梅田望夫「シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代」

             

 読みたい本がある時、散歩も兼ねて本屋の中をウロウロするのも楽しいですが、新刊でない場合は余程の巨大店舗でない限り、もう置いていないことが多いです。その場合は探した後、あるいは始めからアマゾンです。私が改めていうまでもないですが本当に便利です。追加料金で当日お届けサービスもあり、そこまで急ぐことはないので通常配送で注文しますが当日届くこともあります。

 また、本以外のものも安く、先日とあるコーヒーミルを買うことにして値段を調べていたらアマゾンが一番安くて注文しました。これからは何でもかんでもアマゾンでしょうか。

 先日、梅田望夫氏の「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」を読んで感激し、早速、アマゾンで前作を注文したところ、これは珍しく1週間以上要しました。他に読んでいる本があったので問題はなかったのですが、今すぐにでも読みたいのに配送に時間がかかる場合は少し困る、そういうこともあります。



 「指さない将棋ファン」宣言&いくつかのネット観戦記をまとめた本です。指さない将棋ファン宣言には共感できます。私も今後は趣味は将棋鑑賞としたいと思います。
 小中学生まで将棋に熱中していた著者よりも私はもっと将棋実戦から遠い立場ですが、子供の頃、毎日新聞で将棋の対戦記を楽しく読んでいたのを覚えています。将棋はほとんど分からないのに観戦記は面白かった。当時、中原名人や米長九段が多く登場していたと思うのですが、今でも9八の位置に玉がいる棋譜は覚えています。長い間、忘れていたのですが矢内女流が米長玉を使う記事を読んで思い出しました。子供の頃、戦術も構えも何も知らないのに変な位置に玉がいることを不思議に思っていました。
 あれから30年近く経過、何がきかっけだったかよく覚えていませんが、昨年、そうだ将棋だと思い付き、少しずつ勉強するようになりました。いつかは自分も指せたらいいなと考えていますが楽しみの中心はトッププロの対戦を観ることです。タイトル戦のネット観戦が今一番の楽しみ。

 読む順番が逆になってしまいましたが「シリコンバレーから将棋を観る」です。本書は将棋ファンを公言する著者にタイトル戦のネット観戦記の誘い、依頼があり、始めは自分のようなアマチュアにはとても無理と断りそうになるのですが、指さない観戦ファンがいてもいいじゃないかと考え直して挑戦してみるものです。
 そこらへんの経緯や羽生名人、佐藤九段、深浦九段、渡辺竜王との対戦後のインタビューや交流などを通じて、将棋の現在、魅力的な棋士の姿を紹介していきます。ネット観戦記はまだ試行錯誤の段階で将棋の内容よりも棋士の人間性に迫る内容が中心です。私は将棋雑誌を読んだり、将棋ブログを閲覧して1年近くになるので棋士の人間的な魅力などは少しですが知っていて、「どうして羽生さんだけが」ほどの驚きはありませんでしたが、本書も初めて知る内容も多く非常に興味深いです。

 羽生名人の「変わりゆく現代将棋」を取っ掛かりに話しが始まります。名著の誉れ高い「変わりゆく現代将棋」ですが、これまでは何が書かれているのか全く理解できませんでした。どうして二十数手までの定跡が確立している矢倉の導入の5手を検証する意味があるのか。それが本書での解説、矢倉の後手急戦に備えるためにどういう手順で指すべきか、矢倉5手目までの定跡の背景などが分かり、成る程と納得です。
 プロ棋士の文章、プロ観戦記者の記事は我々素人には意味不明なところがあります。このような本で玄人と素人との間を繋げてもらえると本当に助かります。本書での5手目☗6六歩や「どうして羽生さんだけ」での2手目☖8四歩の意味の解説はこれまで誰もしてくれなかったけど、一番興味を持ったものです。

 駒を並べなくても分かり易い棋譜を挿入するといった工夫は第2作の方が進化していますが、こちらもアマチュアの目にしか映らない現場の雰囲気を新鮮に伝えてくれます。素晴らしい良書、将棋観戦ファンは必読です。



 さて、竜王戦は4勝2敗、渡辺竜王の防衛で幕を閉じました。楽しみのネット観戦が1回少なくなったのは残念ですがこれは仕方ありません。渡辺竜王の強さよりも羽生名人の不調を感じました。来年の羽生名人は注目です。年内は順位戦がまだ少し残っていますが、タイトル戦は終了です。

 来年のタイトル戦は1月8日の王将戦でスタートです。会場は、昨年同様に鳴門の大塚美術館の模倣システィーナ礼拝堂です。「シリコンバレーから将棋を観る」でもタイトルホルダーの誰もが挑戦者は羽生名人であってほしいと考えているとありました。当事者含め周りは話題となる華やかな一戦を期待します。明治ラグビー部は早稲田が慶應に勝って全勝で来てほしいと願い、野球ファンは巨人対ソフトバンクが観たい、中日対千葉ロッテじゃつまらないという訳です。
 羽生ではない挑戦者の立場では、タイトルホルダー、主催新聞社、会場、地元関係者などに羽生でなくて残念という空気があり辛いです。ただこれは仕方ないので、実力と人気をつけていくしかありません。久保二冠対豊島六段。豊島六段は読みが深くて確かに強いのですが、まだ経験不足なのか簡単に負けることもあります。振り飛車対決になるのか。熱戦を期待したいです。







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