ある時向こうのベッドが空いたらしく、カーテンが開いたままになっていました。むこうからさすあかあかとした朝日の色がこちらのカーテンまで染めます。看護師さんに自分があそこに移れるのか聞いてみたら、多分可能だろうと。しかし主治医先生に直にお話してみるとあっという間に移動が決まりました。
明るい見晴らしのいい窓際。これからの季節、まぶし過ぎて暑くなるけど、午前のちょっとだけです。陽を浴びて骨を丈夫にしよう。歯ブラシをお日様に当てよう。お昼になる前に直射日光が移動すればそこからブラインド全開。向こうにそれほど高い建物が無く外からベッドは見えません。着替や身体拭きの時にブラインドを下ろす以外夜もそのままです。満月が美しかったです。

山の上にあかあかとお日様が顔を出すその頃、iPadのネットラジオでは「古楽の楽しみ」が始まります。その後クラシック音楽を聴くか語学にするか迷うところ。でも勉強するんです。語学の後ずっとほったらかしているとどんどこどん、お話でてこいと昔話が始まるのですが、大抵はその前に止まります。iPad以外ではどうだか、ネットラジオは不安定なのです。止まったと気づいたら起こすけど、しばしば気づかなくて、そのまま。
「朝日の間」で過ごしたのはほんの少しの間で、じきにHCUから出る日が来ました。行き先は二ヶ月以内に退院する人の四人部屋。前回窓際を希望した私のために今度も窓際でしたが、西側です。朝日もお月様もなし。ここではテレビ冷蔵庫無料。さいわい西日の直射はベッドの足元側半分を照らしました。
このお部屋は先にそこへ移動していた低い声で独り言を言うお婆さんと同じ。お婆さんはお話してみると笑顔が魅力的でさっぱりした方でした。相変わらず独り言で滅多に来ない近くに住む長男の嫁の不満を言い、よく来てあれこれ気遣う遠い区の次男の嫁をこわい声で褒めていました。
私のお向かいさんにご挨拶しようと声をかけたところ、顔を出したのは優しげで友好的なOさん。お孫さんもいらっしゃるそうで、私より十歳上の会社員です。私は一目見てほっとしました。これだけ華があるムードの人はいじめないタイプだと思ったので。もしかしたら若い頃に女性から敵視されることが多かったかも知れない癒し系で可愛らしい雰囲気。毎日ちょっとしたきっかけでお喋りを楽しみました。きっかけがなくても一日一度は顔を見ておきたいと夜にお喋り。治療過程と現状、お世話されるのが申し訳ないという気持ち、ご飯の量が変更できるなどどちらかが知らない情報、医療の進歩と感心な職員さんたちのやり方。こんなに気楽に話せる人は珍しいです。
ビルと高速道路の間に夕陽が沈むと窓から見えるのはビル名の電飾など。眠れない深夜は不思議な緊張感の中じっと空調の音、時々車の走る音を聴きます。たまに雨音、それより頻繁な救急車。いらっしゃい急患さん。ここ結構居心地いいよ。あなたも早く治りますように。
日がのぼり、世の中が動く音が遠くからどおっと押し寄せ、すぐ近くも動き出すと、何故かほっとして眠れます。いけませんね、夜ちゃんと眠らないと。
明けると朝日に照らされた建物もいいものだなと思いました。朝日が見えないと時間も把握しにくく、遅れつつ繋いでもネットラジオは益々不安定。語学をやる気は削げるばかり。折角の入院なんだし、のんびりやるか。あんまり頑張らない。忘れてなければ聴く。そうして、忘れっぱなし。
明るい見晴らしのいい窓際。これからの季節、まぶし過ぎて暑くなるけど、午前のちょっとだけです。陽を浴びて骨を丈夫にしよう。歯ブラシをお日様に当てよう。お昼になる前に直射日光が移動すればそこからブラインド全開。向こうにそれほど高い建物が無く外からベッドは見えません。着替や身体拭きの時にブラインドを下ろす以外夜もそのままです。満月が美しかったです。

山の上にあかあかとお日様が顔を出すその頃、iPadのネットラジオでは「古楽の楽しみ」が始まります。その後クラシック音楽を聴くか語学にするか迷うところ。でも勉強するんです。語学の後ずっとほったらかしているとどんどこどん、お話でてこいと昔話が始まるのですが、大抵はその前に止まります。iPad以外ではどうだか、ネットラジオは不安定なのです。止まったと気づいたら起こすけど、しばしば気づかなくて、そのまま。
「朝日の間」で過ごしたのはほんの少しの間で、じきにHCUから出る日が来ました。行き先は二ヶ月以内に退院する人の四人部屋。前回窓際を希望した私のために今度も窓際でしたが、西側です。朝日もお月様もなし。ここではテレビ冷蔵庫無料。さいわい西日の直射はベッドの足元側半分を照らしました。
このお部屋は先にそこへ移動していた低い声で独り言を言うお婆さんと同じ。お婆さんはお話してみると笑顔が魅力的でさっぱりした方でした。相変わらず独り言で滅多に来ない近くに住む長男の嫁の不満を言い、よく来てあれこれ気遣う遠い区の次男の嫁をこわい声で褒めていました。
私のお向かいさんにご挨拶しようと声をかけたところ、顔を出したのは優しげで友好的なOさん。お孫さんもいらっしゃるそうで、私より十歳上の会社員です。私は一目見てほっとしました。これだけ華があるムードの人はいじめないタイプだと思ったので。もしかしたら若い頃に女性から敵視されることが多かったかも知れない癒し系で可愛らしい雰囲気。毎日ちょっとしたきっかけでお喋りを楽しみました。きっかけがなくても一日一度は顔を見ておきたいと夜にお喋り。治療過程と現状、お世話されるのが申し訳ないという気持ち、ご飯の量が変更できるなどどちらかが知らない情報、医療の進歩と感心な職員さんたちのやり方。こんなに気楽に話せる人は珍しいです。
ビルと高速道路の間に夕陽が沈むと窓から見えるのはビル名の電飾など。眠れない深夜は不思議な緊張感の中じっと空調の音、時々車の走る音を聴きます。たまに雨音、それより頻繁な救急車。いらっしゃい急患さん。ここ結構居心地いいよ。あなたも早く治りますように。
日がのぼり、世の中が動く音が遠くからどおっと押し寄せ、すぐ近くも動き出すと、何故かほっとして眠れます。いけませんね、夜ちゃんと眠らないと。
明けると朝日に照らされた建物もいいものだなと思いました。朝日が見えないと時間も把握しにくく、遅れつつ繋いでもネットラジオは益々不安定。語学をやる気は削げるばかり。折角の入院なんだし、のんびりやるか。あんまり頑張らない。忘れてなければ聴く。そうして、忘れっぱなし。