フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

2005年10月18日 02時10分21秒 | 第5章 恋愛前夜編~トオルの章~
その瞬間のことはよく覚えていない。
目の前が真っ白になり、体が大きな光に包まれるような感覚があった。

ドン

という最初の強い衝撃で僕は気を失っていたようだ。

僕を乗せた車は、大型子供専用玩具店に突っ込んだそうだ。

そこにあるボールプールやふわふわのバルーントランポリン、幾つも積み重ねられていた段ボールがクッションとなって、車は大破することなく止まった。
当時は夕方だったこともあり、客も疎らだった。
そのため、事故に巻き込まれ軽度の怪我を負ったのは僕と店にいた店員の二人だったそうだ。



僕が光のあの瞬間から目を覚ましたのは事故から丸1日明けた深夜の病院だった。

両親が泣きながら僕を抱きしめてくれた。
そして、スーチンもずっと付き添っていたらしく、真っ赤に泣き腫らした目で「ごめんなさい!ごめんなさい!!」とベッドの横で跪きながら僕の手を取っていた。
僕はスーチンの手を軽く握り返し、「大丈夫だから、泣かないで」と言った。

異常が無いか脳波の検査をしたり、PTSDの経過を調べるために入院をすることになった。



あの日の翌日の新聞には僕の誘拐事件が大きく取り上げられていた。

男は事故の現場から逃げ去っていたが、特徴を覚えていた店員の証言と、男を捜して近くを巡回していた警察に捕まっていた。

車は盗難車だったから、この巡り合わせがなければ、男はまだ逃亡していたかもしれない。


そして、数日後、警察が男の自宅を捜査した結果更に驚くべき事実が発覚していた。

男の自宅とその庭からは、死後10年以上経つものからほんの数週間前のと思しき何人もの少年の遺体が発見された。
一部は白骨化して判別も難しいため、DNA鑑定へ送られたと書いてあった。

少年達は皆、金髪という特徴で一致していた。
その記事には最近の犠牲者とされる数人の金髪の少年の生前の写真が載っていた。
まだあどけない、僕と同じ年くらいの写真の少年達は皆、僕に向かって微笑みかけていた。

僕が助かったのはきっと彼らが僕を守ってくれたからなんだ。
僕は運が良かっただけなんだ。


そう思うと、涙を堪えることが出来ず、病院のベッドで枕に顔を埋めて大きな声を上げて泣いた。



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