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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

土肥校長は訴える パート2

2009年02月03日 | 集会報告
1月31日夜「学校に言論の自由を求めて! 都教委「挙手、採決禁止」への異議申立 パート2」という集会が杉並公会堂で開催された(主催「土肥校長と共に、学校に言論の自由を求める」保護者&市民の会、参加1000人)。
冒頭、岡本厚さん(岩波書店「世界」編集長)から開演の挨拶があった。
昨年9月27日武蔵野公会堂で集会を行った。都立三鷹高校・土肥信雄校長は「職員会議での挙手・採決禁止」を批判し都教委に公開討論を申し入れたが実現せず、教育の専門家である藤田英典さん、尾木直樹さんの提言も無視した。しかし年末年始の年越し派遣村への「連帯」など希望の兆しもみえる。土肥校長がこじあけた小さな穴をもっと大きく広げよう
続いて事務局から教員アンケート調査の概要が報告された。昨年11月13日都教委は、260校の校長・副校長に「挙手・採決禁止が教員や校長の言論の自由にどう影響を及ばしたか」ヒアリング調査を行ったところ「影響がない」が95%だったとの結果を公表した。この報告に不信感をもち11月23日都立高校190校の一般教員にアンケートを発送した。1月24日時点で123校、1740人から回答があった。「挙手・採決禁止通知は有害」が76%、「通知は教育的ではない」が22%合計98%が否定的だった。また「教員の言論自由への悪影響があった」も83%と都教委の調査とまっこうから対立する結果となった。
アンケートの自由記述の欄には半数以上の人がコメントを書いていた。一番多かったのは「言ってもムダ」、次は「やる気がなくなる」「意欲を失う」だった。さらに「自由に意見を言うと評価がCになる」「職員会議で自分の意見を何度も言ったという理由だけでC評価にする校長がいる」といった「業績評価との結びつき」、「現場の主役は生徒ではなく校長と都教委になった」と「生徒への悪影響」を憂える声もあった。この問題の根深さや大きさが裏付けられた。2月以降、都教委や都議会にこの結果をもって働きかけたいとの行動提起があった。

                                 [撮影:平田 泉]
1「挙手、採決禁止」への異議申し立てその後   土肥信雄さん(都立三鷹高校校長)
 昨年9月、業績評価の絶対評価について都教委こそ法令遵守義務違反だと内部告発したが、即却下された。取扱窓口を探したが都教委しかないとのことだったので、当然の結果だ。しかし今のところ、何のお咎めもない。11月13日都教委から「言論の自由に影響がない」が95%という管理職向けヒアリング結果が公表された。これも強盗の質問に対し「やさしい強盗さんですね」と答えるしかないのと同様で、規制する側が聞いても仕方がない。11月22日フジTVの「たけしの日本教育白書」に出演した。この番組には元・新しい歴史教科書をつくる会副会長の高橋史朗明星大教授も出演していたが、「意思決定のための挙手ではなく、意思表示のための挙手は問題ないと考える」と言わざるをえなかった(なおこの意見は昨年12月27日の産経新聞「解答乱麻」にも掲載されている)職員会議の位置づけはすでに補助機関になっているので、わたしの意見と同じである。高橋氏ですらわたしの味方だ。
11月27日の都教委定例会で竹花豊委員が「土肥のやり方、土肥の表現の仕方が悪い」と発言した。しかし自分はきちんと手順を踏んでいる。まず校長会で「挙手採決禁止」の撤回を求め、次に公開討論を求め、実行されなかったので最後に記者会見した。
1月16日、今年4月以降の非常勤教員に応募したところわたしにだけ不合格の通知が届いた。この件はいま対応を検討しているところだ。
一般教員へのアンケートでは80%が言論の自由に悪影響があったと答えている。しかし95%の校長がその事態を把握していないことになる。校長は都教委の言いなりになり言論統制されていると言わざるをえない。都民はそれでよいのか。都教委はずるい、すべて逃げている。都教委を、徹底的に公の場に引き出したい

