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朝鮮学校への即時「無償化」をもとめる大集会

2011年02月28日 | 集会報告
青空がひろがり比較的暖かかった2月28日(土)朝、代々木公園野外ステージで「朝鮮学校への『無償化』即時適用をもとめる大集会」が開かれた(主催:「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会 共催:フォーラム平和・人権・環境 参加2000人 賛同団体324)。
ちょうど1年前の2月、中井洽(ひろし)拉致問題担当相(当時)が朝鮮学校の無償化からの除外を文科相に要請したことが発覚し、全国から抗議の声が上がった。
インターナショナルスクール、中華学校、韓国学校などは昨年4月から高校授業料無償化の対象となったが、全国10校の朝鮮学校にだけ適用されなかった。8月末には文科省の検討委員会が「適用は妥当」との報告を出し、民主党政調会の討論を経て11月に正式に「適用」すると発表した。しかしいまだに適用されていない。その理由は、昨年11月23日北朝鮮が延坪島を砲撃した翌日の菅直人首相の「プロセスを停止してほしい」という発言だった。
3月1週には各校で卒業式が行われる。卒業式直前の大集会だった。集会には、東京・神奈川・茨城の朝鮮学校の生徒も含め2000人が参加した。

まず主催した連絡会から、下記のようなあいさつがあった。

昨年3月ウリの会が集会を呼びかけわずか1週間で賛同団体70団体が集まり、1000人近くの規模の集会を代々木公園で行った。この問題は差別と偏見に満ちた日本社会の問題を典型的に表す問題なので、たくさんの市民団体の結節点となった。
4月に無償化が実施された。学ぼうとするどの国籍の人にも適用される画期的な法律だった。しかし10校の朝鮮学校だけは「保留」とされた。そこで6月に、賛同団体150団体、1200人で2回目の集会を行った。
政府は第三者機関を設置し客観的基準で無償化を行うというからには夏休みには結論が出ると思った。しかしずるずると結論を延ばしたので9月に賛同団体200団体で3回目の集会を開催した。11月に文科省は朝鮮学校への適用の審査基準を「正式決定」し今度こそ実現すると思ったら、凍結された。怒り心頭である。
これは在日だけの問題ではない。差別と偏見と排外主義に満ち人権を無視した日本社会の問題だ。全国の仲間とともに、最後まで粘り強く絶対退かない決意で闘いぬこう。

集会では15人の人が発言した。発言は当事者である東京や神奈川の朝鮮高校生、校長会、オモニ会の方、日本の大学生や北海道教職員組合など連帯する人々、愛知・三重・福岡など地域で取り組む人々の3つに分かれる。
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東京朝鮮中高級学校高級部の生徒会会長は次のように語った。

あと1週間もすれば3年間通った朝鮮高校を卒業する。卒業を控えどうしても胸に引っかかっていることがある。朝鮮学校に対しいまだに無償化措置が適用されていない問題だ。この問題が始まってからわたしたちの学校生活はどれほど削られてきたことだろうか。勉強の時間、部活の時間、休みの日にさえ署名活動、ビラ配り、デモへの参加などに費やしてきた。
その過程で、これは単なるおカネの問題ではなく、わたしたち自身の権利に関する問題だと気付くことになった。多くの外国人学校では無償化が実施されている。なぜ朝鮮学校だけ除外されるのか。わたしたちには朝鮮民族、ウリハッキョ(民族学校)に対するあからさまな差別に思える。
昨年3月、田中真紀子議員など当時の衆院文科委員会の委員が学校を視察した。そのとき卒業目前の1年上の先輩たちは後輩たちにできることをと、急きょ街頭で5000人の署名を集め手渡した。その後、わたしたちの学年は全国の朝鮮学校の仲間と力を合わせ10万人の署名を集めた。しかしいまだに朝鮮学校への無償化は実現していない。
振り返ると、この1年は権利獲得のための1年だった。その間在日同胞や多くの日本人の協力を受けたことに心から感謝する。しかしただ頼るだけでなく、これからも自分たちの力で解決していきたいので、卒業後もがんばっていきたい。今後もご理解とご協力をお願いしたい。
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日本人の大学生から連帯のスピーチがあった。朝鮮学校出身者が何人も在籍する一橋大学1年生のスピーチを紹介する。

