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* いざ、Gスペースへ
観女センティは、よく気のつく優しい女性だ、
と思っている。
本来、観音はんは、男でも女でもない、
性を超越した存在なのだが、私にとっては、
女性の方がありがたい。
超越などという高い次元は、日常のつきあいには不向きだ。
私は、彼女が女性だと思っているし、
彼女(?)も、私に対しては、女性として
振る舞ってくれている。
彼女は、輪廻の世界(ループ界)や、
解脱の世界(非ループ界)に詳しいので、
彼女から、今度の旅に出掛ける者一人ひとりに、
注意やループ界通行用の物理的な改造も加えてくれた。
感謝の一言につきる。
また、ループ界を、縦横無尽に飛び回れるジゾ坊も、
紹介してくれたし、100本ばかりの手、
と顔を20ほど、レンタルしてくれた。
無論、これはタダではなかった。
そういう所は、きちんとしている。
死出の道への入口は、全国あちらこちらに、
散らばってあるらしい。
今度の旅の隊長は、キヨヒメ。
副隊長には、自称3・5億歳のゴキオーラがなった。
入口の選択は、二人にまかせることにした。
どのみち、どこを選んでも、一筋縄では、
ゆかないのはわかっていることだから、
逆に言えば、何処を選んだとしても、
似たようなものであるだろう。
言葉も、皆がそれぞれに違っているものだから、
センティが、科学的知識を生かして、リース顔に、
翻訳機能をつけてくれた。
それにしても、可愛い女性の顔に、
改造してくれているとはいえ、顔だけが、
空中を飛び回るのは、あまり気持のいいものではない。
慣れるまでにこの小旅行も終わりそうだ。
大きさは、番人の鬼どもに見つからないように、
縮小が出来るので、ありがたい。
耳の中に入れておけば、うるさい鬼にも、分からないだろう。
死出の道への入口は、隊長たちと墓石のバカーンや、
天トレたちの協議の結果、ガンガン連合の議長、
奈良県明日香村にある石舞台の大岩・ソガーンの、
下にある石舞台ルートを、使うことになった。
8月のある金曜日の夜、出発することに決まった。
幸い、わが妻Oさんは子供たちを連れて、
田舎に帰っているので、下手な言い訳をしなくて済む。
太陽の塔のタイタイが、その飛べる力をフルに発揮して、
あちこちに散らばる参加者を拾い集めて連れて来る、
役目にあたった。
こういう時には、信楽焼きのグループ・ヤキダー連の、
者たちの存在は、非常にありがたい。
ご本体が留守の間、そっくり、その姿に化けて、
立派に代役を果たしてくれるからである。
そんな訳で、タイタイは、まず信楽に行くのである。
そこで、代役たちを乗せ、参加者を拾い集めてくる。
彼は、張り切って、飛んでいった。
私は、あのMキラリーのために、
呼び出し方式の変更を余儀なくされた、
ヤッタールを、新呼び出し法で招き寄せ、
ゴキブリのゴキオーラを、革ジャンのポケットに入れ、
愛バイク・Sサヤカで、明日香村へと走った。
夜は涼しいとはいえ、黒いメット、
黒い革ジャン・革ズボン、ロングブーツで、
身を固めると、暑くて堪らなかった。
しかし、何がこの先待っているか分からないので、
とにかく、私にとっては最大の防御スタイルだ。
前にも言ったように、この姿は縮小コピーにかければ、
ゴキオーラそのもの。
だから、ゴキオーラに、そう違和感を感じないのだ。
もしかすると、私が前に住んで居たループ界は、
ゴキブリ界だったのかもしれない。
石舞台は、しんと静まりかえっていた。
深夜に近いので、夕涼みの人も、
帰ってしまったのだろう。
虫の声が、あたりの静けさを写しだしている。
{ソガーンはん、こんばんわ。お世話をかけます}
{おおっ、オッさん。ご苦労はん。無事に行ってこいよ}
{ガンガン連合のみなさんにも、お世話をかけます}
{いいってことよ。ヤツらも暇を持て余しているんだから、
気にすること、ないよ}
{そう、言ってもらえると、少しは気が軽くなります}
みんなが揃ったので、
ソガーンに、少し移動してもらい、
未知のスペースへと、足を踏み入れた。
つづく