沈黙の春

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サンデル教授韓国でも人気

2012-06-06 14:47:58 | 金融、経済

【ソウル】米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(政治哲学)の講義は、同大学で最も人気のある講義の一つだ。同教授は韓国でも大人気で、先週末にプロ野球の始球式に参加したほどだ。

 韓国では偉大な教師が尊敬されるが、この国でのサンデル教授の著名人としての地位は、大きく急速な変化の力によって形作られている。それは現在の韓国経済の不透明さだ。

MiraeN

延世大学の屋外劇場で聴衆参加型のディスカッションを行うサンデル教授(1日、ソウル)

 

 サンデル教授が韓国で最初に注目を集めたのは、米国で2009年に放映されたハーバード大学の「正義」に関する一連の講義を昨年韓国のテレビ局が放送したときだった。視聴率は同テレビ局の平均の2倍に上昇した。そのため番組は再放送された。

 米国で2カ月前に出版された同教授の最新刊「What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets (邦訳「それをお金で買いますか―市場主義の限界」)はすぐに韓国語に翻訳された。同教授が先週、本の宣伝のためにソウルを訪れた際には、大勢の群衆が集まった。

 1日にソウルにある延世大学の屋外劇場で開催された倫理をテーマとした聴衆参加型のディスカッションには1万5000人が集まった。その夜には、韓国3大ネットワークの一つが放映した同じテーマを扱った生放送番組のスタジオに1000人が集まった。本のサイン会には何百人もの人々が訪れた。3日にはソウル最大の野球場で行われたLGツインズの試合で同教授が始球式を務めた。

 ソウル市の新市長、朴元淳氏さえも、一部の政策についてサンデル教授に意見を求めた。同教授は医療保険制度には同氏が認識している以上のトレードオフ(代償)が伴うと指摘した。

 同教授はあるサイン会後のインタビューで、「驚いたし、圧倒された」と話した。同教授は最近東京やロンドンを訪れた際もかなりの群衆が集まったが、延世大学での様子は「想像以上だった」と語った。

 サンデル教授は2時間にわたり、学生や一般の人々が韓国で論点となっている話題について議論を交わすのを取り仕切った。例えば教育費のほか、収入格差の拡大や韓国の徴兵制度の公平性に関する問題だ。

 同教授は「これほど大人数でこれほど高いレベルのやりとり、議論、話し合いができたことは素晴らしい」と述べた。

 韓国人は、それ以外の国の人々と同様、08年の経済危機からの曲折した回復を経験した。それと同時に、富裕層がますます裕福になっているとの見方が広まるにつれて、人々は平等や機会均等に関して大きな疑問を抱くようになった。

 同国ではここ1年にわたり、産業界やメディア界の一部の人物が平等をテーマに取り上げて人気を得ている。ソフトウエア会社を立ち上げ、現在大学の教授を務めている安哲秀氏は、同国の政治や経済の政策を率直に批判したことで人気を集め、今年12月の大統領選挙で有望な候補者になると目されている。

 サンデル教授は「目を見張るほどの経済成長期を経て、韓国人は一歩下がり、価値観に関する大きな問題についてじっくり考えるようになった。何が平等な社会を作るのか、物質的支配の外側でお金や市場はどういった役割を担うべきなのかといったことについてだ」と述べ、「現在、こういった問題について考え、公の場で議論する欲求が非常に高まっているようだ」と付け加えた。

 シンクタンクの峨山政策研究院が先月、サンデル教授が出した質問について調査を行ったところ、全体の74%は韓国社会が不平等だと回答した。

 サンデル教授のサイン会に出席したユー・ミュンジョンさんは、「韓国は急速な発展を遂げたため、お金と物質的なモノを高く評価する状況が長く続いていた。現在は感情や倫理を重視するようになっている。そのため、教授の本や質問は非常に役立つ」と語った。

 1日の同教授の講義に参加した大学生キム・スンワンさんは、「お金が一番大事だと考える人が多いが、他の価値観についても考える必要がある」と話した。

 峨山政策研究院の調査結果は、韓国人は平等を望む気持ちが強いかもしれないことを示唆している。少なくとも米国人よりはそうだ。調査によると、韓国人の93%は政府が社会的・経済的な不平等を解消すべきだと回答したが、米国人でそう回答したのはわずか56%だ。

 また遊園地で行列を回避するためにカネを支払うというのは公平か、という同教授が最新刊で挙げた問題を尋ねたところ、容認できると回答した韓国人がわずか18%だったのに対し、そう回答した米国人は42%に上った。

 サンデル教授の魅力の一つは、同教授の講義の番組の中で、米大学で行われている双方向スタイルの講義が垣間見られることだ。韓国では高校卒業後、85%が大学に進学している。しかし、大学の講義は教授の言うことをノートを取りながら静かに聞くスタイルで、教授が質問に答えたり、学生に発言を求めたりすることはほとんどない。

 延世大学のイベントに参加した会社員ヤン・ハイウォンさんは、「サンデル教授はディスカッションを継続させ、終わった後、人々に何かを気付かせてくれる」と話した。

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