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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

13回目の都教委包囲ネット総決起集会

2017年02月08日 | 集会報告
2月5日(日)午後、飯田橋の東京しごとセンターで「『日の丸・君が代』強制反対!10・23通達撤廃!2.5総決起集会」が開催された。(主催:都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネット 参加117人)
2003年の10.23通達から14年、都教委包囲首都圏ネットの恒例の卒業式前集会も今年で13回目になる。都教委との闘いで確定した訴訟も多いが、10.23通達撤回を目指しいまも闘い続ける人も多い。この日も100人を超える人が卒業式前のこの時期に結集したことが、粘り強い闘い継続の何よりの証拠であり、態度表明だ。
いつものように多彩なプログラムだったが、「現場からの報告」を2つ、「さまざまな闘いの現場から」を2つ紹介する。

●現場からの報告
10年ぶりに担任になったとき、教科だけでなく、ホームルーム、修学旅行などの行事、総合学習などあらゆる場面で平和教育を行った。卒業文集に沖縄での平和学習を書いてくれた生徒もいて、ムダではなかったと思った。
卒業式を前に、秋のころから校長に異動や業績評価にからめて何度も「今回だけは頼むよ」と頼まれ少し心は動いたたが、自分の信念を曲げてしまうと3年間生徒に伝えてきたことがウソになると思った。
卒業式の朝、国歌斉唱時に起立できない自分の思いと内心の自由について生徒に伝えることができた。「Sちゃんが座るんなら、このクラスはみんな座ろうよ」と言ってくれたのは、3年間いちばんわたしを手こずらせてくれた生徒だった。生徒に伝えられたので、すっきりした気持ちで座ることができた。
4次訴訟の原告本人尋問で「10.23通達で都立高校がどう変わったか」を述べた。都立高校に自由や民主主義を取り戻すには、10.23通達を撤回しなければならないと改めて感じた。家庭科教員の友人の勤務校では、生活指導が厳しくスカート丈やリップクリームの色のチェックまでしている。生徒は従順で、一から十まで指示しないと何もできない。調理実習で料理をつくっても、おいしいともまずいとも何もいわず反応がないのでつまらないと、その友人は語った。10.23通達から12年たち、その目標が達成されつつある、恐ろしいことだと思う。
そんななかで現職の教員の使命はとても大きい。「これから本人尋問に行ってくる」と生徒に話してから数週間たって「起立しなかっただけで処分するのはやっぱりおかしい」と言ってきた生徒がいた。
10.23通達は、危険を察知できる教員を現場から排除し、ものいわぬ教員、思考停止する教員をつくるためのものだ。わたしは目の前の生徒や回りの教員に平和の種を蒔き続けたいと思う。
4次訴訟は3月15日(水)11時の期日(527法廷)で結審する。

●最高裁で大勝利した根津さんご自身からの報告
在職中、君が代不起立を貫き、停職中も校門前出勤を続けた根津公子さんが2007年の卒業式不起立で停職6か月処分を受けたことに対し処分取消を求めた訴訟で、2015年東京高裁で勝訴し、16年5月31日最高裁で勝訴が確定した。この勝訴を振り返り、根津さんご自身から報告があった。
 
             根津公子さん
06年卒業式の不起立で停職3か月処分を受けた処分取消訴訟で、2012年1月16日最高裁は、河原井純子さんの停職1か月処分は取り消したが、根津に対しては取り消さなかった。「戒告を超える重い処分は違法」としたが、根津の場合、「過去の処分歴」「不起立前後の態度等」(併せて「過去の処分歴等」)「学校の規律や秩序を害する具体的事情があり」、それが受ける不利益よりも重い場合は処分は適法とされたからだ。
それまでも処分取消なしが続いていたので07年卒業式処分でも、あきらめていたわけではないものの、またそうさせられるのではないかと危惧していたところ、2015年5月高裁の須藤典明裁判長がそうでない判決を出してくれた。
まず「過去の処分歴」については、すでに3回も処分されているのだから「処分を加重する個別具体的な事情はない」と、機械的累積加重処分はダメと判断した。停職6か月の次は懲戒免職しかないと明示したうえで、「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や心情を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示した。12年1月の最高裁判決で憲法判断をしないことになったため「計算」があったのだろうが、憲法19条(思想・良心の自由)の実質的侵害に踏み込んだものである。
次に「特段の事情」についてだ。都教委は、停職出勤と朝日新聞の取材のなかで「不起立を呼びかけた」ことが秩序を乱し、加重処分をする理由と主張した。これに対し、勤務中でなく停職中だったこと、もし処分加重の材料として使うと「思想及び良心の自由を保障する日本国憲法の精神に抵触する可能性があり、相当ではない」と判示してくれた。そして損害賠償も認めた。
この判決が東京だけでなく大阪でも確立することを願う。また自分の裁判では、08年卒業式の裁判が先日結審し5月29日に判決がある。

■さまざまな闘いの現場から
この集会は、狭くいえば3月の卒業式への対策、もうすこし広くいうと都教委の教育に対するものだが、今回は、自衛隊の高校生への働きかけ、いま開会中の通常国会に上提されようとしている共謀罪や相模原やまゆり園事件を口実にした精神保健福祉法改正問題、東京オリンピックへの反対運動、昨年11月の吉祥寺デモへの右翼の暴力など、じつに多彩で幅広い報告があった。そのなかからオリンピック反対と右翼のデモ妨害を紹介する。

