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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

憲法の最大の危機を実感させられた3.1朝鮮独立運動103周年東京集会

2022年03月03日 | 集会報告

2月27日午後、今年も文京区民センターで3.1朝鮮独立運動の「朝鮮戦争を終わらせよう!植民地支配の清算を! 3.1朝鮮独立運動103周年東京集会」が開催された(主催:「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク(旧100周年キャンペーン) 協賛:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会 参加150人)

毎月19日に議員会館前で開催される総がかり行動で、主催者あいさつをされることが多かった高田健さんが昨年11月の総選挙で敗れた後、どのように現状分析し、どのような改憲反対運動の展望をもっておられるか大きい関心があったので、高田さんの講演をメインに紹介する。また李泳采(イ・ヨンチェ)さんの3月の韓国大統領選の行方と意味についての講演では「韓国では市民が国家を変えると考える人が2/3、日本では歴史修正主義の価値観をもつ議員が2/3、この2つの勢力がぶつかっているのが日韓問題の根本的な原因」「1987年のキャンドル革命で市民が血を流しながらつくったのが現在の韓国憲法。与えられたのでなく国民が提案し権力者にこの枠でやりなさいと命令し、権力を縛る」など、わたしたちに耳の痛い言葉をいくつも聞かされた。

岸田改憲の動向と東アジアの緊張

                          高田健さん(総がかり行動、東北アジア市民連帯行動
2000年に憲法調査会という特別な機関(2007年から憲法審査会)が国会に設置され、ずっと傍聴し、もう22年になる。いま、憲法「改悪」で最悪の時期、困難な時期が来たことを実感している。
3つの側面がある。
まず国会の憲法審査会では、憲法の審議への「オンライン国会」導入が議論されている。緊急事態で議員が出席できない場合、国会審議にオンラインを導入する、たとえば議員会館の部屋からオンライン出席することがあってもいいのじゃないか、そのとき憲法に緊急事態条項を入れてオンライン国会を認めていくという、さももっともらしい議論が、毎週木曜に行われ、参議院選前にまとめたいという話になっている。これが日本国憲法のいまの危機だ。
もうひとつは、7月の参議院選のあと3年大きな国政選挙はなくなる。もし参議院選で改憲勢力が2/3を取ればじっくり準備を進められる。その間に国民投票までやってしまおうというスケジュールが現実化してきている。マスコミは「黄金の3年」と呼ぶ。
さらに今回のウクライナ危機の問題だ。これにかこつけて安倍元首相は改憲と軍備増強を唱える。これらが20年来の憲法の最大の危機とわたしが認識する理由だ。
●21年自民党総裁選で安部路線を受け入れた岸田首相
昨年10月の総選挙でわたしたちは政治変革に失敗し、衆議院では改憲勢力が2/3どころか事実上3/4の状態になった。9年続いたアベ・スガ政権末期に、政策に失敗し支持率が下がり、立て直しのため表紙を変え、岸田政権が誕生した。なぜ安倍(以下、政治家の名は敬称略)は政権を投げ出したか。体調悪化を理由にしたが、実際にはコロナ対策に行き詰ったこと、任期中に憲法「改正」実現の見通しが立たなくなったからだ。8月28日の辞任演説で「改憲できず断腸の思い。世論が賛成してくれない」と正直に言った。
岸田文雄は総裁選を前に安倍の支持を獲得しようとして、安倍に条件を付けられた。「護憲・改憲の立場をどうするのか、とくに『憲法九条は世界遺産』という著書まである宏池会会長の古賀誠との関係をどうするのか」と聞かれ、「古賀とは手を切る」と答え、以降、岸田の宏池会は改憲へと大きく舵を切り9月の総裁選に勝利した。菅首相の訪米で台湾有事の際の日米の役割に言及した日米共同宣言の継承が大きな条件だったと思う。また総裁選で高市早苗候補がいった「軍事費のGNP比2%へ拡大」を(すぐにというわけではないにせよ)岸田政権の政策に取り入れた。
●米国の「自由で開かれたインド・太平洋」と中国の「一帯一路」の衝突
中国の一帯一路構想に対抗し「一方的な現状変更に反対する」と米国は繰り返し主張し、自分の側の「一方的な現状変更」であるはずの「QUAD」(日米豪印)、「AUKUS」(米英豪+将来は日本も)、ファイブ・アイズ(米英豪加ニュージーランド)など新しい軍事連携強化を擁護する。安倍政権末期から東アジア、西太平洋では軍事的緊張が急速につくり出されている
