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水平線の海と空  

草なぎ剛さんのこと、日常の中で感じたことを書いていきたい  【オリビエ】

井伏鱒二と永井龍男の対談

2006年02月10日 22時04分50秒 | 文学

 井伏鱒二が永井龍男と対談したCDのことをちょっと書いてみます。
これは昭和三十三年五月二十八日にNHKで放送されたもので、収録時間は十三分です。
CDでタイトルは対談となっていますが、井伏に永井がインタビューというスタイルになっています。

  井伏が文壇将棋大会で優勝したお話から話が始まりました。
「勝負事や笑わすことが嫌いでしょ。勝負事が嫌いなのにどうして将棋だけはするの」と永井が聞きます。
「他のものは弱いから。将棋しか知らないから」と井伏。

 「画家を目指していたんでしょ?今も絵を描いているみたいだね。モデルを使ったりして描いてるの」と永井。
「うん、モデルを使ったり写生に行ったりしている。職業を持って絵を描いている仲間もいる。中学卒業後に画家を目指して、人を介して日本画家、橋本関雪に弟子入りを頼んだが、見込みがないと断られて挫折してしまった。
けれども、今また絵を描いている」

 大晦日に盲腸で入院したがあれは痛すぎる。
お酒を飲むので全身麻酔で手術をしたが、
盲腸なんて手術じゃないというけれど、あれは痛すぎる。
痛くなければどんなに不幸せでもいいと思った(笑)

 「『集金旅行』『本日休診』『駅前旅館』の映画化があるが、『駅前旅館』は何をヒントにしたの?」
上野駅前で旅館の呼び込みをしている人がいた。
呼び込みの仕事もなくなってきているのをみて取材し、滅びる人を書いた。

 「小説を書いて笑ったりすることはない?」
それはない。笑ったり涙が出たりすることはない。
泣いたり笑ったり胸がゴットンゴットンしたりすることはない。
ゴットンゴットン胸がときめいたりしたらいいんだろうけど、ちっともそんなことがない。
これがヤマメなんか五、六匹釣ったらゴットンゴットンするんだけれど(笑)

 この二人の作家は将棋仲間、釣り仲間でもあるようです。
釣りのお話がでますが、
井伏は神経痛があるから行かなくなったと言っています。
五十を過ぎると腰まで水に浸かるのは体が堪えられない。
飛行機も嫌いで、旅行は国内だけだそうです。
もう少し細かいお話があったのですが、省略しています。

 対談はもう少しあったようですが収録されていたのはここまででした。

 添付されていた解説文
独自の文学世界を築いた二人の軽妙洒脱な語らいは、限られた録音時間の中でさえ、一つ一つの話題が短編小説のような趣で聞こえてくる。 


林忠彦が語った太宰治

2006年02月05日 17時31分34秒 | 文学

 新聞で新刊の出版物紹介の欄に『文士風狂録』という本が取り上げられていた。
副題は「青山光二が語る昭和の作家たち」

作家、青山光二の聞き書きを担当した大川渉という編集者が、一冊にまとめたものだという。
私は青山光二という作家も大川渉という編集者も存じ上げない。
記事によると青山光二は織田作之助と旧制三高時代からの友人で、
織田をモデルに『青春の賭け』という小説も書いている人物だという。
また、大川は
織田作之助の短編集『聴雨』を編集した人物だそうだ。

 文中の紹介の中に、一九四六年、東京、銀座のバー『ルパン』での織田作之助、太宰治、坂口安吾の姿がある。

 平野謙の司会でおこなわれた座談会の後、流れてきた三人と、
青山がその場にいあわせた。
写真を撮るカメラマン、林忠彦を見て、
「黙って撮らせてええのか」と叫ぶ織田作、
「織田作ばかり撮らないでおれも撮れよ」という太宰。
夜中に「出版社に行って原稿料を取って来い」と言い出す安吾。
太宰といえばこの一枚、というほど有名になった、カウンターの椅子に座り込んだショットを含め、
このときに林が撮った写真はそれぞれの代表的な肖像となった。
とある。

 私はテレビで林忠彦がこのことを語っていたのを観たことがある。
林は坂口安吾に魅力を感じて、追い続けて写真を撮っていた。
『ルパン』で安吾をいろんな角度から撮って、織田も少し撮ったりしていると、
「安吾ばかり撮らないでおれを撮れ、おれを撮れとすごくうるさいのがいた。
あんまりうるさいのでしょうがなく撮ったのがこの写真です」と、
カウンターの椅子に座り込んだ太宰のショット写真を示した。

 このことから、作家の青山光二が「織田作ばかり撮らないで」と太宰が言ったというのは
 「安吾」との勘違いではないだろうか。

 林は微笑んで語っていた。
自分の撮った写真で、太宰のこの写真ほど焼き増しされたのは他にない。
もう、ネガは傷んでボロボロになってきている。
あのとき撮ったこの写真がこんなに長く需要あるとは思いもしなかった。

