋ではなくとも必ず何か因縁のあるものなのだろう。乱菊は、他に行くところもないのでここにいるだけなのだ。あるいは、この屋敷の異常さにまだそこまで気付けていないからだとも言える。自分が心を奪われるだけのものは、ここには一つもない。そのことを少し侘しく感じながらも、乱菊は他の二人と同じように目を伏せた。


 課題(いい加減ヤバイ)に追われ、お盆に追われ、計画に追われ、でも更新はやめられないのよ!(ダメ人間)しかしもうちょっと話進めるべきですね…。彼氏一人も出てきてない。一人も出てきてない。(うるさいよ)ところでイヅル喋ってねえ!!(今頃気付くな)頷いたりびびったりばっかりじゃないですか。初めの頃の落ち着きっぷりはどうした。(笑)
 次の回でちょっと番外編っぽくイヅルと桃の話をしようかな、と。本編と同時にUPしようと思っております。イヅ桃ではないです。ギンイヅで藍桃です。でもイヅルは桃が好きなんです。市丸さん頑張ってる。やっぱりどこまでもいい人だよあの人。(笑)

最新の画像もっと見る