●東京オリンピックおことわり宣言
1月22日「東京オリンピックおことわリンク」を140人で結成した。
小池都知事との大きな違いは、わたしたちの姿勢の基本はオリンピック返上であることだ。1940年の幻の東京オリンピックは2年前の38年に中止した歴史がある。わたしたちは中止や延期もありうるというスタンスで問題提起を行っている。
またオリンピックによりさまざまな災害が起こるという視点でとらえている。都営霞ヶ丘アパート住民の立ち退き、野宿者強制排除、自然破壊、さらに「共謀罪なしには安全なオリンピックが開催できない」という無茶な理屈まで主張する。東京の学校ではオリンピック読本や学習ノートが配布され年間35時間の授業を強制されている。「オリンピックはいやだ」と言わせない体制が学校のなかでできつつある。また2020年には生徒の「動員」の問題も起こるだろう。オリンピックは「災害のデパート」だ。
オリンピック反対というと東京では変人扱いされるが、たとえば福島や関西ではなぜオリンピックかという人がたくさんいる。世界的な視野でみると、リオでもピョンチャンでも市民の反対運動は大きい。近代オリンピックを突き放している
今後、リオやピョンチャンの反対市民を招いた集会、デモ、フィールドワークなどを行い、さまざまな視点からオリンピックに反対する人たちへ「場」を提供していくつもりだ。

●「生前退位!?皇族解散しろ!11.20天皇制いらないデモ」への右翼・警察の暴力
昨年8月8日の天皇メッセージは、よく読むと「疲れたから辞めたい」というようなものではない。天皇の仕事について、国民と触れあい、前に出ていろんな人を励まし、自分もそのなかから学び、いきいきと社会に内在するものだが、80を過ぎて自分はもうできない、だから息子に譲りたい、今後もこうした天皇の仕事を支持してほしい、というものだ。だからメッセージの最後は「国民の理解を得られることを,切に願う」という言葉で終わっている。そういう天皇像をわたしたちに直接迫る、それが代替わり状況だ。
天皇制は差別の元凶、わたしたちを精神の奴隷にする天皇制、年間250億も使う天皇制、退位ではなく、これを機に天皇制をやめるべきだと考えデモを企画した。
11月20日100人が参加し吉祥寺デモを開始した。ところが大変な右翼の攻撃で、車のガラスは割れ、トラメガは何台も壊され、40-50枚用意したプラカードは奪い去られた。それなのに700人出動した機動隊は1人も逮捕せず、それどころか適当にやらせては少し離しの繰り返しだった。物損は25万円に及んだ。多額のカンパをいただきありがたかった。
天皇制反対を街頭で行う権利はほとんどないといえる。「校門の前で憲法は立ち止まる」という言葉があるそうだが、まさにこの国では天皇制の前で憲法は立ち止まる、天皇制批判の表現の自由はない、ということではないかと改めて考えた。
今後のことだが、8.8メッセージは媒介なく直接の支持の強制であり、一人ひとりが天皇の前に引き出されているようなものだから「天皇制いらない」という声を直接出していくべきだと感じる。
いま右翼や警察の暴力への抗議署名を集めているので協力をお願いしたい。また今度は300人規模でのデモをもう一度行う予定なので参加をお願いしたい。

その他、高校生へのオリンピック教育反対のチラシ撒き、大阪の処分や再任用闘争の報告、北村小夜さん(元教員)の「改めていま『教室から戦争がはじまる』」という講演があった。
大阪の闘いは「グループZAZA」のブログをみていただきたい。
北村さんの講演は「校門は営門に通じてゐる 学生生徒の生活もそのまゝが戦ふ国家の一分野」という昭和18年3月のショッキングな写真雑誌の文言から始まり、91歳の北村さんの「軍国少女への道」という生い立ちの記憶が話された。包囲ネットのこのサイトに詳しい報告がある。
最後に「日の丸・君が代」強制と子どもたちの戦争動員に反対する集会決議と「11.20吉祥寺デモ」への右翼・警察一体の闘争潰しへ抗議する特別決議を全員で採択した。

            北村小夜さん
この日の主催者あいさつは「トランプが就任してからアメリカ国内の対立・亀裂がいっそう深まっている。世界的にも右翼勢力が勢いづいている」という情勢分析で始まったが、終わりの言葉も「トランプが大統領令を連発し、独裁国家であるかのようだ。どんな制度であっても、使うわたしたちの運動がなければ簡単に独裁になる。粘り強く運動を続けよう」という言葉で締めくくられた。
ただトランプ登場より先の4年前から安倍政権(第二次・第三次)は、日銀総裁、NHK会長、内閣法制局長官などの首を次々にすげかえ、選挙に強いこともあり、金融、報道、教育、軍隊、憲法を意のままにしてきた。まさに安部の「独裁」国家である。天皇退位問題にからめ、ひょっとすると皇室も意のままにし「支配下」に置こうとしているのかもしれない。
またトランプは、イスラムへの差別排外主義を非難される。しかし差別に関しては石原元都知事は中国人、フランス語、女性、障がい者、ニート・フリーターなど、「人の顔をみると差別する」といわれる「差別の大先輩」である。日本ではトランプ現象はずっと前から続いている。

☆もの持ちがよく、2005年2月6日の第1回のプログラムが残っていた。高橋哲哉さん、三宅晶子さん、大内裕和さん、小森陽一さんの教基法改正反対の学者たち、尾山宏弁護士、吉峯啓晴弁護士、伊沢けい子都議らがスピーチしている。いまとはずいぶん雰囲気が違う。会場はたぶん日本教育会館だったと思う。12年も前のことなので具体的なことはまったく覚えていないが、プログラムによると被処分者・被解雇者、予防訴訟原告、千葉・神奈川の高校教員、国労争議団など多くの人が発言した。時代を感じるものもあるが、振り返るとこの間状況はどんどん悪くなった。しかし12年間粘り強く闘い続ける人も多い。
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