水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

テキサス州、オースティンへ行くの巻 その4

2007年02月26日 | 旅行

ぼくとEはTown Lakeでカヤックと散歩を楽しんだ後、車に乗って食事へでかけることにした。時刻は午後1:30。お目当てのレストランはオースティン郊外にあるSalt LickというBBQの店。郊外にあって、車じゃないと行けない。アメリカの人気番組"$40 a day"で、Rachel Rayが紹介したレストランだ(ぼくはたまたまみてた)。オースティンに行くのならここはぜひおさえておきたい!

30分ほど郊外ののどかな景色の中を移動する。そして、だだっぴろい広場のような場所にソルトリックは存在した。運動場のような広さの駐車場に車をとめ、店と思われるほうへぼくたちは歩いていった。おおっ、なんかスゴイぞ、ここは!

ん十人の人たちが外のピクニックテーブルにわらわらとたむろしている。見るとみんなクーラーボックス持参でビール飲んでる。さらには小さなステージでおじさんが弾き語りのカントリーを歌ってる。一方ではハーレーダビットソンが入り口でバラバラと音を立ててる。な、な、なにをしているんだろう、このヒトたちは。

なんか統率のとれてない集会のようなものにでも紛れ込んでしまったのだろうかと思ったが、いや、まさにこの場所がソルトリックであった。外にいる人たちは食事の順番待ちをしていたのだ。おいおい、もう2時過ぎてるぜ。しかしまだまだぞくぞくと人がやってくる。まさかこれほどの人気の店とは。しかしぼくたちは気を取り直して並ぶことにした。外にあるブースで順番待ちのために名前を書いてもらう。一時間二十分かかるという。う、と思ったが、どうせ一日に一度しかちゃんとしたレストランで食事しないんだから少しくらい待ってもいーや、と思ったのである。それに、なんだかこの全体的にただようアバウトでイージーな雰囲気がいいではないか。

それにしてもみんななんでレストランにクーラーボックスを持参しているのかが分からない。しかも夏みかんなら40個くらい入ってしまいそうなおっきなやつを。うまそうにビールのんでるなぁ。まぁ、みんな待ち時間が長いのを承知で、いわばピクニック気分を味わうためにビールを持ってきているのだろうとぼくは推測した。もしもこのブログを読んでソルトリックへいくことに決めたビール好きのアナタは、ぜひビールを持参してください。ソルトリック付近のガスステーション(くらいしか店がない)ではビールは売ってるけど買えません。テキサス州のIDがないとお酒は買えないことになっているみたいです。待ち時間の間にぼくもガスステーションにビールを買いにいったんです。二件も

後で知ったのだけれど、ソルトリックがあるカウンティではお酒に対して規制が厳しく、レストランでお酒を出してはいけないのだそう。けどやっぱりBBQにビールが飲めないのなんて、あんこの入ってないアンパンのようなものであって、したがって店ではお酒は売らないけれどみんな持ってきてねという暗黙の決まりがあるそうなのであった(店内へのクーラーボックス持込可)。是非はおいといたとして、やはりテキサスはキリスト教圏だなと再確認したのである。

なにがともあれぼくたちの順番はちゃんとやってきて、ぼくとEは店内へ入ったのである。

うわー、でっかいカマド! 石を積み重ねてできた円形のカマドの上にふっとい網がしいてあって、その上は肉肉、肉。上のほうにはふっといソーセージがぶら下がっている。炭火の熱気がものすごい。カマドの石は長年肉の油を吸い込んだのであろう、てらてらと光り、えもいわれぬ妖気を発していた。ぼくたちはテーブルへ案内されて、ポークリブを注文した。

うっひょーい。BBQだBBQだ。もぐもぐ。んまーい!

BBQって言葉自体はその昔カリブのほうから来たらしい。地面に掘った穴に、肉汁がたまるような容器をしいてその上に動物の肉を置く。それに木の葉をかぶせて炭を置き長時間放っておく、というのがオリジナルの調理法。それが現在のBBQの原型かどうかは知らないけれど、現在のBBQでは(主にアメリカ南部に多い)は木のチップをつかって肉を長時間あぶる。歴史的オリジナルは豚肉が材料だが、もちろんチキンでもソーセージでもオーケー。BBQって、直火でじっくり熱を通す料理(一方で強い火力で一気に調理するのはグリルといいます)なので、余分な油が落ち、意外にもくどくない。ソルトリックのBBQもわりとさっぱりしていた。

それぞれの店に秘伝のBBQソースがあったりするのも面白い(ちなみにソルトリックのBBQソースはオースティン空港でも売ってる)。どの世界にもコアなファンというのがいて、全米中いたるところでBBQフェスティバルみたいなのが行われているという。ようするにアメリカのベースボールキャップをかぶった男どもが情熱を持ってしまう料理なのだ。いわんやテキサスをや、なのである。

ぼくとEは食事を終えて、ソルトリックを後にした。いやー満足! 

さてと、もうじき夕方である。ぼくたちはそこから一時間ほどの距離のところの、湖のほとりにある綺麗な夕日が見えるという場所へ行ってみることにした。Oasisという、これも地元では有名なレストランだそうである。旅行の初日に行こうと思って行けなかったレストランだ。そこで夕日にデザートとドリンク、という魂胆である。

運がよかったみたいで、ぼくたちがOasisのレストランへつく頃にちょうど夕焼けが始まった。マルガリータとチーズケーキを頼んだぼくとEはテラスへ出て写真を撮った。

複雑な形の湖の、はるかむこうの大地へ沈んでいく太陽は圧巻であった。真っ赤な光をあびながらぼくは、こんなぜいたくないよなーと思った。期せずして、今日はじつに充実した日になった。たいして予定もいれておらず、フィーリングで行動したのがよかった。なによりオースティンの湖でカヤックを漕げたのがよかった。ぼくはカヤックを漕いだ日はじんわりとしたシアワセ感が体内に残るのだ。ぼくは幸せである。

ぼくとEはその後、ぜったい全部食べられないよねなーんていっていたいたずらに大きいチーズケーキをぺろっと食べ、マルガリータをグラスの底までストローでずずずっと吸い、Eの運転でホテルまで帰ってきたのであった。

ぼくは、仕事のあるEをオースティンに残して、翌日のフライトでカリフォルニアのバークレーに帰ったのであった。空港に止めてあった自分の車にうっすらと花粉がかぶっているのを見て、あぁもうじきバークレーにも春がやってくるな、とぼくは思った。

おしまい。