2 インタビュー「教育委員会の役割とは?校長のリーダーシップとは?」
土肥校長●都教委は、学校を活性化し校長が適切なリーダーシップを発揮するための職員会議適正化だという。そもそもリーダーシップは上から与えることができるものなのだろうか。組織のメンバーから信頼されるようになってはじめてリーダーシップが生まれるのではないか。この点、権限と責任を与えればリーダーになれると考える都教委とは考えを異にする。
安藤聡彦さん(埼玉大学教授・元国立市教育委員)校長のリーダーシップは指導主事が求めるものに応じ従う能力に等しくなっている。校長は退職すると精神疾患になる人が多い。校長も受難者だ
教育委員は、首長が議会の同意を受けて任命することになっている。しかし国立では、首長、自民・公明などの議会各派が順番に推薦することになっていた。
教育委員会はレイマンコントロールといって、教育の専門家ではなく「素人」がコントロールすることになっている。しかし実態はそうなっていない。教育委員に任命されていた間に80-90回委員会が開催された。その間事務局提案が否決されたのはたった一度だけだった。官僚主導になっている
土肥校長の訴えを生かすため3つのことを提案する。
1)教育委員会を監視すること。委員会を傍聴しだれが何を言ったかウォッチしよう。教育委員にとってインパクトになる。
2)教育行政を再民主化すること。民主的な仕組みをつくり政策づくりをしよう。
3)若い人たちと連帯すること。大学の教え子に、君が代を弾かないといけないので公立の教員にはなれないと泣き崩れた女性がいた。ついにそういう状況になったかと思った。
上原公子さん(元国立市長)首長は教育委員の提案や任命はできるが決定権がない。国立の教育委員公募では、はじめに1人だけ通ったがあとはすべて議会に否決された。会派の言いなりだった。校長会には議事録もなくちょっと変だ。教育は閉鎖的で市民にわかりにくい。土肥さんを1人にせず、都教委の組織を開かせよう

3 生徒からのメッセージ
2008年1月の全国高校サッカー選手権大会でベスト8まで進出した三鷹高校サッカー部の3人の卒業生が登壇した。 土肥校長は毎朝校門前で「お早う」「君の名前は○○だろう」と声をかけるきさくな校長だった。しかし毎週の朝礼では「基本的人権の尊重」や「平和主義」の話が多く、唯一校長らしかった。話のなかに言論の自由もあったので、今回のことは驚かなかった。これからも皆で土肥校長を応援してあげてほしい。

4 リレートーク「教職員の人事評価のありかたについて/子どものための学校とは?」
土肥校長●業績評価が導入されたとき、これで教育は終わりだと感じた。はじめはゆるやかだったが、今は給料、異動、主任や主幹の受験資格にも直結している。校長は職員室とは別の部屋にいるので教員を四六時中みることはできない。民間企業の評価ではそういうことはない。校長の恣意的評価になってしまう。評価するのが生徒や保護者ならまだわかる。
世取山洋介さん(新潟大学准教授)教員評価だけ取り上げず、学校評価や教育そのものに視野を広げたい。向こうはもっと大きなスキームで全体をコントロールしようとしている。
教育は「人格の全面的発達」をめざす。教師には、学力形成が得意な人、部活指導が得意な人、生活指導が得意な人など、得手不得手がある。教師が共同しないと「人格の全面的発達」に責任をもつことはできない。個々の先生の能力をバインドすることが重要だ。これは評価といわれるようなものではない。しかしこうした共同の営みが都立の人気を支えていた。向こう側に対抗するには、教師が共同するしかない
広田照幸さん(日本大学教授)リーダーシップとトップダウンとは違う。下の声を聞くデモクラティックなリーダーシップは効率がよい。逆にうまくいかない組織は、下の人が文句をいわず、たとえ理不尽な決定がなされても、下で修正がきかない組織だ。その代表的組織が旧陸軍だった。
教育改革というが、本当に改革するなら徹底して教員の意見を吸い上げるべきだ。討論とボトムアップにより、みんなが納得する改革をすべきだ。土肥校長をぜひ表彰させたい。

最後に尾木直樹さん(教育評論家)からまとめの挨拶があった。
今日の集会で教育委員会の問題が立体的に明らかになった。8月28日の都教委定例会で竹花委員が、記者会見でのわたしと藤田教授の発言に触れて、「(お二人から)率直にご指摘いただきたい」と発言していた。しかし11月の定例会では「マスメディアで竹花委員の意見が報道されたので、先生方にも伝わるだろう」といっている。まったく稚拙である。
また都教委は管理職へのヒアリング調査で「言論の自由に影響はない」が95%だったというが、弾圧している都教委が「僕たち言論弾圧している?」と聞いても仕方がない。第三者機関を立ち上げて調査しないと意味がない。またマスコミは都教委の発表をそのまま流しているだけだ。批判的見解をつけず流すだけとは情けない。
昨年12月、ILO・ユネスコの「教員の地位勧告」の調査団の報告がILO理事会の承認をうけ日本に届いた。66年勧告は日本政府も含め満場一致で採択された。教育政策決定には当局(政府や都道府県教育委員会)と教員団体(労働組合)との間で「協議・交渉」することを求めている。
安藤さんの3つの提案は重要だ。教育委員会民主化のイメージをつくろう。変わるときは爆発的に変わる。
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