【ソウル=尾島島雄】27日午前の韓国株式市場でサムスン電子の株価が急落、一時は前週末比7.7%安の117万7000ウォンを付けた。サムスンがスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)で米アップルの一部特許を侵害したという24日の米連邦地裁の評決を受け、日本円で830億円に上る賠償金やスマホ販売への影響を懸念し売りが先行している。
連邦地裁の判事が製品販売の差し止めも含めた最終的な判決を出せば、米国で「ギャラクシーS2」などの流通が止まる公算が大きい。最新の主力機「ギャラクシーS3」などは含まれておらず、ただちに米国のスマホ事業が頭打ちになる事態は想定されていない。
足元の販売は「S3」がけん引し、好調に推移している。ただ2012年4~6月期の連結営業利益のうちスマホを中心とするIT(情報技術)機器の部門が6割を稼ぐなど、スマホ偏重は著しい。株価の急落は、こうした事業構造への懸念もある。韓国投資証券は「裁判の結果がサムスンにとって予想より悪く、スマホ事業のリスクとして株価に作用している」と分析する。
さらにサムスンにとって不安材料となるのがアップルの動きだ。「iPhone(アイフォーン)」の新型機を近く発表するとみられ、「S3」との競合激化が確実視されている。評決を受け「コピーは許さない」という姿勢を強めて販促につなげれば、サムスン機への一定の影響は避けられない。
両社の特許訴訟を巡っては米連邦地裁とは別に韓国で24日、ソウル中央地裁が双方に損害賠償を命じる判決を下した。日本でも31日、サムスンがアップルの「iPhone4S」の販売差し止めを求めた訴訟の判決が東京地裁で予定されている。