●台湾有事と軍事同盟強化
台湾有事の問題は、2015-16年ごろわたしたちが反対した安保法制の重要影響事態と認定されれば、集団的自衛権を行使し参戦や武力行使が可能になる。
この時期に急がれている「改憲」は軍事力強化、軍事同盟強化で憲法9条を事実上突破している。憲法に合わないので、合わせるため、合憲化するために憲法を変えようとしているのではないかと思う。日中間には4文書、日朝の間には平壌宣言という平和のためにつくり上げた歴史的文書があるが、それが過去のもの、反故にされてしまう。わたしたちはこのまま見過ごすことはできない。米中の覇権争いのなか、米国にのみ足を置く一方的立場の政府のやり方、そのため「改憲」しようとしているが、わたしたちは何とか打ち破っていかなければならない。
●明文改憲へ、「黄金の3年」
岸田政権の「戦争のできる国」づくりは、従来の「専守防衛」や楯と矛のような日米の役割を規定した「日米安保体制の枠組み」の考え方をほとんど崩している。それが「改憲」という動きをつくっている。前述の「黄金の3年」は自公政権にとって憲法論議ができる余裕のある時期に入る。
安倍の時代には世論を変えられなかったので、世論をどうやって変えるかが成功のためのカギになるので、岸田政権は「憲法改正実現本部」を設置した。古谷圭司本部長は自民党のなかでもっともタカ派と言われる。前の二階幹事長のときにも全国で世論づくりをという動きがあったが、そのときは都道府県連が動かず企ては破綻した。岸田に変わり、全国にタスクフォースをつくり憲法集会を始めた。といってもまだ古谷の地元・岐阜で県議40人対象に開催しただけだ。
●オンライン国会導入の論議
オンライン国会については、すでに参考人質疑も行われた。憲法56条に「総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とある。自民党議員などはコロナや南海地震で1/3参加できないとき、国会議決が成立できなくなる。それは大変なので憲法を変える必要があると繰り返し言う。また衆議院規則148条に「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない」とある。
参考人の学者は、オンラインでも出席と解釈すればよいという意見と、それはムリなので変えるなら憲法を変えるべきという意見に分かれた。従来、審査会を毎週開催ということはなく、せいぜい1年に10回程度だった。もともと改憲派は回数を多くしようとしていたが、昨年の選挙で50人の委員のうち野党は12人程度に減り、力関係で毎週開催ということになっている。自民党改憲4項目の「緊急事態条項」に絡めてこの問題が議論されている。立憲民主はオンライン国会問題は憲法と切り離し、解釈の問題として議論すればよいという。ただ政党のあいだではオンラインでよいとの考えでまとまっているので、とりあえず解釈で解決し法律をつくっても、引き続き憲法への「緊急事態条項」導入の動きを引きずることになるだろう。それが「黄金の3年」でやられる危険性がある。
これからわたしたちはどうするか。野党と市民の共闘による与党との対決を主張し、昨年の総選挙で行ったが、十分な結果を達成できなかった。参議院選で2/3を阻止できるかどうか、数字の問題だけでなく難しくなっているのが現状だ。32の1人区で野党共闘ができるかどうか、維新の伸長もあり2つの勢力の対決構図でなく、3つあるいは4つの対立ということになると、容易ではない。
もう一度市民と野党の共闘を再構築し与党を破るという努力と合わせて、第2のラインとして万一3年間に国民投票を仕掛けてきたら、反撃し改憲を阻止していくということも考えないといけないのではないかと思う。
ただ総選挙後の共同通信の調査で投票の際、重視した政策は「経済政策重視が33%、コロナ対策重視が14.9%、改憲重視は2.1%」しかなかった。読売は憲法に絞った調査(2021年5月3日)で、憲法改正の賛否は「賛成56%、反対40%」だが、9条改正に絞ると「賛成37%、反対56%」だった。緊急事態条項や最近のアジア情勢など対外関係が厳しくなってきたとき、この数字がどうなるか。これから自民党がやる全国・草の根での世論づくりに対抗し、「憲法を変えないほうがよい」という世論をあらためてつくることができるかどうかがいま問われている。
アジアの平和の問題に直接密接に日本がかかわる危険な役割を果たそうという動きに対し、憲法の問題で正面から改憲派と争い、この軍事大国化を阻止する闘いがこれから3年続くのではないかと思う。

