救急患者を運ぶ病院がなかなか見つからない「受け入れ困難」が起こる要因を分析し、効果的な対策を講じようと、厚生労働省は来年度から、全国の救命救急センターに搬送された患者の入院前後の経過を含む情報を一括管理するデータベースを新たに構築する。
救急患者の中には、生活習慣病などの持病があり、十分治療しておけば急変が防げた例や、終末期の看取(みと)り段階で必ずしも高度な救命治療が必要なかった例もあるとみられる。これまでも救急搬送時間や搬送時の重症度判定などは総務省消防庁が記録してきたが、前後の経過などのデータはなく、救急医療の使い方や処置が適切だったかどうか、検証できる資料が不足していた。
新たに作るデータベースは、救急医療の中でも重症者に対応する救命救急センター(全国271か所)で受け入れた患者の確定診断名、治療内容と結果、転院先 などの情報を入力、事務局で一元管理し分析する。救急患者の全体像を把握し、不要な搬送を避けるための日頃の健康対策、在宅医も含めた適切な連絡先選びな どの対策作りに生かす。
事務局を担う研究機関は来年度に公募。分析データは関係学会、地域の医療計画を作る都道府県などにも活用してもらう方針だ。
2012年の救急搬送患者は520万人超。重症患者は55万人おり、うち搬送先が見つからず救急車が30分以上現場に滞在したケースは約2万3000件に上った。厚労省は「必要な人が救急医療を効率的に受けられるよう、実態を分析したい」としている。