夫と娘と私の母を入れて四人で北陸旅行をしました。
母も古都、金沢に行きたがっていましたが、
私は高校生の頃に読んだ室生犀星の故郷ということで金沢に惹かれていました。
後に犀星のお嬢さんの室生朝子さんのエッセーを愛読し、
犀星と親交のあった萩原朔太郎のお嬢さん、萩原葉子さんのエッセーも愛読して、
犀星のことを知ることが嬉しかったものです。
興味は犀星の名前の由来の犀川です。
私が見た街の犀川は、流れる水は浅く、照らす太陽のもと、穏やかな佇まいです。
犀星は加賀藩の足軽だった父とお手伝いさんとの間に生まれました。
生後一週間で犀川のほとりにある寺の住職、室井真乗の内縁の妻に貰われて、
私生児として届けられた。
養母は理由もなく子供を殴る人で、幼年期の犀星は常に養母に恐怖心を抱いていたといわれる。
そして七歳で室井真乗の養子になった。
詩で犀星はふるさとに対する思いを美しく語っている。
うつくしき川は流れたり
そのほとりに我は住みぬ
春は春、なつはなつの
花つける堤に座り
と続く『犀川』という詩。
雪あたたかくとけにけり
しとしとと融けにけり
ひとりつつしみふかく
やわらかく
と続く『ふるさと』という詩。
ところが、『小景異情』という詩の「その二」
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となりとても
帰るところにあるまじや
とうたっていく、あまりにも有名なこの詩の犀星の孤独。
私は犀川を見て、犀星のことを考えた。
犀星の小説では『性に目覚める頃』が好きな私です。