決意

男からは不快な臭いがした。
男は無言のまま僕に一瞥をくれると、喜色を露わにした。

僕は一刻も早くここから逃げ出さなくては、と必死に考えを巡らせた。
ドアにはロックが掛かっていて、赤信号のタイミングで戸を開けて逃げることは絶望的な状況であることが分かった。

男は僕に目隠しをしなかった。
僕が連れて行かれた道を誰かに喋る可能性が無いと言うことを意味するのではないか。
そうした思いが僕を更に恐怖に陥れた。



逃げるんだ
そのためにも、とにかく、考えるんだ・・・・・・

背中をゆっくりと汗が伝った。
掌は汗でじっとりとしていた。
僕は車内を見回して、逃げる手掛かりを探した。

そして、一つだけ可能性を見つけることが出来た。
だけど、それをすれば、もしかすると僕自身が助からないかもしれない。

万に一つの可能性に賭けるべきか・・・・・・。
迷っている時間はない。

男が人気のない場所を選んで車を進めていることは分かりきっていた。

どのみち、このまま行けば助かる可能性は更に低くなってしまう・・・

僕は命を賭した戦いに臨む決意をした。




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