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高齢弱者イジメに拍車 新たな健康保険制度

2008年01月18日 | 日記
1月12日練馬公民館で行われた「市民の声ねりまオフィスセミナー」に参加した。この日のテーマは後期高齢者医療制度である。
今年4月から新しい医療保険制度が始まる。75歳以上の人は、現在ほとんど人は国民健康保険、一部の人は企業の健康保険に本人または扶養家族として加入している。これが全員、後期高齢者医療制度に強制的に移行する。今まで扶養家族で保険料を支払っていなかった人も支払うことになる(ただし当初2年は激変緩和のため減免される)。

厚生労働省のパンフ
後期高齢者医療制度の運営主体は広域連合(都道府県とほぼ同じ)。保険料は当初の厚生労働省のモデルでは、国民健康保険の保険料と同じ水準の7.4万円/年だったが、東京都では1人平均10.29万円/年(低所得者への減免などを含めても9万円)と決定した。所得が年間235万円以上の人は料金が下がるが235万円以下の人はアップする。練馬区の場合じつに87%の人がアップになる。とくに所得が15万から100万の層は40%以上の値上げになる(最も悲惨な15-20万の人は13754円から30380円へ120%!と2倍以上の増額)。所得が年金のみの場合、170万~250万円に相当し、元サラリーマンの人が直撃されることになる。
どうしてこういうことになるかというと、東京23区の国民健康保険は住民税額に比例する保険料だったのが、後期高齢者医療では所得に比例する保険料に変わり、いままで所得控除や定率減税されていた人への打撃が大きいためだ。所得税が累進課税なのに比べ消費税は一律なので、低所得者に厳しい税といわれるのとよく似ている。
また、もともと75歳以上の人の所得は所得ゼロの人が54%もいる一方、705万円以上の高所得者が3.6%存在(所得全体の58%を稼得)し、2極分化していた。それを単純に平均した235万円が、アップダウンの分岐点になったため、中間の所得の人に相対的に負担が重くかかることになった。一方、705万円以上の高所得者の保険料は最高限度額50万円なので、たいへん優遇される制度設計になっている。「格差社会」「貧困社会」といわれるが、この制度もやはり格差をいっそう押し広げる制度である。
保険料を支払わない人への罰則として、保険証を取り上げ、医療機関の窓口では100%支払い、後日保険料を納付した段階で医療費が還付される資格証明書交付という制度の適用も始まる(従来は、75歳以上の人は例外として適用されなかった)。
また、これまで保険が適用された健康診断の費用も支出されなくなり、7万円の葬祭費も支出されないという問題もある。医療機関の窓口での出費は1割負担で変わらないが、診療報酬(医療機関への医療費の支払)は出来高払いから包括化(患者1人への1か月の支払を定額化する)の方向といわれ、必要な医療を受けにくくなる可能性も指摘されている。
4月から後期高齢者医療制度に変わることを知っている国民はほとんどいない。保険料は年金から天引きになっているので6月の年金受取時に手取りが減額されていて驚く人が多く出現することが予想される。

☆この制度は、増大する高齢者医療費を抑制する施策の一環として、小泉政権末期の2006年6月の国会で、老人保健法(1982年制定)の一部改正というかたちで成立した。メリットとして、異種の保険間の保険料負担の差がなくなる面はある。しかし高齢者はもともと病気になりやすく保険リスクは高い。池尻成二区議(市民の声ねりま ブログはこちら)は「高齢者のみ集めた保険制度そのものに無理がある。医療の問題は、必要な医療をどう手当てするかというところから発想すべきで、費用を減額するための制度いじりをいくらやっても本当の解決はできないのではないか」と語る。
☆昨年の住民税値上げのときには役所の窓口で「1ケタ額が違うのではないか」と抗議する人が相次いだ。しかし「法律で決まっている」と言われるとそれ以上何も言えなくなる人が大半だった。
この2月区議会の予算審議でこの問題も取り上げられる。制度そのものは国が決めたのものなので区で大きくは変えられないにせよ、区独自の事業や援助策をつくることは可能である。
区民から議会への陳情や区議への直接の要望・疑問は、区にとっても議員にとっても大きな力になるとのことだった。
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