ツィマーマン/ラトル「ブラームス ピアノ協奏曲第1番」


 ブラームスのピアノ協奏曲第1番、大好きな曲です。青春時代によく聴いた音楽。クラシックファンで、ブラームスの2つのピアノ協奏曲を好きでない方はいないのではないでしょうか。
 第2番は以前メモを書いたバックハウス/べーム盤を愛聴していますが、第1番はこれまで同じツィマーマンとバーンスタイン/ウィーンフィル盤を好んで聴いていました。繊細なタッチ、ゆっくりしたテンポのツィマーマンのピアノがブラームスの青春をスケール大きく描いていました。

 ラトルとアンスネスが組んだ盤、ベルリンフィルではピアノはイマイチですがアバドとブレンデル盤も好きなディスクなので、いよいよ役者が揃ったなという期待がありました。
 クラシック界における久しぶりの超強力盤登場ですが、漠然とした不安もありました。というのは、アバド時代のベルリンフィルはどうも協奏曲がよくなく響きというか録音が変なディスクが多かったこと、それとまだラトルとベルリンフィルとがコンビとして成熟途上だと思うので、この名曲を収録するのはまだ早いのではという思いもありました。ただ、これは聞き逃せません。

 正攻法の堂々とした力強い弦の響き、うねる低音楽器、溶け合う音楽、うーん、ブラームスはこうじゃないとという充実した冒頭の前奏です。そして、ツィマーマンのピアノが始まります。第一印象は、以前のディスクとあまり変わりません。瑞々しいタッチ、スローなテンポ。ブラームスの心情がスローモーションで映し出されるようようです。ただ、以前の演奏と比較すると力強さ、激しさが加わり迫力が増しています。第2楽章、第3楽章も同じように繊細さと力強さがうまくマッチしています。香り立つ音楽、ピアノとオーケストラとが高次元で激しくせめぎ合います。素晴らしい演奏です。

 それと久しぶりにベルリンフィルらしい、地響きがする迫力あるオーケストラの音を聴いたなあという印象を持ちました。アバドが作ったゾクゾクするような繊細で厚みのある弦、魅力的な木管など各パートが華麗に主張する音楽ではなく、全体として一体感のある猛々しい音です。洗練されていてラトルらしい激しい切り込みもあるのですが以前のベルリンフィルに感じたスケールの大きい男らしい響き、カラヤン時代に近い響きが聞こえました。聴きながら、なんか懐かしいなあという印象を持ちました。

 ツィマーマンのピアノ、ラトルとベルリンフィルによるオーケストラ、そしてブラームスの曲の素晴らしさに聞き惚れました。


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