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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

5月の都庁第二庁舎前ビラ撒き

2010年05月31日 | 日記
5月27日(木)朝、都庁第二庁舎前で増田都子さんの定例ビラまきを行った。この日のビラは「官(都教委)の違法(汚れた手)を見逃してよいのか?」というタイトルで、6月3日の分限免職取消訴訟に事前に提出した、行政法学者の意見書の要旨である。

さて、これとは別に5月24日ごろ、2月19日(金)の都議会文教委員会の速記録が公開され、「教育委員会に対し教科書採択の真相究明のため再審議を求めることに関する請願」(21第130号)の審議内容が明らかになったので、紹介したい。この請願は、「なぜ、適正を欠く教科書調査研究資料が作成されてしまったのか、なぜ、東京都教科用図書選定審議会委員はこの不適切な資料を見抜けなかったのか、また、なぜ当該資料によっても低位にあった当該教科書が採択されたのか、真相を究明する必要があり、再審議を行うよう求めるもの」で、鎌田慧さんほか695人が求め、増田さんらが提出したものである。教科書調査研究資料がどのように間違っていたかはこのサイト、請願についてはこのサイトでみることができる。
まず、岡田眞理子都議(中央区 民主)が、間違いが起こった経緯について質問した。高野敬三・都教委指導部長は、「実際には記載のない項目が一部あることは事実」であることを認めたうえで、間違いが起こった原因について「調査研究資料は教科書に改訂があったとき、23人の中学校社会科教員を調査員として委嘱し、作成している。扶桑社教科書は05年度に改訂があり01年度に作成したものをベースに修正したが、その段階で『記載事項の削除漏れ』があった」と答えた。つまり間違いは09年度だけでなくすでに05年度の採択から間違っていたわけである。したがって09年度の都立中高一貫校新設4校だけでなく、06年開校の小石川以下、10校中じつに9校の教科書採択が間違っていたことになる。
ただし高野部長は、審議会が答申した4種類の資料のなかで、調査研究資料は主たる資料ではなく、教科書採択資料の基礎とはなっていないと、古賀俊昭都議(日野市 自民)の質問のなかで説明した。
これに対し、畔上三和子都議(江東区 共産)は「資料は間違っていたけれども、採択には影響ないんだと。あくまでも参考資料」に過ぎないなら「一体何のためにこの資料をつくったのか、まさに自分自身がやっていることに意味がないと自分で認めたことになるのではないか」と追及した。しかし高野部長の答弁は「最も重要とされている教科書採択資料の基礎となっているものではない」というもので、変更はなかった。
また、岡田都議の「(請願では)調査研究資料で低位にあった扶桑社の歴史教科書が採択されたといっているが、評価の低いものがなぜ採択されたのか、わかるようにご説明をお願いしたい」という質問に、高野部長は「調査研究資料は順位をつけて教科書の優劣を判断したものではなく参考資料の一つである。都教育委員会は委員の無記名投票による採択を行っており、個々の委員がどのような理由で扶桑社の教科書に投票したかは定かではございません」と答えた。
畔上都議は「学校ごとの調査研究資料を重視しているとのことだが、大泉高校附属中学では『インターネットによる調べ学習の仕方を紹介している箇所数や実際に調べ学習に活用できるホームページアドレスの項目数』の調査で扶桑社は数値が低い、他の項目の数値も特段高いわけではない」と質問した。これに対する高野部長の答弁は「箇所数の多い少ないによって教科書の優劣を判断したものではない。各教科書の違いが簡潔明瞭にわかるように作成したものだ。各委員が総合的に検討を行った上で、各中高一貫教育校等に最も適している教科書を適正かつ公正に採択している」と答弁した。
畔上都議は「国語や数学など、ほかの教科は学校ごとにさまざまなのに、歴史教科書だけがどの中高一貫校も、そして特別支援学校も同じだというのは、やっぱり政治的意図があるんじゃないかと考えざるをえない。都教委の教科書採択の方法そのものに問題があって、やっぱりどうして扶桑社の教科書が採択されたのかを明らかにしてほしいというこの請願者の気持ちはもっともだと思う」と、質問を締めくくった。
この請願に対し、民主党が「今後の対応を明らかにすることは要望するが、再審議を求めるまでではない」という方針だったので、賛成は共産、生活者ネットの2人に留まり多数決で否決された。