在日の人と交流するサークルに入っている。つい2週間前16人で関西ツアーを行った。メインのテーマは、高校無償化問題と橋下知事の補助金停止問題だった。
大阪の朝鮮高級学校生徒会の高2の女性が「自分たちの問題だから自分たちが先頭をきってやっていかないといけない」と語ったことが強く印象に残った。
しかしこの問題はやはり日本社会の問題だと考え、最終日に大阪駅前で署名活動を行った。補助金停止問題はほとんど知られていなかった。一人ひとりに「いまマスコミでいわれているようなことではないんだよ」と説明すると「そうなんだ」と言って普通に署名してくれる。日本人朝鮮人ということではなく、同世代として同じ問題だと共感してくれるようだ。
まだまだこの問題への関心は低いので、在日の学生と日本人の学生をつなげるような活動ができるとよいと思う。
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また、「外国人学校民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」の田中宏さんから注目すべき発言があったので紹介する。

このネットワークは、歴史がある朝鮮学校、中華学校から新しいブラジル人学校まで全国の外国人学校の制度的確立をめざし、学校関係者、市民、法律家がつくった会だ。その立場から一言お話する。
従来、文部行政は1条校を対象の中心にしていた。しかし政権交代により、この無償化で、それ以外の学校も同じように扱うことに踏み切ったのは画期的なことである。しかし大きな欠陥がある。いうまでもなく朝鮮学校の除外である。31の学校にはすでに就学支援金が支給されている。しかし10校の朝鮮学校だけは除外されている。その理由はきわめて政治的なものだ。
かつて奨学金を打ち切られた留学生裁判にかかわったことがある。この裁判の判決で「留学生らは自己の意志の及びようもない政府の要請を常に念頭において、不安のうちに勉強に従事せざるをえない。右のような解釈は教育制度の根本を揺るがすものでとうてい許されるものではない」と書かれている。留学生が国に全面勝訴し、教育に政治が介入することは厳しく戒められてきた
日本における外国人の人権問題あるいは東アジアにおける共存の問題にとって朝鮮の問題は中心的な問題だ。これをいかにクリアするかが今後のわたしたちの将来にかかっている。
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愛知では2月19日に繁華街の名古屋・栄で200人が参加し街宣活動を行った。署名は累計で2万筆を超えた。三重でも署名は2万筆を超えた。北海道教組と広島県教組から、平和教材や歴史教材の編集、韓国の労組への連絡などで日常的に地元の朝鮮学校と交流していることが紹介された。
また広島や京都の朝鮮学校の生徒がつくった詩のアンソロジーが朗読された。
最後に集会決議を採択し行動提起が発表された。行動提起は、1)無償化適用まで継続して闘う、2)自治体の補助金カットにも全力で闘い抜く、3)集会決議を2月28日に菅首相と高木文科大臣に届ける、の3項目である。なお決議はこのサイトで読みことができる。

☆集会終了後、NHKホール前から渋谷駅を経て神宮通り公園までデモを行った。先頭はチャンゴ、プク、ケンガリのにぎやかな楽隊だった。「高校無償化をすべての高校に!」「朝鮮学校を排除するな!」「国ぐるみの差別を許すな!」「東京は補助金を削減するな!」と、若者が繰り出す渋谷の街に、シュプレヒコールが響き渡った。
渋谷駅付近では日の丸の旗を掲げ、デモ隊に向かって怒鳴っている一団がいた。
集会で95歳の女性の短歌がいくつか紹介された。
わが10代のころより見聞きする差別なり 朝鮮人を差別する日本人はだれぞ
「無償化は在日の問題にあらず 日本人が歴史の責任を果たすことなり」
恥ずかしくないのか、菅さん日本人 我は恥ずかしい、朝鮮の子だけはずして
この歌の心を汲み取ってほしいものである。
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