2022年韓国大統領選の行方と日韓関係の展望――若者の政治意識の分析を中心に

                李泳采イ・ヨンチェ 恵泉女学園大学教授)
3月9日投開票の韓国大統領選の行方と意味を考える。
歴代政権の性格を考えるとき、1987年6月の民主化大抗争が大きな分岐点となる。87年以前の韓国は朝鮮戦争休戦から約30年間、軍事政権の時代だった。人権・自由・民主は抑圧され、財閥と政権が癒着し、保守メディアは反共イデオロギーをもち独裁政治でやってきた。大きな犠牲を払いながら根本的な改革はできなかった。
87年6月から金大中、廬武鉉と30年間、文民政権・市民政権をつくってきた。李明博・朴槿恵の保守政権はあったが民主化の大きな流れを変えることはできなかった。しかし朝鮮戦争終結、財閥解体など経済改革、大統領権限を変える政治改革、非正規雇用問題・国家保安法撤廃などの社会改革は残念ながらできなかった。それに対し市民が立ち上がったのが2016-17年のキャンドル市民革命だった。
●文在寅政権の誕生
文在寅政権の誕生は第二の市民革命だった。これが第1期で今年の大統領選挙により第2期として根本的な改革を実現したい。しかし保守陣営は1期で終わらせたい、キャンドル革命を終わらせたいというのがこの大統領選の意味だ。第2期をつくれるのかつくれないのか。
2016年総選挙のとき朴槿恵は2/3の圧倒的な議員に支持され、再選されれば改憲し父・朴正熙のように終身大統領を目指すことが予想されていた。野党・民主党は何をしてもこの選挙は負けると考え、何もしていなかった
しかし結果は驚くべきことに民主党が過半数の議席を取った。20代30代の投票率が10%も上がったからだ。保守も、このままでは朴槿恵は大統領選で負けるだろうと亀裂が生じた。保守の側が朴の友人・崔順実事件を暴露し朴を降ろしたことがキャンドル市民革命の始まりでもあった。
2018年地方自治体選挙と20年総選挙でも民主派・進歩派が2/3の議席を取り勝利した。日本の政界とは対照的だ。韓国では、市民が国家を変えると考える人が2/3、日本では歴史修正主義の価値観をもつ議員が2/3、この2つの勢力がぶつかっているのが日韓問題の根本的な原因だ。
●キャンドル革命の完成を要求する国民の命令、その課題とは
キャンドル革命で誕生した文在寅政権は「機会は平等に、過程は公正に、結果は正義に」と訴えていたのに結果は正反対になり、いま一番苦しい立場にいるのが20代だ。20代の失業率が高い。正規職就職率がソウル大学法学部卒で30%、地方の大学では1%、10年間一度も働き口のない人が100万人くらいいる。新自由主義、グローバル格差問題の歪みが若い人にきている。にもかかわらず2年の兵役は続いている。人生に希望がみえない。文在寅政権への期待が怒りに変わった
20代の人からは、社会をリードする革命世代=40代50代の人が韓国を悪化させる張本人に見える。キャンドル革命のうえで行われているこの大統領選挙、奇形になっているがキャンドル革命が文在寅に望んでいたことがいくつかあった。コロナの克服、検察権力改革などの社会改革、保守メディアの改革、セウォル号沈没事故の真相究明、そして非正規雇用をつくっているのは財閥であり、サムスンを含めた財閥改革、サムスンに手をつけない限り改革はできない
1987年に市民が血を流しながらつくったのが韓国の憲法だ。与えられたのでなく国民が提案し権力者にこの枠でやりなさいと命令し、権力を縛るものだ。
もうひとつの課題は南北和解と朝鮮戦争終結だった。文在寅は不幸だった。あまり準備しないままキャンドルデモで大統領になった。保守派が2/3でほとんど権限がない状態だった。そのなかで経済改革から先にやればよかったのに、南北関係に先に取り組んだのでうまくいかなかった。文政権は国民の要求を実現することはできなかった。 
保守は1‐2年は息を潜めていたが、財閥、メディアと一体になり、文在寅の弱いところから攻撃を始めた。20代を利用しながら政権交代を実現しようとしている
文政権の失敗に対し、進歩派も怒りを持ち保守派はこれを狙ってきた。その結果、ソウル市長選、プサン市長選で惨敗した。それでも文政権支持率は現在48%もあり、李候補、尹候補より高い。文政権支持層の票がどこに行くかが問題だ。民主化運動勢力は、いま40代50代既得権の勢力となっていてダブル・スタンダードが問題になる。
●2022年3月韓国大統領選の行方
大統領候補について触れる。前京畿道知事・李在明(イ・ジェミョン)は貧しい農村で生まれ障害をもち検定を経て、光州民主化運動がきっかけで人権弁護士となった。経済に強い。文大統領も弁護士だが、行政経験がほとんどない。李候補はキャンドル第2期にふさわしい。
対する尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補は元検察総長で非主流の保守勢力だ。中道保守は候補を出せなかった。それはキャンドル市民革命の影響だ。
2週間前には10%の差があったが、2日前(2月25日)には拮抗するところまで来た。最後に残っているのは保守候補・安哲秀(アンチョルス)との一本化だ。2月28日の投票用紙印刷開始までには間に合わなかったが、3月4日の事前投票開始の前や9日の投票日前日まで一本化の動きが続くだろう。再投票の可能性もあるし、勝っても負けた側が認めない可能性もある。
保守の尹候補が勝つと何か起こるか。北朝鮮への危機を煽って戦争を仕掛けることが、唯一の政権維持策となる。すると日本では憲法「改正」の道が出てくる。
キャンドル革命を受け継ぐ李候補が勝てば、韓国ではじめて平等、公正、正義、共助の社会をつくっていくことができる。