この機会に、東京都教科用図書選定審議会の資料をみてみた。審議会は09年4月14日、6月1日、7月10日の3回行われた。第1回は教科書の採択方針、第2回は問題となった教科書調査研究資料、第3回で教科書採択資料を審議し答申した。
教科書調査研究資料は、(1)内容(ア概括的な調査研究、イ具体的な調査研究)、(2)構成・分量、(3)表記・表現および使用上の便宜の3分野に区分されている。社会(歴史的分野)の場合、「ア概括的な調査研究」は7項目の項目別掲載箇所数、「イ具体的な調査研究」は、問題になった「歴史上の人物名とその業績」「我が国の文化遺産を示す事項一覧」「国際関係や文化交流を示す事項一覧」「学習指導要領に示していない内容の有無」「北朝鮮拉致問題の扱い」「神話・伝承」「我が国の領域をめぐる問題」の7項目である。「北朝鮮拉致問題の扱い」「神話・伝承」「我が国の領域をめぐる問題」と、都教委のいかにも「つくる会教科書」を通そうという姿勢がうかがえる項目が入っている。
もうひとつ、新設4校各校の「各教科における学習指導の展開」から検討した、各校の特色に応じて作成した学校ごとの「教科書調査研究資料」が作成された。
最終答申の教科書採択資料は、「各校の特色に応じて作成した学校ごとの調査研究資料」から2または3項目、教科書調査研究資料の「内容」から4項目、「構成・分量」から2項目、「表記・表現および使用上の便宜」から2項目の合計10または11項目からなる。各項目を、星1つから4つで評価した一覧表である。星の数は、箇所数の最大最小の差を25%ずつに分けて最大を星4つ、最小を星1つと機械的に4段階に区分したものに過ぎない。
また「各校の特色に応じて作成した」とあるが、中高一貫校は10校あるので、各校2-3項目なら10種や20種あって不思議ではない。しかしじつは6種しかない。それも「日本の文化・伝統を扱っている箇所数(江戸時代以降)」が5校、「身近な学習資源を活用している箇所数」が8校、「課題、問いの数 」が5校、「世界の歴史とかかわらせて我が国の歴史を取り上げている記述の箇所数」が4校と、4種類に偏っている。まるで都教委がむりに4種類に集約させたような調査結果である。
本当に「各校の特色に応じて作成した」といえるのは、小石川の「大学や国際機関を活用している箇所数」と大泉の「インターネットによる調べ学習の仕方を紹介している箇所数や、実際に調べ学習に活用できるホームページアドレスの項目数」ぐらいのものである。それでいながら第3回審議会で中高一貫校の委員が「中高一貫の特色についてはそれぞれの学校で調査項目を変えて、その項目も非常に適切だと思います」議事録p22と高く評価しているのだから、笑ってしまう。
第3回審議会では、委員から「採択(案)という言葉をみると、複数の教科書から具体的に絞った案が提示されてくるのかと、この標題から私は読んでしまった」という質問が出ている」議事録p19。委員本人が、しかも最終の審議会でこんなことを発言しているありさまだ。東京都教科用図書選定審議会が答申するのは「各教科書の違いをわかりやすくする一覧表」に過ぎないこと、しかも6人の教育委員が「どのような理由で扶桑社の教科書に投票したかは定かではございません」(高野部長)という程度の答申なのである。
にもかかわらず、都教委は合計1万2000筆の「つくる会教科書採択反対の請願」に「東京都教科用図書選定審議会から答申を受けた教科書調査研究資料及び教科書採択資料等を踏まえて慎重に検討し、最も適切な教科書を採択しております」(21教指管第656号 09.8.26)と堂々と答えている。
審議会も答申も、知事や一部の都議の意向に沿って都教委指導部がつくった採択方針のレールの上を走っているようなもので、形式的な存在でしかない。
いちばんの被害者は、こんな採択過程で選ばれた「悪名高い」扶桑社教科書で勉強させられている都立中高一貫10校の生徒(1学年1400人、3年で4200人)である。
畔上都議がいうように、「都教委の教科書採択の方法そのものに問題がある」と考えざるをえない。

都議会第15委員会室(文教委員会が開催されたのは第3委員会室で、この部屋ではない)
☆27日は入学式で不起立した教員3人の処分が都教委定例会で審議される日だった。そこでこの日は都高教の組合員が「都教委は教職員への不当処分をするな!」というオレンジのビラ配りをしていた。ウェブ検索すると、都教委は9時30分からの定例会で処分(戒告1人、減給10分の1.1月 2人)を決め午後都教委の職員が各校に出向き発令したそうだ。入学式もそうだったが、いまは研修センターで発令せず、各校に出向くようだ。4年前の増田さんの処分のときに、わざわざ自宅のポストにまで出向いて投函したことを思い出した。

●次回の増田さんの免職取消裁判控訴審は6月3日(木)14時30分から東京高裁822号法廷で行われる。
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