沈黙の春

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焦点:アップル・サムスン訴訟、部品取引には影響せず

2012-08-28 20:04:08 | 韓国

[ソウル 27日 ロイター] 韓国のサムスン電子<005930.KS>はスマートフォン(多機能携帯電話)をめぐる特許訴訟で米アップル<AAPL.O>から激しい攻勢を受けているが、両社の部品取引関係に悪影響が及ぶ可能性は低い。

サムスンは、アップルが設計した「iPhone(アイフォーン)」「iPad(アイパッド)」向けのマイクロプロセッサーを同社に独占供給している。

サムスン電子は、米連邦地裁陪審団がアップル勝訴の評決を出したことを受けて、26日早くにソウルで緊急会議を開催したが、会議を主催したのは権五鉉・最高経営責任者(CEO)ではなく、崔志成・副会長とモバイル部門を統括する申宗均氏だった。

同CEOは主に部品部門を統括しており、携帯電話部門と部品部門の厳格なファイアウォールをアピールするサムスンからの強いメッセージといえる。

サムスンは陪審団の評決に控訴する構えを示しているが、多額の利益を生むアップルとの部品取引契約を失う事態は避けたいとみられる。

<あまりにも重要な関係>

サムスンは「iPhone」「iPad」向けのマイクロプロセッサーのほかにも、DRAM、NAND型メモリー、薄型ディスプレーをアップルに供給している。

サムスンの法律顧問が報道機関に明らかにしたところによると、サムスン製の部品はiPhoneの部品コスト全体の26%を占めている。

モルガン・スタンレーの推定によると、同社の部品部門の売上高は来年130億ドルに達する見込み。営業利益は22億ドルと、連結営業利益の約8%を占める見通しだ。

アナリストは、サムスンとアップルにとって両社の共生関係は極めて重要だと指摘する。

KDB大宇証券のアナリスト、ジェームズ・ソン氏は「アップルはサムスンがなければiPhoneとiPadを生産できない。サムスンには、部品部門の強みを生かしてアップルにプレッシャーをかけるという選択肢もある。アップルもそれに気付いているだろう」と述べた。

サムスンは当初、両社の取引関係を踏まえ、訴訟ではなく話し合いによる特許問題の解決を目指していた。

サムスンは27日公表した従業員向けの文書で「アップルは当社の最重要顧客の1社であり、最初は訴訟ではなく話し合いでの解決を提案したが、アップルが訴訟を進めたため訴訟で対抗するしかなかった」と説明している。

サムスンの弁護士は、同社の画期的な部品や通信技術がなければアップルの製品は実現できなかったと強調。

知的財産権コンサルタントのフロリアン・ミュラー氏も自身のブログで「アップルは(サムスンとの部品契約をリスクにさらすほど)愚かではないだろう。両社の契約上、サムスンは契約を順守してアップルに部品を供給せざるを得ない」と述べた。

同氏は「サムスンは契約を守らなければ、他の顧客の信頼も失う。アップルがサムスンを提訴したのは2年前で、別の選択肢を探る時間は十分あったはずだ」としている。

<株価急落>

27日のソウル株式市場では、陪審団の評決を受け、サムスンの株価が7%以上急落した。

ただ、26日の緊急会議に出席した同社の幹部は「部品供給契約と訴訟は別の問題であり、今後も影響はない」と話す。

この幹部によると、26日の会議には将来の会長候補とされる李在鎔・最高執行責任者(COO)も出席しなかった。

サムスン電子では6月に権五鉉氏がCEOに昇格。利益相反を避けるため、通信部門は申宗均氏が、家電部門は尹富根氏がそれぞれ担当する仕組みとなっている。

モバイル機器の需要は急激に拡大しており、同社は先週、iPhone・iPad向けの半導体を生産する米国工場の生産能力を40億ドルを投じて拡大すると発表。2カ月前にも20億ドルを投じて、携帯機器向けのロジック半導体の新工場などを建設することを明らかにしている。

<サプライチェーン>

アップルはサムスンへの依存度を減らすため、サプライチェーンの分散を目指している。

関係筋が今年明らかにしたところによると、エルピーダメモリ<ELPDF.PK>は、自社で生産するモバイルDRAMの50%以上をアップルに供給。

サムスンは、アップルへの半導体メモリー供給では主に東芝<6502.T>やSKハイニックス<000660.KS>と、薄型パネル分野ではLGディスプレー<034220.KS>と競合している。

アナリストによると、サムスンは世界のモバイルDRAM市場で約70%のシェアを持つが、アップルは自社で必要なモバイルDRAMのうち40%しかサムスンから調達しておらず、エルピーダーやSKハイニックスなどが恩恵を受けているとみられる。

次期iPhone向けに薄型パネルを供給するとの観測が広がっているLGディスプレーは、27日の株式市場で4%以上値上がりした。

KDB大宇のソン氏は「サムスンもアップルへの依存を減らすため、クアルコム<QCOM.O>など新規顧客の開拓を進めている。中・長期的には良い戦略だろう。アップル向けの部品は、アップルの交渉力が非常に強いため、総じて利益率が低い」と指摘。

「アップルとサムスンの関係が悪化すれば、短期的には他の部品メーカーが恩恵を受ける可能性があるが、利益率の面から言えば、サムスンが不要と考える部品取引にうまみがあるとは思えない」との見方を示した。



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