 青山光二さんは九十二歳の文壇最長老作家だそうです。
著書の中には織田作之助、太宰治、坂口安吾の他に田中英光の話もあるらしい。
私は無頼派作家の四人の素顔に興味津々です。


十九人の作家の声

2006年02月03日 22時51分52秒 | 文学

 昨日の続きです。
作家の声が収録されたCDは十二枚あるのですがその中に、
一枚に三人収録されているものと二人収録されているものもあります。

 一人で収録されている作家は、
川端康成、谷崎潤一郎、志賀直哉、武者小路実篤、永井荷風、正宗白鳥、
小林秀雄の七人です。

 一枚に二人の組み合わせで収録されていたのは、
江戸川乱歩、松本清張。山本有三、佐藤春夫。室生犀星、高村光太郎で三枚。 

 三人一組の作家は、
大岡昇平、坂口安吾、三島由紀夫。尾崎士郎、林芙美子、井伏鱒二の組み合わせの二枚。

 総勢十九人という素晴らしさ!
さらにこのCDの中には、
すごい作家や著名人との対談や座談会が入っているのですから興奮してしまいます。

 私が一番心を惹かれたのは坂口安吾です。
まさかこの方のお声を聴かれるなんて思ってもいませんでした。

 でも、最初に聴いたのは室生犀星と高村光太郎のCDでした。
次に聴いたのは、大岡昇平、坂口安吾、三島由紀夫のです。
そして、川端康成。

 大体一時間十三分位の収録時間です。
自作の朗読が入っていて、対談では作品についてや文学に対する姿勢、
座談会では文壇の話が豊富に出てきます。
とても充実した楽しい時間です。

 こんな貴重な物を夫が持っていたなんて、本当に驚きました。


作家のビデオテープとCD

2006年02月02日 09時52分48秒 | 文学

 先日、作家のビデオテープのことを書きましたが、これには後日談があります。

 ビデオを観ていた私に、「まだ別なのがある」と夫が言います。
驚いて訊いてみると、
「作家のビデオテープと作家の声が入ったCDがセットになったのがある」というではありませんか。
職場の自分の部屋に置いてあって、すっかり忘れていて最近気づいたそうで、
「一度も観ていない」と、なんとももったいないことをいいます。

 私は作家の声が入ったCDということを聞いて嬉しさに飛び上がります。
早速持ってきてもらいました。

 それがなんとも立派なんですね。
ビデオテープ九本、CD十二枚が木製の飾り戸棚に入っています。
先日のビデオのセットにはついていなかった目録も、
ビデオとCDそれぞれA四判で別についている。
ビデオテープのケースの表装も高級感が漂っていた。
俗物の私は先日のビデオテープがあまりにも高価だったので、
早速値段を調べました。
ところがです。
ついていないんですね。値段がどこにも。
いかにも高級品という感じなんです。
夫に訊きましたが夫もまったく覚えていないという。

 私はこれらの品を見てワクワクしました。

 まずビデオを観ました。
ビデオテープの作家は川端康成、志賀直哉、山本有三、三好達治、広津和郎、野上弥生子、石川達三、佐藤春夫、尾崎士郎の九人。

 最初に観たのは川端康成です。
ワァー、大感激です。全て実写です。
川端康成が書斎で執筆する姿やお庭、リビングでご家族とくつろぐ姿、
その他、そしてスタジオでのインタビュー。
嬉しかったのは作者自身の自作の朗読です。
でも、このビデオテープも三十分しかありません。
それでも実写ということでかなり嬉しいものがありました。

 その他の作家も全て実写で大収穫です。
ビデオの中には観ることができない大作家や評論家、詩人、画家などがゲストで映っていて、
私の胸はドキドキ、大興奮です。

 このビデオテープとCDは、
私の日常生活に今しばらく楽しさを持続させることでしょう。


高価な作家のビデオテープ

2006年01月31日 18時15分13秒 | 文学

 夫が昔買った近代文学の作家のビデオテープ。
私が書斎から二階の廊下に運んだのは十年以上前のことだと思う。
観ようと思いながらいつでも観られると思って一度も観たことがなかった。
二週間ほど前に思いついて二階から降ろしてきて眺めた。

 そしてその値段を見て驚いてしまった。
一本二十五分のテープが税込み一万八千三百七十五円。
それが九本ある。
作家は夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、島崎藤村、太宰治、川端康成、
北原白秋、、宮沢賢治、石川啄木の九人。

 私はどんな内容なのか期待に胸躍らせた。
最初に観たのは文学の初恋の相手、芥川龍之介です。
生い立ち、代表作の朗読、文学活動とその仲間、自筆の原稿、
そして自殺の背景にあったものなどが詰まっていた。

 しかし、なにしろ二十五分。
思ったより内容が希薄だった。
私が密かに期待した実写のようなものはない。
夫に言うと、「時代からいって当然のことだ」というが、
値段がべらぼうなので変な期待を持ったのだ。

 「これはいつごろ買ったんだっけ」と聞いても、
夫は「かなり前だった」としか覚えていない。
それにしても高価なビデオテープではある。