なおこの集会全体をユープランの方が動画で配信しているので、関心のある方はご覧いただければと思う(このサイト)。とりわけ映画「植民地支配に抗って――3・1朝鮮独立運動」は出色の出来栄えなので、サイトの8分から32分の24分間の映画をぜひご覧いただければと思う。
3.1独立運動は、1919年3月1日の1日だけの抵抗運動ではなく、その後も1年以上続き、また地域としても232府郡島のうち212地域200万人が参加した全国的な運動で、原敬内閣は軍隊を出動させ犠牲者が7500人以上に上ったこと、日本の侵略は戦後解放まで続いたのに被害者に補償せず清算していないこと、現在も就学支援金を朝鮮学校にのみ支給しない差別を行っていることがよくわかる。最後はソウルにオープンした植民地歴史博物館や2019年訪韓ユーススタディツアーで締めくくられる。
映画のなかで解説していたのが、わたくしが講演を聞いたことがある加藤圭木さん、李泳采さん、矢野秀喜さん(朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動事務局長)外村大さんなどの豪華メンバーだった。
また、主催者あいさつで加藤正姫さんが強調した、徴用工、慰安婦問題など歴史を直視しない日本政府の態度、朝鮮半島統一を妨害する日本政府の責任、改憲・軍事大国化をひた走る岸田政権の3点を追及するスピーチは力強かった。

●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。

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